ひとりになりたいと車走らせてお土産買って帰る


19時。

「ちょっとドライブに行っていい?」と、子どもが産まれてから初めて、いや結婚して初めて言った。

もうなんかいろいろ考えて、要は一人になりたくなった。

娘は「えー!いいなー!」と言った。
旦那は少し驚いた顔をしてから「気をつけてね」と言っただけだった。
それから車のキーを渡してくれた。

「ありがとう」と言ったけど旦那の顔は見られなかった。きっと酷い顔をしてると思ったから。

上着をさっと羽織ってストールとバッグを持って外に出る。
ひんやりした冬の風が満ちてる。

エンジンを掛けた。
Bluetoothが上手く繋がらなくてしばらくは無音のまま車を走らせる。

なにも考えなくていいのが良かった。
こういう瞬間、いつの間に無くなったんだろう。

車のライトも街灯も、夜の灯りが全部キラキラして綺麗だった。夜の街を見るのもずいぶんと久しぶりだな。

スタバに行こうと決めていた。
あったかい飲み物がよかった。
少しは気持ちも晴れるだろうと思っていたから。

途中道を間違えて、でも1人だから全然よくて、時間に追われてないことに気付く。

このあとの予定が何も無いなんて。
道が混んでようが到着が遅れようが、スケジュールをテトリスみたいにあれこれ組み替えなくていいんだ。

スタバの駐車場に着くと少し気持ちが落ち着いた。

音楽を何曲か聴いて、「あぁこんな歌詞だったんだな」とか思って。

いつも掛け流すだけだもん。

ギターを買っちゃうくらい音楽好きだったのにな。

それから、なんとなく旦那にLINEを送るとすぐ既読にがつく。

「心配かけちゃった」と思ってたら通話がかかってきて「スタバの駐車場なんだけど、」と言った。

「なにか飲む?」って。

そういえば抹茶飲みたいって少し前に言ってたな。

「抹茶の買って帰ろうか?」と聞くと
「ママの飲みたいのでいいよ。ゆっくりしてきたら?」と言う。

「私はカモミールが飲みたい」
今日は、久しぶりに合わせなかった。

「じゃあ抹茶もお願い」


ショートサイズのラテを2つ。
両手に持って歩く。

子どもが産まれる前は1つずつ持って2人で並んで歩いた。

"子どもが産まれる前は"
"結婚する前は"

そんなことを思ってハッとする。
何考えてんだろ。

嫁になることは、母になることは、そんな窮屈なことじゃないはず。

少なくとも過去の私はそんなこと思ってなかった。

もっと私の世界が広がって、いい意味で大人になって、充実するんだってわくわくしてたのに。

すごく勿体ない生きた方をしてる、今。


でもね、しんどい気持ちは嘘じゃない。


きっとどんなママだっていろんなことに板挟みになって、悩んで、泣いて、それでも向き合って……なんとかかんとか毎日をやりくりしてるんだろうな。


さて、そろそろ帰ろうかな。旦那の飲み物が冷める前に帰って渡したい。

結局はお土産買って帰って、娘の寝顔を見てホッとするんだ。

明日もどこかで泣きたくなるような気持ちのママがいたら、あったかいカモミールティーを渡してあげたい。

何も変わらない土曜日の夜。
それでも、お疲れさまって思えたからそれでいいか。

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