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映画感想:2023に見た映画。

ごきげんよう、ほぼ一年ぶりの映画感想記事。せっかく続いてるなら今年も書いておきたい。以下が去年のもの。

さて今年見た作品数は28作。今年はスーパーマリオブラザーズザ・ムービーとか珠玉の映画が粒揃いであったけれど、映画館に行くほどの作品自体が減ったかな。あと半年もすれば見たかった映画がアマゾンプライムに並んでしまうのもあって、儲けたような侘しいような。得をしてるならいいってことにしよう。
ではここからだ。ネタバレアリなので要注意。

◆ ◆ ◆

1:神々の山麓 ☆


登山家マロリーはエベレスト初登頂を成し遂げていたのか? 未解明の謎の手がかりとなるカメラをきっかけに、カメラマンの深町誠と孤高のクライマー羽生丈二は邂逅する。
谷口ジロー作画の漫画のアニメ映画化。本作はカンヌ国際映画祭出品とセザール賞を受賞している。フランスはバンド・デシネ漫画が人気であり、谷口ジローはその中でも巨匠といえる存在。この縁の深い関係から良質の映画が出たのはなんとも感慨深い。
映像美としても優れているなぁ。背景の緻密な描写、人物の作画はシンプルにしつつも重要な箇所は押さえて抽象化とリアルさのせめぎ合い。まさしくバンドデシネのアニメーション。
今年最初の映画がこれで本当に良かった。

2:遠い空の向こうに


ジェイク・ギレンホール主演の映画。舞台はアメリカの炭坑のある小さな町。1957年にソ連から打ち上げられた人類初の人工衛星スプートニクを見た高校生の青年ホーマーは、ロケットに感動して自らの手で作ろうと挑戦する。父との対立や仲間との諍いや打ち上げの失敗などいくつもの試練にぶち当たりながらも、ホーマーは挑み続ける。
実話を元にした物語だが、畳み掛ける試練や父親との確執という神話的メソッドなどハリウッド的なストーリーテリングをたっぷりと含んだ良作。
「対立対比する存在同士が互いに共通点を見つけて、同じだと気づく」に人間は共感や感動を抱くというのがわかった気がする。最後のロケット打ち上げでホーマーが父にロケットのスイッチを委ねるあたり。

3:地獄の花園


田中直子は三富士会社に務める普通のOL。しかしOL裏社会ではヤンキー漫画のような武力による派閥争いが行われている。そんな中に1人のカリスマヤンキーOLの北条蘭が現れる。蘭の圧倒的な強さで彼女は一日で頂点に君臨し、ふとしたきっかけで直子と蘭は仲良くなる。
勢力争いは社内に留まらず社外とも。トムスンの企てにより直子は誘拐され、蘭は要求通り一人で敵陣へと向かうヤンキー漫画的展開に。だが蘭は倒されてしまう。ここで物語は急展開を迎える。直子は天性の喧嘩の才能の持ち主であり、たったひとりでトムスン全員を倒してしまう。
「ヤンキー漫画のテンプレ」の皮をかぶりつつも「ただの親友枠のような主人公が実は最強でした」というひねりを入れて物語に革新性を盛り込んでいる。ビジュアルがとにかくシリアスなギャグでそれなりに面白い。

4:ブレインゲーム


アンソニー・ホプキンスがサイコメトラー超能力者で主人公。

5:ジャンパー


母親と離別し悲惨な人生を送っていた主人公はある日川に溺れ、次の瞬間図書館にいた。瞬間移動能力を身に着けた彼は銀行から大金を盗み、確執のある父親とも離れ自由な日々を送っていた。そんなある日謎の男が彼を襲撃してくる。瞬間移動超能力者はジャンパーと呼ばれ、謎の男はパラディン。パラディンはジャンパーを抹殺することを目的としていた。主人公は自分以外のジャンパー能力者と出会い、戦いに巻き込んでしまった自分の彼女を守るべく戦うことになる。
瞬間移動をテーマとしてるためか場面転換がなかなかに刺激的。エジプトにロンドンに日本に。ただストーリーは尻切れトンボみたいな中途半端さで終わってしまう。予算が尽きたのか描ききれなかっただけなのか。

