見出し画像

note版『2023スノーボードの選び方』

割引あり

この記事はkindle電子書籍&ペーパーバックで発売している『2023スノーボードの選び方』をnote版としてまとめたものです。

この記事は「SNSプロモーション」に登録していますので、X(旧Twitter)で拡散して頂くと割引価格で購入することができます。

【詳しくはこちら】


2023 スノーボードの選び方

はじめに


はじめまして、名取崇史(なとり たかふみ)です。
本書を手に取って頂きありがとうございます。まずは、この本を作るに至った私の想いを紹介させてください。

私は、17歳の時にスノーボードをはじめ、高校卒業後は進学、就職をせずにフリーターで冬は毎週のように滑りに行く生活。20歳からスキー場で働き始め、6シーズンを新潟県・シャルマン火打スキー場で働きながら毎日のように滑っていました。

当時はまだパークディガーという仕事が確立されていない事もあり、シャルマン火打スキー場では、スクールがパーク管理を兼任していて。私はどちらかと言うと、パーク管理がメインで、人手が足りない時などはインストラクターをするという感じ。

昔はフリースタイルが好きで、キッカーを飛び、ハーフパイプを滑り。自然地形豊富なシャルマン火打スキー場では、地形を使いながらのフリーライディングも好きだった。とにかく、パークの管理をしながら、毎日のように練習する環境がありました。

そんな生活を6シーズン続け、27歳の時に転機があり。最初は雑用やお手伝い程度でしたが、偶然にもスノーボードメーカーの営業や開発を手伝わせてもらうようになり。私がお世話になった会社はパイオニアモス(以下、モス)で、SURGE(サージ)というブランドを担当していました。モスと言えば、日本最古のスノーボードメーカーであり、世界的にみても歴史のあるメーカーです。

当時、モスの倉庫には、全部ではありませんが過去10数年分くらいのボードが眠っていて。奥の方には埃まみれでボロボロのボードが、数えきれないほどあり。私は勉強のためでもあるし、メーカー業という仕事をはじめたことで、よりいっそうボードというものに興味がわき。時間さえあれば、自分が乗れるサイズのものを倉庫の奥から掘り出しては、エッジを磨き、ワックスをして、ちゃんと滑れる状態に戻した上で、雪山や室内ゲレンデなどに行って試乗をしていました。

そしてただ試乗しておしまいではなく。帰ってきたらボードの設計を担当している人に、「このボードの設計図を見せてほしい」と頼み。もちろん、過去の設計図はデータ上で残っているけど、そんな古いものを探すのも正直面倒だったとは思います。しょっちゅう設計の人には「またですか~」なんて、言われながらも。「どうしても、気になるので見たいと」お願いして見せてもらっていました。

そんな事を繰り返していると、「なるほど、設計がこうなっているからあの時、あんな風に感じたのか」「あの時に、ボードがこうやって動いたのは設計がこうなっていたからか」というふうに、本当によくボードの事が分かるようになり。すると今度は、ボードに乗った瞬間から、「おそらくこのボードはこういう設計になっているのだな」という事が分かるようになり。「じゃあこのボードはこうやって動かそう」「こっちのボードはこうした方がいいだろう」と、ボードごとに乗りかたを変え、滑りを変えることが重要だという事がよくわかりました。

しかも、ボードの違いを意識して滑るようになると、明らかにいままでよりスムーズに滑る事ができるようになり。パークでもキッカーの踏切のタイミング、ハーフパイプでのボトムラン、エアー、グラブなど全てが今までより上手くなったのです。

それは考えれば当たり前のことで、道具を使うスポーツなのに自分が使っている道具を理解していないまま動かしても、良いプレーができるはずがありません。

それまで10年以上スノーボードを続け、6シーズンもスキー場で働き、あれだけ滑っていたにも関わらず。30歳を過ぎてボードの仕組みが理解できるようになってからの方があきらかに上達している。
そして、何よりスノーボードがいっそう楽しくなり、ますます好きになりました。

「いったい、いままで何をしていたのだろう・・・」

そんな時に改めて周りを見渡すと、ボードのことなんか気にしていない人ばかり。デザインや価格、好きなライダーが乗っているからなど、性能もわからずボードを買っている。
ゲレンデでは、「なぜ初心者であのボードを使っているのだろう?」 あきらかに合っていないのに、なぜあのボードで必死にカービングの練習しているのだろうか? 自分もそうだったからこそ余計にその姿がおかしいと感じはじめ。

「この現状をなんとかしたい」という思いが強くなりました。


さて、それではこの書籍を手に取ってくれた皆さんはどうでしょう?

