見つけてもらいたい。赦されたい。
『(この苦しみは誰にも)分らないですよ。』
『そんな簡単に治されてたまるかと思います。』
長い長い闘病生活。
その”戦い”は、その人を支えその人生を創ってきた「誇り」と言えるのだろう。
少し硬い表情の奥、こちらへ向ける牙はやはりとても愛おしい。
誇り高いのは同時に臆病だからだろう。
そうしたコントラストは、いつも美しい。
さらに奥の柔らかな部分に触れることを許された僅かな瞬間、
そこに、このご縁の意味が凝縮されている気がしてならなかった。
解らぬからこそ、目を向けていたい。
でも分かることもある。
誰しもみな、
誰かに見つけてもらいたい。
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数年ぶりに万引き現場に遭遇した。
かつて、ひと月に1人~10人ほどの窃盗・食い逃げの現場に遭遇する時期があったものだった。
盗る前から鼻が利いたあの頃。自分と似たものを嗅ぎつけるのだろう。
もうすっかりあの感覚を忘れているけれど、
握った手からそのまま袖に入れ込む姿はやはり馴染みあるものだった。
引きとめて、わたしが返しておきますと手を差し出したところ、
咄嗟に振り払われ去っていったけれど、
取った商品は別の棚に置いていった。
良かったと思った。
盗んで奪って、誰にも気づかれないほうが罪は重なるものだ。
奪っておしまいにはならない。ほんとうにならない。
そのことをわたしは、身をもって痛いほどに知っている。
なぜ彼がそれをしたのか、わたしには一生分からない。
かつて見てきた人たちのことも分らない。
そしてかつて、自分がしてきたそれについても、
なんとも、解りきれないものなのだ。
でも分かることもある。
誰しもみな、見つけてもらって、そして赦されたい。
誰かに、自分に赦されたい。
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言えなかったことばかり、
わたしは、わるいこと要らんことをいっぱいしてきて良かった。
そうしてだから、
たくさんの美しいコントラストを、
自分の内と外の世界に、見つけ出してゆく楽しみが深まったなと感じている。
誰かに見つけてもらいたい。
誰かに赦されたい。
そんな誰かのことを、見つけていたいし、
静かに、赦しあっていたい。
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