那月

怠け者です

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最近の記事

2024

すっかり生活の一部に爆食が組み込まれてしまった私は、爆食後の胃の不快感と波のように押し寄せる後悔と反省と共に新年を迎えた。 下腹部に溜まった贅肉が「お前は世界で一番怠惰な人間だ」と私を責める。 この世には美味しいものが多すぎるし、ストレスが多すぎる。 要するに、ストレスをカロリーで相殺するのが一番お手軽なのだ。 去年、一昨年の今頃に書いたnoteを読んでみる。やっぱり何度読み返しても不器用な人間だなと思う。 二年前の自分もダイエットを頑張っていたらしい。二年前の自分、本当

    • 園長先生を神様だと思っていた話

      通っていた幼稚園の園長先生を、本気で神様だと思っていた時期がある。それも小学校中学年くらいまで。 当時の私はあらゆることが曖昧だった。この世にポンッと産まれて数年しか経っていないのだから当たり前なのだけれど、清々しい程の曖昧さで生きていた。 友達とするおままごとでは何故か毎回犬役で、四つん這いで「バウッバウッ」と闘犬のような吠え方を喜んでしていたし、友人をブリッジの姿勢のまま追いかけ回していたりした。ちょっとした遊びでも、面白味を見つけるのがとても上手な子供だった。 ちな

      • アルコール侍

        リビングのソファで目が覚めた。どうやら部屋までたどり着けなかったらしい。 目を開けた瞬間に「なんで目覚めてしまったんだ」という強い後悔が脳天に突き刺さった。痛い。ものすごく痛い。心も痛いし普通に二日酔いなので頭も痛い。 携帯を開く覚悟がまだない。引き落としの履歴や優しい友人からの「大丈夫?」の通知を見た瞬間から償いの時間が始まるから。 とりあえず吐きそうなのでトイレに向かう。最悪のモーニングルーティン。カスのvlog。 犬がいる。赤ちゃんの犬コロがいる。死んだ顔をした私を見

        • 可愛いわたしたち

          初夏に書き始めていた日記の下書きを削除した。時間を置きすぎて賞味期限が切れてしまっていたし、無理矢理続きを書いたとて、きっとできあがるものはいびつで、とても人が読めるようなものではないだろう。誰に頼まれているわけでもないから、何の迷いもなくデータを消せた。足元で猫がにゃう、と鳴いた。 何かを変えようと意識しない限り、コピーしてそのまま貼り付けたような1日がやってくる。次の日も、その次の日もだ。 多少変わった出来事が起きても、時間という波によって、それらの出来事は簡単に攫われ

          描いた夢と、ここにある今。

          知らないベッドで目覚める昼。隣で親友が眠たそうな顔でもう昼だよ、と項垂れる。 そうだ、思い出した、ここは親友の家だ。 「自分シャワー浴びていいすか?」 そそくさと親友が身支度を始める。 1人だ。こういう1人になった瞬間が一番やばい。酒鬱である。 記憶。私の何も頼りにならない記憶を辿る旅。親友よ、早くシャワーを浴び終わってくれ。私に考える暇を与えないでくれ。 吉祥寺、公園口。 親友が視界に入った瞬間、思わずキスをしたくなるほど嬉しかった。この世界で一番愛している人間なのに、お

          描いた夢と、ここにある今。

          思い出よ、さようなら

          割れそうな頭の痛みで目が覚める。この痛みは、知っている。忘れかけていた痛み。思い出したくなかった痛み。二日酔いである。 30秒くらい放心して、あれ、今日働いてなかったっけ?と気がついた瞬間に、全身を悪寒が駆け抜けて一気に目が覚める。 そうだ。今日、というかさっきまで私はバイト先であるバーで働いていたのだ。で、そこで働いていた時の記憶が抜け落ちている。お得か? 記憶がなくなっても働いていたことになるのだろうか。次に出勤した時に「もうあなたのタイムカードはありません」と言われて

          思い出よ、さようなら

          頑張れ不器用

          もう紫陽花の咲く季節になった。 毎年この季節になると、部活動をがむしゃらにやっていた頃を思い出す。 私は学生時代、バレーボールをやっていた。それなりに頑張っていたけれど、途中で頑張ることを辞めた。辞めた、というより頑張ることが怖くなった。 頑張った先にある自分の限界を知ることや、結果が出ないことが堪らなく辛かった。自分の力量を知って受け止めるには、私はまだ若過ぎた。無意味にスカすことが私なりの現実逃避だった。 精一杯強がっていても私は弱い人間な訳で、高1の夏休みにストレス性

          頑張れ不器用

          日记

          水嵩がすっかり減って、ぬるくなった湯に浸かりながら多和田葉子の「地球にちりばめられて」を読んでいたら、23歳になった。 22歳になってからの1年間は、新しい環境に飛び込んで、もみくちゃになりながら日々を過ごしていた。擦り傷と共に、色鮮やかで何にも代え難い瞬間を得た。新しい世界を沢山知った。世界は自分が手の届く範囲にしか存在しないのだ、という言葉を思い出した。 こうして自分というものが広がっていくのだと思った。広がりすぎて、私の手から零れ落ちてしまうこともしばしばあった。

