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プロポーズは新聞紙の薔薇で

プロポーズをされた。
まさかこのタイミングで。

ドラマのように一瞬で雑踏が消え、バラードが流れる…というようなことはなかった。むしろ周囲の音はより鮮明に聞こえ、人々の視線が急に自分たちの半径1.5mくらいに集中していたことは感じとれていた。

ただ、聴いたこともないような心音と、脳内に確かに流れる音楽のようなものが私を包んでいた。なるほどこれを人はロマンスなどという言葉で片づけるのかもしれないが、人が作れる程度の単語なんて何の頼りにもならないことがわかる。

実際にはもっと、一瞬ではじける炭酸水のような、爽やかな爆発力で沸騰する熱い血が、はちみつのとろみを帯びて全身をかけめぐるのだ。

気づいたら私は返事をするよりも先に、彼の首に抱きついて離さずにいた。

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