6:CODE8(コードエイト)


SFスリラー。人口の4%が超能力者の世界。彼らは超常の力を持ちながらも迫害を受け、貧困に喘ぎ、暮らしに困窮した結果犯罪者となることが多い。電気を操る能力を持つ主人公コナーは病気の母親と二人暮らし。母の治療費を稼ぐためにコナーは裏社会の組織と手を組み、銀行強盗など犯罪に手を染める。傷を治せる能力者を見つけ、母を治療してもらうためにコナーは取引をする。
能力を鍛え現金輸送車を襲うコナー。しかし組織が裏切り金を横取りされ治癒能力者も手に入らない。コナーは復讐を決意する。
実にこじんまりとして、それでいてとっ散らかった印象の映画。コナーの犯罪が母にバレて母の病状が悪化するのが映画半分過ぎてから。超能力犯罪を操作するアジア系の警官も焦点当てたい意図も見えるが実に中途半端。「主人公が目的を達成せず、自ら諦める」というのがハリウッドらしくない意表をついたものに見えるが、その代償のこじんまりとした感覚を覆い尽くすような新鮮なアイディアもない。
確かに凡作止まりだなぁ。 超能力者の髄液が強烈な麻薬になるという設定が面白いがどこへやら。
【超能力者が虐げられる】という世界観設定は面白い。かつてその力で工業に従事していた彼らが機械によるオートメーションによって排斥され、AI技術の発展により監視されるようになり、困窮した彼らが犯罪者になっていく負のスパイラルは何かに活かせそう。

7:大怪獣のあとしまつ


日本を襲う大怪獣が謎の光によって死亡、しかし死体だけが残った。処理をせねばならない。
この映画は先にネタバレを知った上で視聴した作品。3倍速でもくだらなさを覆い尽くせないほど。
はっきりいってダメ映画。クソ映画というよりもダメ映画。今回は反面教師としてこの映画を見ようと思ったわけだが、シュールギャグをやろうとしてる割にそれ自体がとてもセンスに欠けている作りになっているのが致命的。「偉い人は状況を知らず愚かである」という政治批判を愚かに滑稽に見せるつもりだったのだろうけれど、逆に制作陣側の愚かさが際立っているように思える。
他人を貶めることでしか笑いを描けないという、まさに醜悪な有様。
そもそもこの映画を見ようと思った理由が「シンウルトラマンが放射能汚染を引き起こすゴモラを倒し、その死体を宇宙へ持ち去ったシーンがあったから」だ。なにせシンウルトラマン作中で20分ほどでまとめた内容を、この映画では110分かけて描いているのだ。それだけ水増しされたらろくでもない作品にしかならんわな。
それに冒頭で「謎の光」が描かれてるからおそらく初見でもデウス・エクス・マキナ的なオチを推測するのは容易かった。しかし制作陣はさも新鮮な驚きであるかのように自慢げに見せてくるのが、視聴者を侮り蔑むようにも感じ取れた。
政治批判で嘲り、観客も嘲り、しかし自己は崇高なものだと主張する驕り高ぶり。なんて醜い作品であろうか。

8:屍人荘の殺人


主人公の葉村はワトソン、明智はホームズ。大学生のミステリーサークルに入ってる二人は名探偵として有名な剣崎からある館のパーティに誘われる。その中にいる15人はある殺人事件に巻き込まれる。
探偵ものの皮を被ったゾンビもの&ミステリーという衝撃の要素に驚かされたものの、とにかくノリがコメディチックで軽く滑っている。犯人も即わかってしまうし、ネタバレを知った上で見た映画ならまるで価値はないだろう。