          そして戒めは続く

          全ての記憶がない。15時半。何故かアウターを着たまま眠っていたらしい。 身体のあちこちが痛い。事故にでも遭ったのだろうか。何もわからないまま、起床。 携帯を確認して、謝罪。もう何に対して謝罪をしたらいいのかもわからない。謝る理由があまりにも多すぎる。そして色々なものを失いすぎている。 貴重品はしっかり持ち帰っているようだ。後から母に聞くと外に捨ててあったらしい。大事なものなど私には、ない。装着していたリングは無くなっていた。 記憶を巡る旅。 18時、原宿。大都会。多すぎる人

          そして戒めは続く

          明るい闇のなかで

          暫くの間、ぼうっと過ごしていた。ごちゃごちゃとずっと何かを考えていたような気もするけれど、結局まとまらないまま、頭の中をふわふわと移動している。頭の中が空っぽの気体で満たされて、何かを考えようとする身体を拒んでいるようにも思える。 どうしても動く気になれなくて、いつもより早めの時間に布団に入った。 目を瞑っていたら、耳元で沢山の人が何の繋がりもないことを、ひたすらに話している声が聞こえた。 はいはい、例の金縛りですね、と余裕ぶっていたものの、身体が自由に動くとわかった瞬間、

          明るい闇のなかで

          月刊 戒め

          部屋も外も暗い。どうやら夕方か夜らしい。そこまでぼうっと考えて、戒めを生産するというタスクが増えたことに静かに絶望した。頭が半分眠っていて、その絶望に薄いベールがかかっていたことがせめてもの救いだった。一生目覚めたくないと思った。酒鬱と真っ正面から向き合える体力が、今の私にはない。 自主的に眠ろうとした。暫くそうしていたら金縛りにあった。女性が耳元で「大丈夫?」と囁く。大丈夫じゃない。全くもって、全然大丈夫じゃない。 金縛りから解放された瞬間に、頭の中にかかっていたベールが剥

          月刊 戒め

          黎明

          年、明けましたね。あけましておめでとうございます。 この一文を書いた後に、そういえば去年はどんな書き出しだったかな、と読み直してみたら全く同じことを書いていた。静かな部屋に私の嘆息だけが聞こえる。1年で人はそう変わらないし、来年も再来年も同じことを書いている気がする。 大晦日の夕方、近所の公園を散歩した。 日課、というには少し疎かになっていた行為を、心の内で誰も聞かない言い訳をしながら再開した。少し日を空けるだけで、家に出るまでのハードルが50cmくらい上がる。一旦出てし

          戒め 〜final season〜

          周りの家具に小さな火がついて、蝋燭を消すようにフーフーと消火をし続ける夢を見ていた。 空が明るい。快晴である。 さっきまで外で高校の同級生とお酒を飲んでいたはずなのに、何故か家にいる。意識が覚醒してきたと同時に二日酔いに気がつく。完全に油断した。 二日酔い恐怖症と言っても過言じゃないのに懲りもせず何度も同じ過ちを繰り返している。なんて愚かな生き物なんだろう。 落ち込むにはまだ早い。これから世界一虚しい確認作業をしなければならない。 〜確認手順〜 1.財布、携帯の所在 2

          戒め 〜final season〜

          燃ゆる日々

          喉が燃えている。ついでに胃も少し燃えている。頭の中に灰が音もなく積もっていく。 めらめらと燃え盛る烈火ではなく、熾火のような静かさで燃えている。 静かなので、触るまで燃えていることに気づかない。不意に触れた瞬間に、燃えているという事実と、その温度の高さに驚かされる。 この数ヶ月で、過去の自分の数年分、人と会話をしている。今まで人と会話をしなさすぎたのだと思う。 自分が発した言葉にすぐ返事が来ることに、毎回新鮮な気持ちで驚く。なんだか熱くなる。何かの摩擦によって発生したエネ

          燃ゆる日々

          死体はバーに置いてくれ

          鉛のように重くなった身体を引きずるように起こして、何も考えずに麦茶をガバガバと飲んでいる時、一番生きているという感じがする。ベッドから起き上がったときに精神はそこに置き去りにしてきたらしく、まだベッドに大人しく横たわっている。動く度に頭で鐘が鳴る。これが痛みか。 昨日はどうなったんだっけ。そう、久しぶりに新宿に行ったのだった。紀伊國屋書店で本をたくさん買って、なんとなく外で呑みたい気分になって地元の焼き鳥屋へ行き、ハイボールと焼き鳥を淡々と食べ続けた。間違いない組み合わせ。

          死体はバーに置いてくれ

          変化の夏

          いつの間にか夏が来ていた。夏は、あまり好きではない。暑さってどうしようもないから。梅雨が光の速さで通り過ぎたかと思うと、全ての気力を削ぐような暑さが続いて本当に嫌になってしまった。休日はひたすら家に籠り積読を解消する毎日だ。 しかし今年の夏は、少し違う。 アルバイトを始めた。地元にあるバーである。 兄に連れられて以来、密かに心の拠り所にしていた大好きなバーで働くことになったのは、まさに僥倖だと思う。 歳を重ねるごとに腰が重くなり、家に引き篭もりがちになっていた私は、どんど

          変化の夏