見出し画像

【伝説】鳥羽天皇の病気を治した名取老女と奥州札所三十三観音霊場

春日入の熊野社」の中で、
鳥羽天皇の病気を治す伝説がありました。

諸説ありますが、奥州札所三十三観が選定された根拠に、
鳥羽天皇の病気を治したことが功績としてあげられ、
観音霊場を建てることになったと考えられます。

名取に熊野三社を勧請した伝承のひとつに、鳥羽天皇の病気を治した話しがあります。

「奥州の人々は熊野神社は遠すぎて難しいので、
勅命をもって御分霊を奥州に移して頂きたい」
と願い出た。

ここで名取老女ではなく「旭神子」が、
名取の三社を札始めとして奥州三十三札所を定めたとある。

県北の場合、開山300年以上経った所でなければ、
隣の国の老女(旭)に認めてもらえなかった
とも言われます。


玉藻前(たまものまえ)

鳥羽天皇の病気を治した伝承は、
玉藻前の伝説とよく似ています。(画像※1)

画像1

平安時代末期に鳥羽上皇の寵姫であったとされる伝説上の人物。
妖狐の化身であり、正体を見破られた後、
下野国那須野原で殺生石になったという。

画像2

この話しにのってみれば、
名取老女は「玉藻前を追いだした」ことに。

「上皇は次第に病に伏せるようになり、
朝廷の医師にも原因が分からなかった。

しかし陰陽師・安倍泰成が玉藻前の仕業と見抜く。
安倍が真言を唱えた事で玉藻前は変身を解かれ、
九尾の狐の姿で宮中を脱走し、行方を眩ました。」

画像3

名取老女の藤原家の先祖は、関東の武士の家紋なので、
関東の藤原家に関係していると思いますから、
この話しが、どこかで繋がっているような気がします。

画像4

殺生石のそばに「盲蛇石(めくらへびいし)」という伝説もあり、
大蛇伝説になっています。

九尾の狐とは、3千年も前のこと。
殷(中国)に姐巳(だっき)となり、天竺(インド)では、
耶端国(やたんこく)の華陽婦人となって班足太子を悩ました
金毛白面九尾の狐は、2800年前、再び中国にもどり、
周の幽王をまどわし滅ぼしたという。

1200年前、吉備真備が唐から帰る時、
その船にひそんで日本を渡ってきたとも言われます。

温泉のある所は、
武士の怪我や病を治すために温泉の効能が
よく知られていました。

旭神子の活動

旭神子が登場しておりますが、
もう一つの顔をもつ名取老女です。

名取老女は斎宮の管理監督をしていた藤原家の
役職である「老じょう」によるものですが、

名取老女が巫女とされたのは、
旭神子の存在(口寄せ)があったからです。

この話しは後に詳細を書くこととしまして、
札所三十三観音は、宮城県北部、一関に集中しています。

画像5

赤い矢印は、旭神子と貝田和歌神子を教祖として崇めている大和宗。

白坂観音堂(31番札所)

平成24年「白坂観音堂フォーラム」より。

画像6

白坂観音堂は、岩手県八幡平市西根にあります。(※2:観音堂跡地)

「仏の力を借りて蝦夷の民の心を和らげていただきたい」
との陳情に応じて国府の所在地以外に天皇の発願により
国家鎮護のために建立したと伝わります。(※3)

画像7

728年、聖武天皇の命により行基菩薩が開基したと伝えられています。

他に蝦夷鎮魂のために建立されたのは、同年、天台寺、
730年 黒石寺となっています。

行基は、奈良の東大寺大仏建立に功績をあげた僧侶です。
藤原不比等のブレーン的な存在であった為、
不比等からは信頼されていたそうです。

東北の砂金をみつけたのは百済の渡来人ですが、
百済王の石碑があるなど(涌谷町黄金山神社)、
鉱物資源と霊場は関係しています。

これも「藤原政権に組み込む必要があり」、
仏教を広めているでしょう。

仏教の布教活動を広める目的で数々の宗派が、
災害復興(鳥海山の噴火など)で北東北に訪れています。

ユダヤ、キリスト教、神道など
もっと深く言えば、北方の続縄文文化や、
擦文文化などが東北に多かったためでしょう。

白坂観音堂に、1763年、中興七開基といわれる
宮城県の僧7人が奉納した御詠歌(※4)が木の額に刻まれ
白坂観音堂に納められているそうです。

『紫の雲を染田の観世音 ただ十念のおこたらぬ身を』

また、佐伯郡(安芸地方:広島県)の口寄せは、
まつろわぬ民を鎮め憑きものを落とす意味で、
物申」といい、託宣が重視されたそうです。

※1
鳥山石燕著『今昔画図続百鬼』より。その姿の後ろには狐の尾が見える。

※2 八幡平市鹿角街道WEB http://www.hachimantaishi-bunka.net/archives/326

※3 広報「はちまんたい」2014年10月号 

※4 御詠歌・・・巡礼する人が仏を称えて謡うこと。札所31番の御詠歌の「染田」は七時雨牧場から流れる田代と染田川の合流地点に建てられた沢両寺をさす。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?