見出し画像

太陽の島 1

わたしは小さな豆粒のような大きさなので
眺められる範囲というのも
限られていて
すぐ先の風景は見えるけれど
霧の向こうになにがあるかは
近づかないと見えない。

だから
いままでずっと
見えていなかったが
しかし
どうもこの旅では
わたしは
いくつかの島を順に歩くことになっていたらしかった。

なにしろ
はっと気づいたときにはもう
旅は始まっていたから
旅の行程なんて
知る由もなかったのだ。
ただ行く先々にはいろいろなことがある
ということは
漠然とわかっていた。

ある日わたしは
飛行機に乗って
彼に会いに行き
週末を一緒に過ごしたあと
また飛行機に乗っかって
家へ帰ってきた。
わたしはもちろん
いままでの島に帰ってきたつもりだった。

しかし
ほんとうのところ
わたしは
彼のところへと飛行機に乗ったとき
これまでの島を後にしていたらしかった。
そして翌日
飛行機の爆音とともに
けたたましく上陸したのは
あるとも知らなかった新しい島だったのだ。

たしかにぎょっとするほどけたたましい着陸だった。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?