ボードを購入する時、どうしていますか?

お店に行って店員さんに相談するとか、周りにいる詳しい人に相談して購入した。インターネットで調べてなんとなく自分に合いそうな物を購入した。もしくはカッコいいデザインの物を選んだ。そんな感じでスノーボードの場合、デザインや誰かに勧められるがままボードを買ってしまう人が多くみられます。

しかし、それで実際にどれだけの人が自分に合ったボードを選び、自分のボードを理解して滑っているでしょうか?

色々調べて買ったにも関わらず「失敗した」なんて話しをよく聞きますし。それなりに満足しているけど、そのボードのことを本質から理解しているかというと、そうでもなく。「なんとなく使っている」という人が多いと思います。でも、せっかく高いお金を出して購入する物ですからそれではもったいないです。

「道具を使うスポーツは道具を知ること」

これが、上達への近道です。
スノーボードメーカーでボードの仕組みを学び、身をもって体験した私が言うので間違いありません。

この書籍は、2019年に発売した電子書籍『スノーボードの選び方』『続・スノーボードの選び方』の内容をひとつにまとめ修正を加えたものです。
そして、これまでずっとご要望を頂いていた、紙の本(ペーパーバック)でも販売できるようにしました。

内容は、ボードのスペック表の見方や外見から判断できる違い、ボードを手に取って確認する方法など。基本的なことではありますがボードを見極めるうえで大切なことを簡単いまとめてあります。初心者の人でも理解して頂けるような内容になっていますので、本書を読んで頂き、仕組みを理解して、自分に合ったスノーボードを選べるようになってほしいです。

そして、スノーボードが上達し、「楽しい」と思って頂くことができたら幸いです。


プロフィール


名取崇史(なとりたかふみ)
1977年 神奈川県逗子生まれ
・有限会社バックボウル 取締役
・FOSSIL SNOWBOARD代表(スノーボードブランド)
・スノーボードサロン『FORWARD』運営(DMMサロン)
・DOMINATOR WAXアドバイザー
・Voicyパーソナリティ(音声メディア)

小学生から高校卒業するまでサッカーひと筋のスポーツ大好き少年。
17歳の時にスノーボードをはじめ、20歳からスキー場で働きながら7年過ごす。その後、スノーボードメーカーで5年間、営業や開発を経験し。2010年に独立して、スノーボード専門店を経営しながらスノーボードブランドを立ち上げる。2019年に専門店を閉め、現在はスノーボードメーカー経営、スノーボードサロン運営、ドミネーターワックスアドバイザー、Voicyパーソナリティとしての顔をもち、スノーボードに関する様々な情報も発信しています

 【名取崇史プロフィール詳細】
https://natori-snow.com/profile/


 第1章 スペック表の見方


ボードを選ぶとき、デザインなどの「見た目」で選ぶ人もいると思います。もちろん同じお金を出すなら自分好みのデザインの方が良いですよね。しかしそれを重視するあまり、目的と全然違うボードを買ってしまっては元も子もありません。
例えば綺麗にカービングをしたいのに、パーク用のボードを使っているとか。それではカービングを上達するのは難しいです。

ただ、「別にスノーボードは上手くならなくていい、好きなボードに乗って楽しく滑れたらそれでいい」という人なら何も言いません。でも、この本を買って頂いたということは、少なからず「スノーボードを上達したい」と思っていますよね。それであれば、見た目より中身を重視してボードを選べるようにしましょう。

そこで、ボードの特徴を判断する基準としてまず目にするのが、以下の図のように数字が並んだボードのスペック表だと思います。

こちらはFOSSIL SNOWBOARDの「BANKED-R」(バンクドアール)というモデルのスペック表です。
最近は様々な形をしたボードが多く存在しますが、どのような形をしたボードでもスペック表の見方や基本的な構造は同じですので。今回はラウンドボードでキャンバーシステムのこちらのボードを使って説明します。


