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戒め 〜final season〜

周りの家具に小さな火がついて、蝋燭を消すようにフーフーと消火をし続ける夢を見ていた。
空が明るい。快晴である。
さっきまで外で高校の同級生とお酒を飲んでいたはずなのに、何故か家にいる。意識が覚醒してきたと同時に二日酔いに気がつく。完全に油断した。

二日酔い恐怖症と言っても過言じゃないのに懲りもせず何度も同じ過ちを繰り返している。なんて愚かな生き物なんだろう。

落ち込むにはまだ早い。これから世界一虚しい確認作業をしなければならない。

〜確認手順〜
1.財布、携帯の所在
2.LINEで怪文書を送りつけてないか
3.財布の中身
4.靴、服を汚してないか
5.写真フォルダ(失った記憶の手がかりになるため)

この手順で二日酔いに悶えながら淡々と確認していく。財布、携帯ある。LINEも大丈夫。服も汚れてない。お金、贅沢に使ったな。写真、いつ撮ったんだこれ。思い出せそうで思い出せない。

一連の作業を終えて、次はどこからの記憶が失われているのか、昨日のハイライトを振り返りながら探していく。


まず、下北沢にある美味しい燻製料理の居酒屋に行った。デカジョッキのハイボールを水のように飲んだ。料理がもれなく酒に合う味付けだったので、おかわりを頼むペースがどんどん加速していった。
途中から日本酒を飲み始めた。日本酒とハイボールの二刀流で楽しくなりながらKPOPの話をした。
この時、水を飲むという飲酒において一番大事な行為を完全に忘れていた。その時点でこれから起こるであろう未来は見えている。

その後友人と解散して、一人で地元の居酒屋に行った。

優勝おめでとうございます。


日本酒をちびちび飲みながら本を読む。完璧に酔っ払っているので内容が全然入ってこない。たまたま隣にいたお客さんも本が好きだったらしく、本の話題を肴にしながらアルコールで喉を潤した。
その後店員さんと乾杯した。この辺りから記憶に靄がかかっている。

楽しいの先にある吐き気を感じたのは覚えている。あと、お会計を二回しようとしたのも覚えている。それ以外の記憶は抜け落ちている。
歩数計アプリを開いたら歩数が少なかったので、恐らくタクシーで帰っているな。住所言えたのか?偉いね。

粗相をしていないかを延々と考えていたら鬱になってきた。酒鬱である。何も考えたくないけど、それでも考えることが今の私にできる戒めなのかもしれない。

二日酔いになったときの反省文として始めた戒めという名の飲酒反省日記。毎回「今回で最後にしような」と心の中の相棒と契りを交わすのに、またこうして戒めを書いている。悔しい。血涙が止まらない。

いつかこの最低で絶望的な日記にも終わりがくるのだろうか。わからない。何もわかりたくない。
それでも私はこれからも酒を飲むだろう。本当に後悔する日が来るかもしれないという恐怖と戦いながら。二日酔いに怯えながら。涙を流して戒めを書きながら。

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