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重症の胆石性膵炎に対する緊急ERCPと保存治療を比較して…

Urgent endoscopic retrograde cholangiopancreatography with sphincterotomy versus conservative treatment in predicted severe acute gallstone pancreatitis (APEC):
a multicentre randomised controlled trial
Schepers NJ et al. Lancet 2020 Jul 18; 396:167.
https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)30539-0)

【概要】
重症急性胆石性膵炎に対する緊急ERCP+EST(内視鏡的逆行性胆管膵管造影+内視鏡的乳頭括約筋切開術)と保存治療を比較したランダム化試験です。
本論文以前に2012年時点にもCochran日本語版で類似の内容に対するレビューが行われております。短縮URL先→https://bit.ly/31oiFvk
この時点で急性胆石性膵炎患者に対し、重症度にかかわらず保存治療と早期ERCPで死亡・合併症に差はなかったとまとめております。新しい研究ではどのような結果になったのでしょうか?

 本研究はオランダの26施設から登録された胆管炎を併発していない重症と予測される急性結石性膵炎(APACHEⅡ≥8, Imrie score ≥3, or CRP >15 mg/dL)を対象にしたランダム化試験です。(評価者のみ盲検化)対象患者を1:1に割り当て、介入群である緊急ERCP群は受診から24時間以内のERCPを受け、対照群は保存治療で必要に応じてERCPを受けます(胆管炎を併発した場合など)。主要評価項目は死亡率と主要な合併症(新規の臓器不全、胆管炎、菌血症、肺炎、膵壊死、膵機能不全)を合わせた複合アウトカムです。
 
 232人の患者が登録されて118人が緊急ERCP群、114人が保存治療群です。主要評価項目のイベントは緊急ERCP群で38%、対照群で44%に発生したが有差は認めなかった。Table2に死亡や主要合併症の内訳が記載されているが、小分類で有意差を認めたものは胆管炎である。対照群でも必要に応じて(on demand)ERCPを行うようになったおり113人中35人がERCPを受けました。ERCPの細かい内訳はTable3参照。


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【結論+個人的感想】
 胆管炎を伴わない重症と予測される急性胆石性膵炎に対して緊急ERCP+ESTは上記の複合アウトカムは減らさなかった。ERCR胆管炎や胆汁うっ滞が遷延する場合に適応になる。という過去のレビューと同様の結果になりました。

 結石性膵炎に対するERCPを直接担当することはありませんが、専門科がどのような基準に基づいて治療を選択しているかの参考になる文献です。臨床に適応させるときに難しい点は、『胆管炎を合併していないという基準』は何で定義しているか?というところです。appendixで定義されている内容が見られるらしいのですが現時点では確認できておりません。
 恐らくALP, γGTPが一定基準値以上などで定義している気がするのですが、、、


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