1-1全長

O.Length(オーバーレングス)= 全長

全長はボードの先端から一番後ろの端までの長さになり。「BANKED-R154」の場合は1540と表示してあり。基本的にボードのスペック表はmm単位で表示してありますので、全長1m54cmという事です。

一般的にスノーボードを選ぶ基準としてこの全長を重視して、「身長マイナス○○cmを基準に選びましょう」と言った具合に “ボードの長さ” を基準として選ぶとされていますが、“それは間違いです”

細かくはのちほど紹介しますが、全長はあくまでも “ボード全体の長さ” です。


1-2接雪長

R.Length(ランニングレングス)= 接雪長

ランニングレングスに関してはメーカーごとに呼び名が違う事も多いですが。日本語で表すと “接雪長” と言う事で、ボードを雪の上に置いた時に “雪面に着いている長さ” です。「BANKED-R154」は、全長1540mmですが、雪面に着いている長さは1150mmという事になります。

このランニングレングスが滑っているときにボードが雪面に着いている長さなので。そのボードの上に乗ったとき、“自分が感じる長さ” とイメージする事ができます。

前後の浮いている部分は滑っているときに雪面に触れるわけでは無いので、接雪長が “自分が感じる長さ” となりボードの長さを選ぶ上で重要になってきます。のちほど詳しく説明しますので覚えておいてください。


1-3有効エッジ

EF.Edge(エフェクティブエッジ)= 有効エッジ

有効エッジは、ボード前方の一番太い場所から、後方の一番太い場所までのエッジの長さを指しています。

これは、ボードを立てたときに雪面に引っ掛かる、ボード前方部分の一番太い部分から、後方の一番太い部分までの “使えるエッジの長さ“ になります。 「有効であるエッジ」という事で、「有効エッジ」と呼びます。

これまでのボードの長さを表す項目、“全長” “接雪長” “有効エッジ” を続けてイメージすると。このボードは全体の長さが1540mm、雪面に着いている長さ1150mm、ボードを立てた時に雪面に掛かるエッジの長さ1190mmとなります。このようにボードの長さを示す数値だけでも3つの項目がありますので、ボードを選ぶときは、単純に全長だけで選ぶのではなく。3つを見比べながらボードの特徴を見て行きましょう。こちらものちほど説明します。


1-4サイドカーブ

Sidecut.R(サイドカットアール)の数値は、上の図のように “円の半径” を示していて、「BANKED-R154」の場合は7790mmなので、半径7m79cmの円を描いた時にできるカーブでボードの側面をカットしているという表記です。

半径が小さければ円が小さく、カーブがきつくなるので “くびれた” ボードになり。反対に数字が大きければ円が大きく、カーブが緩やかになり “ずんどう” なボードになり。

サイドカーブ数値によって、そのボードが “どれくらい曲がるボードになっているのか” という目安になります。


1-5ノーズ幅・ウエスト幅・テール幅

⑤ Nose=ノーズ ⑥ Waist=ウエスト ⑦ Tail=テール

ボードは進行方向の前方部分をノーズと呼び後方部分の事をテールと呼びます。この3点は、ノーズの一番太い部分の横幅、ウエストは一番くびれている部分の横幅、テールの一番太い部分の横幅を示しています。

よくウエスト幅だけを見て、「幅が太い=曲がりにくい」「幅が細い=曲がりやすい」とイメージしている人も多いですが。これを基準にしてもボードの曲がりやすさとは比例しません。

例えばウエスト幅がすごく広くても、サイドカーブ値が小さくくびれていて柔らかいボードであればどんな太いボードでも曲がりやすくなりますし。反対にボードが細くてもサイドカーブ値が大きく硬いボードなら曲がりにくくなります。なので、あまりボードの幅に惑わされず他の数字も見て判断しましょう。


1-6スタンス幅

ほとんどのボードはモデルやサイズごとに “推奨スタンス” が決まっています。

ボードはビンディングを止めるビス穴がいくつか空いていますが、その中でも “ビンディングをこの位置にセットするのがおススメですよ” という場所が “推奨スタンス” です。

「BANKED-R154」の場合は推奨スタンスでセットした場合、スタンス幅が520mm(52cm)になっているという事です。

基本的にボードはこの “推奨スタンスにビンディングをセットする事を前提” に作っていますので、この推奨スタンスにセットして滑る方がそのボード本来の性能を生かす事ができます。

