夏の月

文字を書くことと教えることがしごと。 日本に優しい文字のテロを仕掛けたい。 猫とお酒と…

夏の月

文字を書くことと教えることがしごと。 日本に優しい文字のテロを仕掛けたい。 猫とお酒と音楽を飲むのが趣味。 普段は夏生嵐彩という名前で生きてます。 来年からフランスで生活します。ゆえに金欠病を患っている。 https://sumisalon.com/

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  • フランスは木漏れ日のネオン

    とある物理学者の男と出会い、突然フランスへ行くことになってしまった私。しかも無期限。フランス語はおろか英語もろくに喋れないのに、おフランスでどうやったら生活ができるの?日本で築いたキャリアを捨てて1からやり直せるの?不安はどこまでも消えない。…だがもうやるしかない。 日本での準備〜出発、フランス生活のリアルを綴る。 まずは日本での準備編から読者さんには一緒に付き合ってもらいながら、今の私と共に不安でアワアワし、ちょっぴりのワクワクを抱いて一緒に歩いていってほしい。

最近の記事

パリのど真ん中で大人が泣きべそかいた話

これから長期の旅行に入るという日の前日、私はパリの中心で、まゆ毛としっぽをあらん限り垂らし泣きべそを書いていた。 「わたち…おうちに帰れないかもしれない…」 ゴミ箱三丁目の我が家 ここからは「はじめてのおつかい」主題歌、ドーレミファーソーラシド!ドシラソファミレード~♪を脳内BGMにしながら私の泣きべそ追体験を楽しんでいただこう。 1週間前から家が臭かった。 どう臭いか?というとマンションのゴミ集積場と同じような、あのすっぱいとも苦いとも言えないゴミの平均顔みたいな

    • 自分を飼いならす

      自分の人生を上手く乗りこなしている人がたくさんいる中で、それを横目に「まだこのネジがそろっていないからエンジンがかけられていないだけ」と、ドライブどころか発車すらしていないのに、自分が無能であることを認められない大人がいる。 私もその種の下等な人間の一人だが、うまくドライブできずとも、自分を上手く飼いならすことならできている。それこそがまさに、私の中身がぺらっぺらな理由でもあるのだが、ある程度は機能している。下記のことが一つでも心当たりのある人は参考になるだろう。 自らは

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      • プロポーズは新聞紙の薔薇で

        プロポーズをされた。 まさかこのタイミングで。 ドラマのように一瞬で雑踏が消え、バラードが流れる…というようなことはなかった。むしろ周囲の音はより鮮明に聞こえ、人々の視線が急に自分たちの半径1.5mくらいに集中していたことは感じとれていた。 ただ、聴いたこともないような心音と、脳内に確かに流れる音楽のようなものが私を包んでいた。なるほどこれを人はロマンスなどという言葉で片づけるのかもしれないが、人が作れる程度の単語なんて何の頼りにもならないことがわかる。 実際にはもっと

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        • #3ホームレスなおフランス

          【フランス渡航シリーズバックナンバーを先に読みたい方はこちら】 第一回 第二回 ホームレスな、おフランス 日本人が「フランス」と聞くと、優美で甘い憧れが真っ先に浮かぶ。 しかし実際に私を待ち構えていたのは、ただのホームレス極貧生活だった。 渡仏まであと2ヶ月ちょっと!という時に、将来の旦那さまは一生懸命2人で暮らす家を探していた。フランスは日本のような「不動産屋」というものがなく、不動産サイトに載っている家に自分で個々に連絡を取って見に行かねばならない。 まずここで

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        • フランスは木漏れ日のネオン
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        記事

          #2経験の蝶番

          前回、私がとある物理学者に出会い、フランスに移住することになった経緯について話をした。不安で仕方のない私がそれでも「彼について行く」と決めた理由や、それによって起きたよもやま話を今回はお話ししよう。 なぜ、それでも行くのか 「自分の仕事の都合がつかなさそうだから待つ」という決断をしたって、特に問題はないはずだ。むしろ将来家庭を築く上でも研究者である彼の給与を一切当てにできない分、私がモリモリ働いておく必要があるのだから、日本に残った方が安全策に決まっている。 ではなぜ、

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          #2経験の蝶番

          #1「憧れ」の暴力、フランス。

          私は普段とても動かない。変化はこわいから。 「きっとここで動いた方が後がラクだろう」という要所でサッと動き、仕事めいたことをし、暮らせる基盤を作ったらまた、安定にしがみつく。そんな人生だった。 そんな中、突如 “フランス” が私に殴りかかってきた。 「あのフランスさんがそんな暴力を?」とお思いだろう。そうなのだ。意外かもしれないが、彼女はこの数ヶ月間、私をタコ殴りにし続けている。 彼女の暴力性を皆さんに認めて頂くには、私の仕事人生の振り返りをせねばならないし、フランスさ

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          #1「憧れ」の暴力、フランス。

          ディスレクシアとしての生き方(失読症の読書態度)

          幼い頃から活字よりも音楽や映像の方が好きだった。 言語と身体が即時に一致するから。 活字は脳と身体がリンクするのに時差があるのを感じていた。そしてこんなに時差があるのに面白くない本に当たってしまう時だってある。本は自動的にリスクを負わせ、定期的に私をどっしり疲れさせる。 8つ離れた兄姉から面白いよと勧められた軽めのコミックを読むだけでも2〜3時間かかってしまう。数十分経ってるのにまだ1/10くらいしか進んでいない私を見て「まだそこなの?遅っ!」って言われるのも恐怖で読書は

          ディスレクシアとしての生き方(失読症の読書態度)

          ハゲは勲章

          今、仕事がなくて、もしくは子どもがずっと家にいて育児と仕事と家事を1日も休めず外にも行けず、ストレスで心がはち切れそうな人が溢れている。 限界。 そしてある日突然、自分の円形脱毛症に気づいてショックを受けてる人がたくさんいるらしいことをニュースでみた。 「え…毛が…ない・・・」 はじめての円形脱毛って想像以上にショック。 まず、見た目がショッキングだし、他人に見られたくないし、こんな事になるまでのストレスだったのかと改めて今の状況を呪うし、この程度のストレスに耐えら

          ハゲは勲章

          冷えたごはんが、すき。

          お弁当の冷えたごはんが、大好きだった。 ママが、私よりもずっと早く起きて作ったから、お弁当のごはんは冷えている。それがたまらなく美味しかった。 同じくらい、ぬるくなったリンゴも好きだった。ウサギ耳に切られた皮にいつも胸が躍った。 幼稚園のときでも高校に入ってからもその気持ちは変わらなかった。 ぬるくてまずくて、優しくて美味しいりんご。 最近、お店への自粛要請で、神楽坂もめっきり人が減った。シャッターの降りた街の中、申し訳なさそうに開けている店も病弱な顔をしている。い

          冷えたごはんが、すき。

          いつか小さな声が大きくなったら

          いま世の中がとても静かなので 小さな声のテロを仕掛ける。 命についてとは無関係の話なので不謹慎に思わないでほしい。ただ現在の空気感についての率直な気持ち。 ずっと世間が速かった。 少なくとも私にとっては。 いつも情報に急かされていて、目まぐるしい情報の革命が足元を自動的に運んでいて、私はすくんでいた。 しゃがんでいても勝手に運ばれていた。次のゲームステージに。何もクリアしてないのに。 なんちゃら2.0とか、動きながら考えるとか、それは向いてるやつらにしかできない。でき

          いつか小さな声が大きくなったら