9:フリークス


超能力者がフリークと呼ばれて排斥されてる世界。主人公である7歳の少女クロエは父親に家に閉じ込められて暮らしている。外の世界に興味を持つ彼女は次第に能力に目覚めていく。それは人間の頭に強力な命令を与えて実行させてしまう能力だった。施設に囚われている母を助けるために、クロエは能力を駆使する。
登場人物全員がディスコミュニケーションすぎて滑稽に事態が悪化していくのがストレスな設計。クロエが7歳の少女で聞かん坊なせいで人の言うことも聞かない、かといって大人たちもクロエにろくに情報も与えないから余計にこじれていく。時間停止に瞬間移動に思考支配の能力揃ってるのにこんなに役に立たないのはある意味すごい。

10:100日間生きたワニ


100日後に死ぬワニの日常とその100日後の物語。
Twitterで一時期人気を博したものの最終回での商業的展開によって一気に人気が失墜してしまった作品の映画化。
原作は実を言うとそれなりに好き。メメント・モリ、日常の裏に死を思わせる展開は嫌いじゃあなかった。しかし映画版だとその良さが失われている。ある日唐突に死を迎える無常さにこそ意味があるはずの作品が、単なる感動ポルノ的な感動にすり替わっている。
特に新キャラのカエルがひどい。会話の頭に「あー」を加えるようなうざったさ。何よりも他人との境界を理解せずに踏み込む空気の読めなさ。物語に深みを持たせるどころか不快さを増すような醜悪なキャラ。
作品全体に陽キャラっぽさというか押し付けがましさ、価値観の押し売りが鼻につく感じ。本来は味のあった作品が、創作者以外の人間による浅い価値観や商業的思考が加わって、台無しになってしまった。

11:パラドクス ☆


2人の兄弟が悪事を働いて、刑事から逃げるために階段を降りていく。その途中で兄が足を撃たれてしまう。しかしその時爆音が鳴り響き、1階の次が9階になる。
兄妹母男4人のワケアリ家族。太った男はママの新しい男。車で旅行へ行く途中のガソリンスタンドで太った男がアレルギー持ちの妹にジュースを飲ませてしまい、喘息用の薬を壊してしまう。容態が悪化した妹のために家に帰ろうとすると、まっすぐの長い道路の先には同じガソリンスタンドと同じ看板があった。
二つの視点、閉じ込められたループを過ごす映画。チェンソーマンの「永遠の悪魔」の元ネタになった作品だと思われるがこれほどとは!

12:ワンピースフィルムレッド


ウタワールド開幕。国民的人気漫画ワンピースの25周年記念映画。劇場で見たがアマゾンプライムでもう一度。幼馴染にして世界を滅ぼそうとするラスボス系ヒロインウタと、彼女によってようやく紐解かれる謎多き主人公ルフィの心境描写。

13:交渉人☆


サミュエル・ジャクソン主演の映画『交渉人』を見たが、いやはや素晴らしい名作だった!
陰謀により無実の罪を背負わされた警察官である主人公が、自身の潔白と真犯人を探し出すために人質を取って高層ビルに立て籠もり、一人の交渉人を指名する。機知に富んだ二人による緊迫的な交渉が始まる。
何が素晴らしいと言えば脚本の構成が神がかり的に美しい!
静と動、緊張と緩和、その間合いがまるで殺陣でも見ているかのような没入感を与えてくれる。
誠実な主人公に降り掛かる理不尽に憤り共感し、その真実を知りたいと画面に釘付けにされる。信念に基づき行動する優秀な交渉人との掛け合いも見事
で、ああもう映画全部喋っちゃいそうだからこれ以上はつぶやけぬ!
物語のあらゆる要素がシンプルにわかりやすい共感と王道のストーリーを脳みそに刻み込んでくれるような、見事な物語であった!
ドラマチックな映画とはかくあるべし、たまたま見られた幸運を感謝したくなるほど素敵な映画体験だった。