補足しますと、スタンス幅というのはビンディングを4点止めで付けた、4点の中心から中心で測っています。普段自分がスタンス幅何cmで滑っているのかというのも次にボードを買い替えるときの基準になったりもしますので、覚えておいた方がいいです。いま自分が使っている幅が分からない場合は上記画像の位置で測ってください。


1-7セットバック

セットバックは “有効エッジの中心に対して、推奨スタンスの中心がどこにセットされているかを表示してあります”

という事は、推奨スタンスでビンディングをセットした場合、有効エッジの中心に対して自分は何cm後ろ(もしくは前の場合もあります)にいるのかというのを示しています。

「BANKED-R」の場合はセットバック-20なので、有効エッジの中心に対してスタンス幅の中心が2cm後ろにセットされ、自分はこのボードの有効であるエッジの中心より2㎝後ろに立っている事になります。

スペック表のセットバックは「自分がボードの “有効エッジの中心に対して” どこに立っているのか」を知ることができる数字です。


1-8間違ったセットバック

セットバックに関して間違った認識の人が多いみたいですので、補足的にもう少しセットバックについて説明します。まず、ほとんどの人がセットバックは “ボードの全長に対して何cm下がっているか” と認識しているようです。 

ただ、MOSSsnowstickのように、このような形をしたボードではとんでもない数字のセットバックになってしまいます。

「snowstick」のようなノーズが長い形をしたボードでも、「BANKED-R」のような形をしたボードでも、セットバックの計測方法を統一して。 “有効エッジ” を中心に数字を出しています。

こちらの「MOSSsnowstick U-4」の場合はこのような位置関係になります。

セットバックはボードの全長では無く、有効であるエッジの中心に対して何cm後ろ(もしくは前)に立っているかというのを示す数字になり。

セットバック0であれば、有効エッジ(カーブする時に使用するエッジ)の中心に立っている事になり、-10なら1cm後ろに、-20なら自分が2cm後ろに立っている事になります。

自分がボードのどの位置に立っているのかというのは、ボードをコントロールする上で重要なことなので、セットバックもしっかりチェックしておきましょう。


1-9 ボードの形状

今度はスペック表の見方とは少し変わりますが。よく質問されることですし、スノーボードの形を知る上で重要な事なのでここで紹介しておきます。

ボードの主な形状が “ディレクショナル” “ツイン” “ディレクショナルツイン” この3つです。各メーカーのスペック表にも「このボードはディレクショナルです」とか「ツインです」なんて掲載していることがあると思います。

一般的に “ディレクショナル” は前後非対称のボードで進行方向に特化させた形状と言えます。“ツイン” は前後対象のボードで、前方向、後方向どちらに滑っても同じようになるように作っています。

それでは “ディレクショナルツイン” とは?

実はこのディレクショナルツインには決まった定義がありません。

例えばアウトライン(ボード全体の形状)がディレクショナル(前後非対称)でも、中身のフレックスバランスをツインにしてあるとか。
アウトライン(ボード全体の形状)がツイン(前後対称)でも、フレックスバランスをディレクショナルにしてあるとか。
アウトライン(形状)がツインだけどセットバックを入れてあるとか。

要するにディレクショナルの要素とツインの要素を入れ込んだボードであれば、どんな組み合わせになっていても「ディレクショナルツイン」と呼んでいて、ある意味メーカーにとって「都合の良い言葉」と言った感じでしょうか。

FOSSIL SNOWBOARDSのラインナップで紹介すると、以下の図のようになります。

「BANKED-R」はスピード系のボードなので、進行方向に対して強い “ディレクショナル”
「PARK」はその名の通りパークを滑ったり、スイッチトリックしたりしやすいよう、進行方向と逆にも滑りやすいように前後対象の “ツイン”
そして「STYLE」は、アウトライン(ボード全体の形状)はディレクショナルですが、中身のフレックスバランスを前後対象に近いツインのようなバランスにしているので、ディレクショナルの要素とツインの要素が入っていることから “ディレクショナルツイン” と呼んでいます。

なので、ディレクショナルツインという表記があり、どういったタイプのディレクショナルツインなのか分からない場合はメーカーに確認してみましょう。フレックスバランスに関しては第4章で紹介します。


