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うちの夫は最初からおっさん

私たち夫婦は世間のそれと比べて少しだけ特殊だ。

一応恋愛結婚ということになっているけれど、実態は契約結婚だし、共通の趣味もない。
夫が外で稼いでくる分、私が家事の一切を取り仕切り、お金はお互いが自由に使う。

その中でも一番特徴的なのが、年の差婚だということだ。
夫は私より20歳年上である。



年の差婚の割合

実は年の差婚に明確な定義はない。

女性誌ESSEが運営する「ESSE online」が行ったアンケートによると、「10歳差からが年の差婚」と答える人が多かった。

出典 ESSE online

婚活市場でも概ね10歳差以上からが年の差婚と見なされている。

厚生労働省が発表する「初婚夫妻の年齢差別にみた婚姻件数・構成割合」によると、2021年最も多かった年の差は「夫婦同年齢」で19.9%。
厚労省は10歳差以上の年の差については明記していなかったが、「夫が7歳以上年上」の割合は全体の9.56%だった。

意外と多く感じるかもしれないが、アンケート結果から見てもおそらく一桁差と二桁差の間には壁があるのだろう。
10歳差以上となると数はグッと少なくなる。



年上が好きだったわけでもなく

年の差婚だという話をすると、必ず「なんでわざわざそんな年上を?」と聞かれる。
これについては単純に「ストライクゾーンが広かったから」としか言えない。

下は18歳から上は70歳まで、別に何歳の人でも構わなかったのだ。
ちなみに私の対戦相手の最高年齢は62歳だが、非常にパワフルでアグレッシブな御仁だった。

そろそろ結婚相手を探そうかなと思っていた20代の頃、当時40代でバツイチの彼がたまたま現れ、すぐ交際を申し込まれた。

「私、次にお付き合いする人とは婚約したいので、結婚を視野に入れてらっしゃらないのであればお断りします」
「分かった。じゃあ結婚しよう」

私たちはお互いに釣書のようなものを作成し、財務状況や宗派の有無、四季報までを確認した。
そして入れてみなければ分からないことも多かろうと、対戦してみてお互いに一定の満足を得られたので結婚したのだ。

こう書いてみるとドライすぎるように思えるかもしれないが、むしろ夫婦仲は良い



年の差婚のメリット

夫は基本的に私を放牧している。
「脱いだ靴は揃えなさい」とか「ちゃんとサッシの汚れも取りなさい」とかお小言は多いのだが、ワガママは大抵許されるのだ。

飲んだ帰りの電車で眠ってしまい、見たこともない駅で降りても迎えに来てくれるし、外食で焼き魚やカニの脚が出てくれば、キレイに身を外して私の取り皿に入れてくれる。

今も彼は「東京から出たくない」という私のワガママにより、地方で単身赴任をしているのだ。
とんでもない嫁である。

しかし、もし私が20歳年下の男と結婚していたら、やはり自分も夫のようにしていたのではないかと思う。
「俺は宝くじに当たったようなものだから」と言う彼のように。



年の差婚のデメリット

夫が最初に転勤になったのは、結婚して3年目頃だった。
真夏のその日、赴任先での夫の単身用マンションを探すため、私も一緒に同行した。

あらかじめ予約しておいた不動産屋を訪ねると、すでにいくつかピックアップされていたので、実際に物件を見るため担当者の男性が運転する車に乗り込む。
そこで担当者は、夫に向かってこう言ったのだ。

「今回はお嬢さんの一人暮らし用のお部屋ですか?」

なんと、担当者は私たち夫婦を親子だと思っていたらしい。
が、これは私のせいでもある。

当時流行っていたテロテロのミニワンピースを着て、「お腹すいた」「暑い」などと言っていれば、まあ子供だと思うのも無理はない。

しかし夫は激怒した。

「もうここでは頼まない」と言って車を降り、別の不動産屋へ行ってしまったのだ。
親子だと思われないように、今度は私の手をしっかり繋ぎながら。



死の迎え方

20歳も離れているので、夫は9割方自分のほうが先に死ぬと考えている。
そこで生活力の無い私のため、結婚してすぐに夫は家を購入した。
そして車も数年おきに買い換える。

「家があればとりあえず困らないし、車は売ればいい。一人では広いと感じるなら、もっと小さな所に住み替えれば、いくらか足しになるだろう」

夫のことを好きかと問われると困ってしまうが、少なくとも愛している。
ここまでしてくれる人は、おそらくこの世に彼しかいないからだ。

見た目年齢を気にする夫のために私は白髪染めを塗ってあげ、一緒に洋服を買いに行く。
そろそろ先々の介護のことも考えなければならない。

私にできることは、最期まで夫のそばにいて彼を看取ることだ。
それぐらいの恩返ししか、私にはできない。

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