14:ザ・スーパーマリオブラザーズ☆


マリオとルイージは兄弟の配管工。二人で独立し会社を設立したものの初仕事では上手くいかず、自分が何者になるのか不安。そんな時、二人はブルックリンの地下深くに謎の土管を見つけ、それに吸い込まれてしまう。マリオは途中でルイージとはぐれてしまい、キノコ王国へと辿り着く。キノコ王国は侵略者クッパによる脅威に晒されていて、ルイージはクッパに捕らえられた。マリオはルイージを助けるため、キノコ王国のピーチ姫と共に旅立つ。
意外性を含ませながらも、40年来続いているスーパーマリオブラザーズのお約束や王道のストーリーは忘れない。王道なのに新鮮さを感じさせるというものすごい名作となってしまった。テーマとか深く考える必要はない。勧善懲悪、できすぎたハッピーエンド、それらに説得力と納得をもたせて見事なエンターテインメントとして完成したのが本作のような物語だ。
本作はマリオがヒーローへと目覚めていくオリジンを描く物語になるだろうと予想をしていて、そのとおりになり、だけどそれ以上の面白さを見せつけられてしまった。王道なのに意外性。予想を上回ってくれた心地よさ。
この映画を子供のうちに見られる子供たちが実に羨ましい。多分彼らの人生は大きく変わるだろうな。映画館で聞いた笑い声が記憶に残っている。

15:名探偵コナン 緋色の弾丸


劇場版コナン2021年作。新名古屋駅と東京に新設される真空超電導リニアの開通の発表パーティー。その最中企業のトップが拉致されてしまう事件が発生。事件の裏にはFBIと15年前にアメリカボストンで起きた連続拉致事件との関連があった。
実に旨味のない作品。コナンで最近増えた登場人物たち、いわゆる赤井秀一と関連のある人物たちに焦点を当て活躍させたかった作品であるのだけれど、その結果がかなりご都合主義かつとっ散らかったような物語に成り下がってしまった。目玉であるはずの空前絶後の超長距離狙撃は見応えはあるもののやはり無茶があるし、犯人たちの動機もその逃亡劇も関連人物を活躍させるために無理ある構造になってたのも虚しい。

16:スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース☆


アニメ映画スパイダーマンその続編。蜘蛛に噛まれて超人的な能力を手に入れた少年、マイルズ・モラレスの物語。多元宇宙へと帰っていった仲間たち、特にスパイダーガールであるグウェンのことを想いながらも黒いスパイダーマンとして悪党を倒して人々を救う日々。しかしそんな最中、全身穴だらけの奇妙な怪人スポットとの戦いとグウェンとの再会を通して、彼の運命は過酷になっていく。あらゆる世界のスパイダーマンとそれを統括する未来のスパイダーマン2099との対峙、悲劇的な運命を変えるための戦いが始まる。
前作よりさらに進化した最高の映像表現、そして140分という長い尺でも語りきれない物語は続編へと続いていく。これは絶対に見なければならない。映像的な美しさ、そしてヒーローとしての宿命と向き合い戦う少年の物語は興奮を隠せない。
映画の予約のミスで字幕版を見ることになってしまったのが口惜しい。絶対日本語吹き替え版も見てみたいが、尺が長いからちょっと迷っている。

17:ルパン三世THE FIRST


山崎貴監督作品のルパン三世。かのルパン一世が唯一失敗したとされる財宝ブレッソンダイアリー。ルパン三世がその謎に挑もうとした際に知り合った少女レティシア。彼女もまたブレッソンダイアリーを求める泥棒であり、考古学者。ブレッソンダイアリーに記されていたのは世界を滅ぼしかねない兵器の秘密であった。
なんか随分とストーリーが幼稚というかツッコミどころがあるというか。危険なものを迂闊に触って時限装置を発生させるレティシアだったり、ハンムラビ法典を元にした謎解きであったり。底が浅い作品に感じてしまう。

18:君たちはどう生きるか


宮崎駿監督最新作。舞台は第二次大戦から3年後の日本。兵器開発工場社長の御曹司である主人公真人は東京大空襲によって、母を火災で失ってしまう。その1年後真人は父と共に田舎へと疎開する。そこに待っていたのは父の新たな再婚相手である夏子という女性で、彼女は既に父との子を身籠っていた。男児かくあるべしと教育を受けた少年らしく振る舞う一方で誰もいない場所では普通の少年としてのか弱さを見せる真人。しかしその田舎には言葉を喋る奇妙なアオサギがいて、失踪した夏子を探し出すために真人は森の中にある怪しげな館へと入っていく。そこは異世界へ通ずる場所だった。