第2章「身長マイナス○○cm」はNGワード


ほとんどの人がボードの長さは全長だけで選ぶと思っていますよね?
そして、「身長-15cm位」とか、「ボードを立てた時に鼻から顎の間位ならOK」とか、そう言われているのをよく聞きます。

しかし、この言葉には「何の根拠もありません」

それにも関わらず、この言葉を鵜吞みにして「自分に合うボードの長さは○○○cmだから」と信じ込み、失敗している人をほんとうによく見かけます。
だからこそ、私は「この言葉を信じちゃダメだよ」「ボード選びはもっと他の部分も見ましょう」ということを広めたくて、この書籍を書いています。

ではなぜこの言葉がこんなに広まっているのか? それは、1980年代後半から1990年代にかけ、日本で爆発的なスノーボードブームが起き、当時はまだ売る側も買う側も、スノーボードのことがよくわかっていない時代。

それでも、沢山の人がお店に押し寄せ、まさに飛ぶようにスノーボード用品が売れました。それこそ、個人店でも年間数千本のボードを売り、年間何億円という売上を出していたような時代であり。この頃は、「ボードの形さえしていれば何でも売れた」なんて言われているくらいです。いまでは信じられないかもしれませんが、そんな時代がいまから30年くらい前にあったのです。

この時代のことを、「スノーボードバブル」なんて呼ぶこともあります。まさに、日本経済の「バブル経済」を兪やしているとも言えます。

それくらい誰もが熱狂し、飛ぶようにスノーボード用品が売れた時代に、いちいち接客なんかしている暇もなく。「ボードは身長マイナス15cmくらいで選べばいい」「ボードを立てて、アゴから鼻のあいだくらいなら大丈夫」と言って販売をしていて。ようするにその言葉をいまだに引きずっているだけです。

それは、令和の時代に「スポーツは練習中水を飲んじゃダメ」という、なんの根拠もないことをいまだに信じて実践しているようなもの。
いまそんなことを信じている人はいませんよね?
それくらいおかしな言葉なのです。

本書ではこの点について、これ以上詳しく説明しませんので、気になる人は音声メディア「Voicy」で「スノーボードバブル」について解説した放送があります。

ぜひこちらを聴いてみてください。

音声メディアVoicy『なとりのラジオ』
【#790 スノーボードバブル時代から学ぶ】https://voicy.jp/channel/1221/394398

 もちろん全長も重要なポイントではありますが。ここまでのスペック表の見方が分かっただけでもボードは全長だけでは無いということを感じませんか? 接雪長が違ったり、有効エッジが違ったり、サイドカーブやボードの幅など、同じ全長のボードでもそれ以外の部分が違えば全然違うボードになります。

それに、昔に比べてボードの種類も増え、簡単にスペック表だけで選ぶことも難しくなっています。

だから余計に全長だけでボードを選んでしまうのはとても危険ということです。

それでは、スペック表の見方が分かったところで、この章ではボードの「長さ」に着目し、「身長マイナス○○cm」がなぜダメなのかについて説明して行きます。


2-1最初は接雪長

ボードの長さを表す表記には “接雪長” ”有効エッジ” ”全長” があります。

その中からまず注目して頂きたいのは「接雪長」です。

1-2接雪長(R.Length)の項目でも説明した通り、これが雪面に接地している長さであり“自分が感じる長さ”となります。

という事はボードの長さを選ぶ基準としては、このボードに乗った時に自分がどれくらい長く感じるのかをまず見てください。

そして、ボードの全長と接雪長は比例しているのではなく、ボードの特徴を出すために長さを変えて作っていますので注意してください。

以下の図では全長と接雪長を比較して少し極端な例をピックアップしました。

このようにボードの全長と接雪長は比例しているわけではなく、モデルごとにバラバラです。

例えばこの中から今現在「BANKED-R157」を使用しているとします。それで次にボードを乗り換えようと思った時に「少し短めのボードが欲しい」と思った場合。ほとんどの人が全長だけで比較して、今より全長が20mm(2cm)短い「STYLE155」を選べば少し短めになるとイメージすると思います。しかし「STYLE155」は「BANKED-R157」よりも長い接雪長1180mmなので、感じる長さはむしろ長くなっています。

