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心肺停止患者に対する低体温療法について

心肺停止患者に対する低体温療法は、正常体温を目標とした管理と比べて6か月時点の生存率を改善させることができなかった。

Hypothermia versus Normothermia after Out-of-Hospital Cardiac Arrest
June 17, 2021
N Engl J Med 2021; 384:2283-2294

DOI: 10.1056/NEJMoa2100591

【はじめに】

院外心肺停止症例に対する低体温療法の有用性を確認した論文です。
低体温療法が話題にあがった10年以上前は蘇生に成功した心肺停止患者に対して低体温療法を行っていた時代がありましたが(私が耳にする範囲で)昨今は行わない施設が多くなっているように感じます。

本論文は心疾患または原因が特定できない院外発症の心肺停止症例1900人を対象に、低体温療法(33度)と正常体温(37.8度以上の時に介入)を目標にした管理に割り当てた研究です。

【研究概要】

Patients 対象者
 心疾患、または原因が特定できない院外発症の心肺停止患者
 平均年齢63歳、男性が80%
 目撃ありの心肺停止92%
 バイスタンダーCPR 80%
 ROSCまでの時間25分

Table1は患者背景を示していますが、長いため一部のみ抜粋しています。

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背景を見ると神経学的予後が比較的良い方向に期待できるように見えました。(個人の感想です。日本では都市部以外でこの条件を達成することは厳しいかもしれない。)

 初回心電図は72%で除細動適応がある不整脈でした。詳細はTable1へ

Intervention 介入群
 33度を目標にした低体温療法

Comparison 対照群
 37.8度以上の時に介入する正常体温を目標にした管理 (正常体温管理群)

Figure2で両群でどのように体温が管理されたかが示されています。
明確に両群で体温が異なる経過になっていることが分かります。

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Outocome 評価項目
主要評価項目は6か月時点の死亡です。
合併症の評価として肺炎、敗血症、出血、循環動態が不安定になる不整脈、低体温療法に用いるデバイスによる皮膚合併症を確認しています。
結構な粘着力なので剥がすときに表皮剥離に注意が必要でした。


Result 結果
 最終的に1850人で主要アウトカムを評価しました。
 6か月時点の死亡率は低体温療法群で50%、正常体温管理群で48%で有意差なしでした。機能的予後も両群で差は認められませんでした。
 血行動態に影響がある不整脈は低体温療法群で24%、正常体温管理群で17%で有意差をもって低体温療法群で多く発生しました。その他の合併症に差はありません。

Figure3で両群の生存率をカプランマイヤー曲線で示しています。ほぼ両群で差がありません。

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Table2で各アウトカムを比較した表を示しています。
Arrhythmia(不整脈)の部分だけ低体温療法群で有意に多い結果でした。

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Conclusion 結論
 本研究では、院外心肺停止症例に対する低体温療法と正常体温管理は、6か月後の死亡率に差を認めなかった。

個人的感想
 以前より心肺停止症例に対する低体温療法は、有効性を示すことができない論文が出ているために、すでに下火になってきた治療かもしれません。この論文がさらに追い打ちかける気がします。

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