よく言えば宮崎駿の趣味をたっぷりと注ぎ込んだ作品であったが、悪く言えばストーリー自体が破綻気味。美しい映像とおぞましい映像をこれでもかと見せつけてくる一方で、物語の謎に関する部分はどちらかと言えばおざなり。山も谷もなくグライダー滑空で物語は展開していき、唐突に終わってしまう。「求めていたもの」は集めきってゴールに辿り着いたストーリーではあるんだが、モヤモヤとした違和感が残る。宮崎駿でなければ駄作としての烙印を押されたのではないかと思うと、結局ジブリというブランディング商法に頼り切った作品じゃあないかと結論づける。

19:きさらぎ駅


民俗学を専攻する大学生、ツツミハルカはある女性へ取材する。元教師だった彼女は電車に乗っていると「きさらぎ駅」という異世界に迷い込んでしまった。血管のような何かに襲われる人々。そして教師でありながら生徒を救えなかったことを悔恨していた。
女性から話を聞いたツツミは、実際に彼女のやった手順に基づいて行動をすると自身も異世界「きさらぎ駅」に到着する。そこでは彼女から聞いた話と同じ出来事がループするかのように繰り広げられていた。
二段構成のクールな脚本。前半で和風ホラーをしっかり魅せ、後半では「顛末を知っている」という強力な情報で犠牲者を救おうと奮闘するヒーロー物のような展開に。超合理的なアクションをしてしまうために、ツツミ自身が狂人のような振る舞いになってるシュールさ。
それでもきっちりと和風ホラーのテイストは残して、物語を意外な結末へと導く。実にエンターテイメントで良い作品。なるほど、人から聞いた話がその通りだとは限らない。

20:サイレントトーキョー

都内で爆破予告が起き、爆発はなされた。しかし音と光だけの爆発であったが、続いて犯行予告がネットに上げられる。犯人の要求は総理との会談、叶わなければクリスマスに渋谷ハチ公前を爆破すると。そして犯行は実現された。
随分と偏った狭い作品。
「予告が出されているのに野次馬に来た群衆が本当に爆発に巻き込まれる」というシーンはなるほど、犯人に共感するような感動はあった。それを描くために作中半分の50分かけているのは興味深いが、その背景の描写や裏付けはとても陳腐。犯人しか知り得ない情報を知っているからこいつが犯人だろう、と思い込ませる陳腐さ。国民の声を聞かない総理を批判しようとする構造で戦争反対を描こうとする陳腐さ。役者の演技も心情の描き方も陳腐。
ここから先はこの映画を見ている間に思いついて、しかしこの映画からは見出されなかったこと。犯人はなぜ犯行予告を出すのか? 多くの人を愚かしく巻き込みたいからだろうか? 犯行予告をわざと嘘付いたほうがより被害を出せるのではなかろうか? どうしてテロリストは要求するのだろうか? それに対する答えを一つ導き出したが、これはいつか自分の創作物に使うとしよう。
こういう映画を作るならもっと新鮮に描いて欲しいと思うんだ。

21:ジオストーム


天変地異が無尽蔵に発生するようになってしまった地球。各国は協力して地球全土を覆う巨大な衛星システムを開発し自然を支配する。しかし衛星が暴走し、各地で天変地異が置きてしまう。権力によって衛星ダッチボーイの権限を奪われてしまった開発者の主人公は弟に促されて、修理のために国際宇宙ステーションへと向かう。だがそこで判明したのは暴走は人為的なものであり、陰謀が渦巻いていた。
自然災害とアメリカ大統領の陰謀という二つの要素を絡めた、典型的なハリウッド映画的な作風。CGが豊富につかわれ、燃え盛る大地に大洪水に雷の嵐に竜巻など多彩な災害が描写されるのは金使っているなぁ感。地球にいる娘のために救う、不仲の弟と事件を経て仲直り、アメリカ総選挙と大統領の座を狙う黒幕など、実に実にハリウッドテンプレートコッテコテ。「私がこの国の大統領だ」と黒幕に言い放つシーンとか本当にこれを取りたかったんだなぁという。
アメリカ人は「自然を支配する」ことを神の御業であり理想と考えている節がある、というのをよくわかった作品。