また、同じく「BANKED-R157」に乗っていて、「次は極端に短いパーク系の楽に回せて遊べるようなボードが欲しい」と思い。今までより全長が50mm(5cm)も短い「PARK152」を選んだとしても、「PARK152」は接雪長が「BANKED-R157」と同じ1170mmなので、感じる長さは変わりません。5cmもボード(全長)を短くしたつもりでも、ボードの上に立つと同じ長さに感じるというわけです。

では、今度は自分が現在「PARK152」を使用していて、「長さの感覚的にすごく気に入っている」とします。その場合、「自分には152cmのボードがベストサイズ」と思い込み、ボードを買い替えるときに、「152cmのボード」を探すと思います。

そこで、「PARK152」からボードを買い替えようと思い、「STYLE152」のボードを見つけ。「同じ152cmなら自分のベストサイズだから大丈夫」と購入してしまうと。

「STYLE152」は全長152cmですが、接雪長が1140mmしかなく、いま自分が使っている「PARK152」の接雪長1170mmと比べ30mm(3cm)も短くなっています。ということはボードに乗ったときに感じる長さが3cmも短くなっているので、今までと比べかなり短いボードに乗っている感覚になります。

もし、「PARK152」の感覚を気に入っていて、「STYLE」に乗り換える場合は。接雪長1180mmの「STYLE155」を選ぶ方が「PARK152」(接雪長1170mm)と “感覚的には近い”ので。全長152cmよりも155cmを選んだ方がいいということになります。

少し極端な例をピックアップしましたが、実際にこの点を着目せずに、ボードを買ってしまい失敗している人をよく見かけます。初めてボードを購入される場合は基準が難しいと思いますが。ボードを買い替える場合は、現在自分が使っているボードと比べ “感じる長さ” を、同じにしたいのか、長くしたいのか、短くしたいのか。その点を比較した方が長さ選びで失敗することは少なくなります。

ただ、最近は様々な形状をしたボードが多くなっていますし、他の要素も加わって “感じる長さ” というのは変化します。なので、接雪長だけが長さを選ぶ基準全てではありませんが、一般的に言われている「身長マイナス○○センチ」ではなく、“接雪長”も見てあげてください。

ボードの “長さ” を示す数字は、“接雪長” ”有効エッジ” ”全長” の3つがあり。この3つは、滑るときをイメージしながら見てください。

ボードの上に立ったときに感じる長さ = “接雪長”
ボードを立てたときに感じる長さ = ”有効エッジ”
ボード全体の長さ = ”全長”


2-2なぜ色々な長さのボードがあるのか

それではなぜこのように全長と接雪長のバランスはボードによってこんなに違うのか? 

まず、全長はボードが接地している部分から浮いている部分も含めたトータルの長さになります。という事は、接雪長が一緒なのに全長の長さが違うという事は、接地している以外の浮いている部分が長いという事になります。

以下の図のように、接雪長が一緒なのに全長が長いボードは浮いている部分が長く、接雪長が同じなのに短いボードは浮いている部分が短いということになります。

この2つを比較した場合、前方向に浮いている部分が長いボードは、前方(落下方向)の体積が増え重みが増すので落ちる力が強くなりスピードが出やすいボードになります。

反対に浮いている部分が短いボードの場合は体積が少なく軽くなるので落ちるスピードはそれほど速くなりません。

図でイメージしていただくと分かるように、ボードの落下スピードは図左のボードの方が早いです。ただ、図右のボードの場合、落下速度は遅いですが、前後の浮いている部分の体積が少なく軽いので、トリックやスピンをした時のスイングウェイトが軽くなり回しやすいという特徴もあります。

あくまでも一例ではありますが、このようにボードは接地している先、ノーズとテールの浮いている部分を長くしたり、短くしたりする事で特徴を出す事があります。全長はあくまでもボード全体の長さ、そこに自分が感じる長さの接雪長があり、ボードを立てた時に使う有効エッジがあり。その先の浮いている部分はどうなっているのかも含めて判断すると、そのボードの特徴が見えてきます。


2-3ボードの長さは何を基準に選ぶべきか

ボードの長さを選ぶとき、最初に着目して欲しいのが “接雪長” と書きましたが、もちろん選ぶ基準はこれだけではありません。この他にも、サイドカーブ・ボード全体の幅、フレックスなど色々な要素でボードは作られています。

