見出し画像

新しい植え込み型除細動器(Subcutaneous Implantable )Defibrillatorについて

Subcutaneous or Transvenous Defibrillator Therapy
August 6, 2020
N Engl J Med 2020; 383:526-536, DOI: 10.1056/NEJMoa1915932
【概要】
日本ではICD(implantable cardioverter defibrillator、植え込み型除細動器)といえば経静脈的にリードを留置したタイプ(transvenous implantable cardioverter-defibrillator (TV-ICD)が主流ですが、2010年頃から皮下型ICD(Subcutaneous Implantable Defibrillator (S-ICD))の臨床研究が出てきました。

 電極は胸骨左縁に、本体は左側胸部皮下に留置するようになっております。この研究はICDの適応がある患者(かつ、ペーシングの適応がない)を対象にした非劣性試験でS-ICD群とTV-ICD群で比較しています。主要評価項目はアウトカムはデバイス関連の合併症+不適切な除細動を合わせた複合アウトカムです。副次評価項目は死亡と適切な除細動です。

【結果】
S-ICD群426人、TV-ICD群423人の合計846人が登録され、平均追跡期間は49.1か月(約4年)でした。主要評価項目のイベントは両群ともに68例発生し、48か月時点の累積発生率はS-ICD 15.1%, TV-ICD 15.7%と差を認めなかった。主要評価項目の内訳であるデバイス関連の合併症はS-ICD群で31例、TV-ICD群で44例とTV-ICD群でやや多い傾向(統計学的有意差なし)で、不適切な除細動はS-ICD群で41例、TV-ICD群で29例とS-ICD群でやや多い傾向(統計学的有意差なし)であった。結果はvisual abstractを見たほうが分かりやすいです。以上の結果からS-ICD(皮下植え込み型除細動器)は除細動の適応がありペーシングの適応がない患者においては、皮下 ICD はデバイス関連合併症と不適切作動に関してTV-ICD(経静脈植え込み型除細動器)に非劣性を示した。

画像1

【個人的感想】
要するにペーシングが必要のない、除細動単独でICD適応がある方では皮下ICDも選択肢に上がるよ、ということを示唆した研究です。皮下ICDでは若干不適切な除細動が増えており、これは痛みや胸を蹴られるような不快感・苦痛が生じるといわれるために気に留めておくべき内容だと思いました。
皮下ICDの主なメリットは経静脈ICDにおける挿入時の血気胸、リードのdislodge(浮遊)などが起きないことや、感染などで抜去が必要な時に抜去が容易であることです。デメリットはペーシング機能がないために、徐脈に対するペーシングや抗頻拍ペーシングなどができない点です。

S-ICDの説明を分かりやすく解説したパンフレットがありましたので、ご興味がある方はこちらも→産業医科大学不整脈先端治療学 安部治彦先生の説明









この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?