22:プリデスティネーション☆


お前の人生を壊した男を差し出すと言ったら?
時を遡るエージェントの物語? 爆弾魔の情報を探って過去に遡りバーテンダーをしていると、奇妙な少年から昔話を聞かされる。彼の少女だった頃の物語。女として生きていた彼女は実は男であり、自身の出産で女性器を失って男性になってしまい、しかも自分の娘を誘拐されてしまう。男になった少年は女性の視点から文章を打てる「未婚の母」として有名になった……が。娘も自分を捨てた男への復讐の心も燻り続けている。
バーテンダーから持ちかけられる話は、過去へ飛んで未来に起きる事件を解決することだった。
グイグイと引き込まれるSF的な物語。引力や重力、運命を思わせる。素晴らしいSF。

23:フローズン


スキー場が舞台。男二人と女一人の団体客。金にがめつい彼らは非正規の方法でリフトを使用することにしたが、そのせいでリフトに乗ってる最中に稼働を止められてしまい、気づかれないまま空中に閉じ込められてしまう。極寒の吹雪の中、彼らは生き残れるか。
正直イマイチな映画だった。90分という短めの尺で低予算の映画でチャレンジするサバイバルものというコンセプトは悪くない。だが最初にして最大の危険が起きるまで30分近く費やされるし、そこまでの繋ぎも少々下品でありきたりな男女のいざこざ。尺が短いのに冗長である。
ピンチそのものはとてもおもしろい。吹雪の中寒さに耐えたり、飛び降りるも開放骨折の大怪我で動けない、狼が来る、凍傷などなど。しかしそれらのピンチに繋げるまでの会話劇が実につまらない。リフトの椅子という狭い空間で物語を展開していくのであれば、そこを観客に飽きさせないような工夫をしなければならなかった。

24:僕のヒーローアカデミアMOVIE ヒーローライジング


オールマイト引退表明後、世界は能力者犯罪によって混沌と化していた。そんな中雄英高校の面々はヒーロー不在の離島、那歩島への研修へと向かうことになる。救うべき島民との交流を深めていくうちに島に異変が発生する。
異能力者ものの物語を見たいとこいうことで選んだが、王道で実にいい。

25:岸辺露伴ルーブルへ行く


荒木飛呂彦原作、ジョジョの奇妙な冒険のスピンオフ作品「岸辺露伴は動かない」の劇場版。漆黒の絵を求める岸辺露伴はその作品のルーツを辿っていくと、ルーブルにあるとされる仁左衛門という日本画家の絵の情報を知る。
非常に洗練された実写ドラマ化、岸辺露伴は動かないの劇場版。原作の雰囲気をそのままにさらにエピソードを追加して昇華させた傑作。フランスパリまで行って収録するその豪華さも見逃せない。彼のルーツを辿っていく話にもなっていたのが秀逸。

26:ゴジラ-1.0


超ロング感想になる。

超一流のCG映像表現と三流のヒューマンドラマの混じった映画、という印象だったかなぁ。
特攻兵だった敷島は機体が故障したと嘘をついて整備のために島に着陸、しかしそこにゴジラが現れ、零戦の機銃を撃つことはできたが敷島は再び逃げる。そのために整備士たちは死に、死ぬはずだった彼が生き延びてしまった。