例えば接雪長が同じでも、サイドカーブやボード全体の幅が変われば全然違うボードになります。

なので「これを基準にした方がいい」と断定するのは難しいですが。ここまで読んで頂いただけでも「ボードは身長マイナス○○cm」という言葉がどれだけいい加減かという事が分かって頂けたと思います。

実際にこの「身長マイナス○○cm」という言葉を鵜吞みにして、「自分に合う長さのボードは○○cmだから」と信じこみ。ボードを買って失敗している人をこれまで沢山見てきました。

とにかくまず「ボードは全長で選ぶ」という先入観は捨ててください。そしてボードを購入する時は最低限スペック表を一通り確認し、それぞれのボードの違いを把握して選びましょう。


第3章 スペック表から読み取れる“ボードの動き”


ボードのスペック表は、ただサイズを確認するだけでなく。「このボードはどんな動きをするのか」という “動き方の違い” を比較できるようになると、実際にそのボードに乗る機会が無くてもある程度は特性を判断する事ができます。

それと同時に、自分のボードにはどんな特性があるのか?

自分が使っているボードの事を理解して滑ればより性能を生かす事ができます。

この第3章では、みなさんが使っている(使っていた)ボードのスペック表を見ながら読み進めてもらえるとより分かりやすいと思います。

ただ、今回は一般的なキャンバーボードを基準に話しを進めて行きますので、ロッカーボード、フラット、Vロッカー、ハイブリットなど、キャンバー形状が変わると少し事情が変わる点もあります。

全て説明しているとキリが無くなってしまいますので、まずは基本的なところでボードの違いを確認してください。


3-1 有効エッジ

有効エッジ(EF.Edge/エフェクティブエッジ)はボード前方(ノーズ)の一番太い部分から、ボード後方(テール)の一番太い部分までの長さを指し。

これはボードを立てた時に実際に使用するエッジ部分になるので、「有効であるエッジ」=「有効エッジ」と呼んでいます。

ボードの長さを選ぶ上で有効エッジを気にされる人も多いのではないでしょうか。たまに「ボードは全長ではなくて有効エッジを見た方がいい」なんて事も聞きます。確かに全長だけで判断するよりいいですし、有効エッジはターンをしている時に感じる長さなので、長さを見るポイントとしては重要な部分ではあります。

ただ、有効エッジはあくまでも「ボードを立ててから感じる長さ」になりますので。滑るときの順番で言うと、フラットな状態で感じる “接雪長” ボードを立ててから感じる “有効エッジ” という風に見てあげましょう。

そして、有効エッジは接雪長との関係性に着目するとまた違った特徴も見えてきます。

まずは、接雪長と有効エッジの位置関係を整理しておきましょう。

接雪長は雪面に付いている長さ。有効エッジはボードの一番太い部分までの長さで、ボードの一番太い部分(有効エッジのピーク)は必ず接雪長の先、浮いたところに存在します。
接雪長と有効エッジの位置関係がごっちゃになっている人も多いみたいなので、この関係性をしっかりと覚えておいてください。

ひとつ、有効エッジについて補足をしますと。ボードを買った時、最初に「ダリング」という言葉を聞いた事があるかもしれません。

これは、使わないエッジを削って丸めてしまう作業です。

滑る時に使う「有効エッジ」以外のノーズとテール部分はエッジとして使う事は無いので。不要であると共に、人や何かとぶつかった時に危険であるということから滑る前に削るというのが、ある意味マナーみたいなものでもあります。
※ノーズとテールのエッジは使用しないので、削って丸めておきましょう。


3-2 接雪長と有効エッジ

接雪長(R.Length/ランニングレングス)はボードをフラットにしている時の長さで、有効エッジはボードを立てた時の長さ。
これをイメージして、今度はFOSSIL SNOWBOARD「STYLE155」のスペック表から「接雪長と有効エッジの差」に注目してください。

図のようにSTYLE155は、有効エッジ1220mm、接雪長1180mmとなっていますので、その差は40mm。これを単純にボードの前後2で割ると接雪長から有効エッジのピークまで20mmずつ離れているという事になります。

ここから先は

11,820字 / 27画像

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?