戦後、東京にいた家族は空襲で死んでいた。1人取り残された敷島は闇市で偶然赤子を抱えた女と出会って暮らすことになった。家族を養うために敷島は米軍の投下した機雷を爆破処理する危険な仕事に就くが、アメリカの軍艦が沈められる事件が発生する。かつて見た時よりも遥かに巨大に成長したゴジラを一時的に撃退するも、駆逐艦高雄も半壊する。
それからしばらくして銀座にゴジラが襲撃し、出稼ぎにいった女が巻き込まれる。敷島は彼女を助けようと現場に辿り着くも、ゴジラの熱線による衝撃波に巻き込まれて死亡してしまう。
再びゴジラにすべてを奪われた敷島は、仕事仲間で元海軍兵器開発部にいた男から作戦を持ちかけられる。ゴジラにフロンガスを巻き付け1500m海底に沈めて水圧で攻撃、フロートによる急激浮上による減圧の二重攻撃作戦。武装解除された駆逐艦で民間による決死の戦いが行われようとしている。ゴジラを作戦海域に留めるための囮として戦闘機震電を整備する必要があったが、敷島はその整備をかつて島で出会った男に託そうとしていた。
敷島は震電に爆弾を積み込んで、ゴジラの口に突撃する特攻を計画していた。
作戦が始まり、紆余曲折もあって海神作戦を進行していく。沈め浮かせても尚健在のゴジラ。そこに敷島が特攻し口の中で爆発、頭部を失ったゴジラは海中へと沈んでいく。子供を残して死亡したと思われていた敷島は脱出装備によって生存しており、また銀座で死んだと思われていた女とも再会するのであった。

音響のいい映画館で見たから映像と音の迫力は抜群。ゴジラの強大さや絶望感には鳥肌が立つような心地よさ。
一方でヒューマンドラマは単純で面白みがなく、何よりご都合主義。東京にゴジラが迫ってきているという情報を知らせるべきだと叫んでいた敷島が銀座に女を出稼ぎに行かせて平然としてるのもおかしい、敷島が女の元へ間に合うのもおかしい、早く物陰に隠れずにゴジラの熱線を見ているのも若干おかしい、衝撃波から彼を守るために敷島を物陰に突き飛ばす女もおかしい。序盤の復興のシーンのテンポも非常にルーズに感じてしまった。高評価も納得の映画なのだけれども、個人的には手放しに大絶賛はちょっとしづらい映画だなぁ……いい映画には違いないんだけど、ご都合主義が上回ってしまった。

27:ガメラ 大怪獣空中決戦


海中から現れた巨大な影、島に残された残骸、そして謎の碑文と謎の秘石。古代文明によって生まれたギャオスとガメラが現代に蘇って闘いを繰り広げる。
昔好きだったガメラが見られるようになってたので見る。ちょっと棒気味の演技とCG無しで創意工夫を凝らした特撮とで「大怪獣」を描いた作品。最初はガメラを攻撃しギャオスを捕獲しようとしていた日本政府、しかしガメラは人間の味方であり、ギャオスこそが人類を滅ぼす脅威であった。状況に追いつけず右往左往する政府側といち早く情報を察知して対策する主人公サイドとの対比。怪獣が現実に現れたら社会はどのように反応するのかを想像を巡らせて描き出してるのも好感。
最終盤の空中戦は非常に見応えがある。

28:ザ・バットマン


マット・リーヴス監督による新たなバットマン。今作のヴィランはクイズのリドラー。市長選候補の1人が殺害されたことから始まった事件は奇妙にも裏の顔を暴いていく。清廉潔白だった人物の本性や悪事が明らかになっていき、その流れはついにブルース・ウェインの父、トーマス・ウェインにまで及ぶ。
2020年代のバットマンを目指すような、それでいてかつてのアメコミ原作のどこまでもダークで陰鬱なバットマンへ原点回帰するような創意工夫の凝らされた良いバットマンだった。ただクリストファー・ノーラン監督のバットマン三部作のほうが個人的には好き。今作だとキャットウーマンに位置する女も出ているが、彼女とバットマンとの愛の絡みは果たして必要であったのか、ハリウッドのお約束から抜け出せきれてないのでは……と思わなくもない。
今回は吹替版で見たが、キャスティングが面白い。バットマン役の櫻井孝宏は今作の主演でありテネットでも登場していたロバート・バティンソンでも声を当てていた。おそらく彼の声は櫻井が担当することになるだろう。陰鬱なバットマンを見事に演じきっていた。

以上。
来年の正月にもう一度神々の山麓を見直してもいいかもしれない。あれは元旦に最高の作品だ。

私は金の力で動く。