見出し画像

中国甘粛の旅10 蘭州-モザイクの町

甘粛の旅 その10(2015年5月23日)

23日に蘭州に戻り、切符売り場に行くと、運よく25日のチケットがありました。何百席あるか知りませんが、正真正銘その最後の1枚です。蘭州-呂梁路線は、1日に1本しかなく、午後3時過ぎに出て、翌日の午前3時に呂梁に着きます。そんな時間に着いて、もちろん迎えに来てくれる人がいるわけでなく、そうとうに厳しいですが、他の方法は、銀川で乗り換えるしかなく、これだと1日余分にかかってしまいます。まぁ、季節もいいことだし、最悪“夜明かし路線”を覚悟して購入しました。

先回泊まった西湖公園から、バスでひと駅東に行った、「西関什子」(xi guan shi zi)という辺りが最も賑やかなところのようで、ぼちぼち徒歩ででかけました。これがまた遠かったんですね。中国のバス停というのは、必要に応じて設置されるので、間隔がものすごく短かったり長かったりします。もっとも、ぐっと田舎のバスだと、必要に応じて手を挙げれば喜んで停まってくれますが(みな民営だから)。

日曜日のせいもあって街は大賑わい。若者と庶民の繁華街です。ブランド衣料の店などは見当たりませんでした。

画像2

画像3

この“中華クレープ”がめちゃ気に入って、私は蘭州で3回も食べてしまいました。同じようなものを北京でも離石でも売っているのですが、ここのは特別においしかったです。もともと山東省の名物のようで、よく“山東風味”だとか書いてます。この皮に高粱や粟や稗や蕎麦や、とにかく20種類(!?)くらいの雑穀を使っているそうです。ものすごく薄く焼くのが特徴で、味噌っぽいたれと唐辛子を塗って、中に油で揚げたエビせんべいみたいなものとレタスを挟んでくるくる巻き、二つに切ったものが、前に並んでいます。1枚4元(1元≒16円)。中にソーセージを加えると5元。中国人はなんだかソーセージが大好きで、何にでもソーセージを加えるのがワンランク上みたいです。

画像4

ここは、大連から来たイカ焼き串と韓国のトック餅と武漢のなんだかわからない串焼きを売っていました。この‶大連のイカ焼き″というのも全国どこにでも出回っていて、香辛料がバッチリきかせてあっておいしいです。1本2元。ただし、足と耳。胴体は多分3元とか4元。

画像5

このさくらんぼは500グラムで15元。日本では高くてなかなか食べられないので買ってみましたが、お味の方はやっぱりお値段相応ということでしょうか。さくらんぼは季節が来るとあちこちで売っています。つまり、桜の木があるということでしょうね。

画像6

路上で牛蒡を売っていました。これは寧波でみたものと同じです。後ろの箱に、健康という文字が見えるので、やはりそれで売ってるんですね。ウチの村でも一度、栽培の仕方を教えて欲しいといってきたおじさんがいましたが、ゴボウを育てるなんていうと、こりゃ相当な技術がいりますよね。おじさんは目が悪いのだけれど、日本のゴボウが効くとかいわれたそうです。

画像7

ミニトマトもどこででも見かけますが、必ず果物屋で、八百屋ではみかけません。普通のトマトは八百屋。けっこう厳格なテリトリーがあるみたいです。

画像8

クワの実もときどき見かけます。そりゃ、絹の大産地なんだから、当然でしょうね。売り子さんがいなかったので、値段は聞けませんでした。

画像9

この牛の頭は、たぶん、スライスして酒のアテにするのでは、と思ったのですが、イスラム系の人は酒を飲まないので、違いますよね。どうやって食べるんでしょう?ウチの村の方では、豚の頭を売っていて、酒のアテにしています。あと、葬儀の時の供え物。けっこう高いです。

画像20

「天龍 イスラム ノンアルコールレストラン」と書いてあります。イスラム教の国に産まれなくてよかったです。

画像10

この屋台というか、バイクに括り付けた荷台で売っているのは、「涼皮」という、わらび餅みたいな感じのおやつです。「臨夏」というのは、夏河に隣接する回族自治州。夏河ー蘭州のバスで通過するのですが、町中がモスクだらけでした。

画像11

バスの中から見た臨夏。次回にはぜひ行って見たいと思います。私の経験上、イスラムの人たちは旅人にほんとうに優しいのです。旅人をもてなすのはイスラムの伝統で、道を歩いているだけでもよく声がかかります。

画像12

繁華街のど真ん中に、押しつぶされそうにして道教の寺がありました。

画像13

チキンを売っていたおじさんお勧めの店でもう一度涼面を食べました。ここは、酢とニンニクと唐辛子のたれで、私は馬有布の方がおいしいと思いました。馬有布は、全国に300店ほど支店があるそうです。

画像16

このおじさんは中国中どこに行ってもいます。マックもありますが、チキンの方が安いし、中国人には口に合うようで、圧倒的にケンタの方が多いです。

画像14

現金輸送車。私が近づいても、「なんだ、ばあさんか」て感じで無視されましたが、若い男性だったりしたら、発砲されかねませんよ、気を付けてくださいね。こういう人たちは、まず間違いなく人民解放軍出身者です。

画像18

画像19

「蘭州站」のハス向かいに長距離バスターミナルがあって、ここから西安、成都、重慶、銀川などへ行くバスがあります。敦煌行きも1日に1本あって、260元。ほとんどが夜行寝台バスですが、女性のひとり旅にはあまりお勧めしません。

画像19

これはもう蘭州駅で列車に乗る前ですが、こんな装甲車がドデン!と陳列してあってギョッとしました。写真ではどうてことないですが、現物はものすごい威圧感があって、“暴動”を起こすと、こんなのが出てくるのかと思うと、そりゃもう恐ろしいです。そのために陳列してあるんですね、もちろん。

画像1

列車の中から見えた黄河。蘭州より下流になるわけですが、ずっと川幅は狭いです。しばらく先で、もう一度黄河を越えましたが、つまり長江(揚子江)のように平坦な川筋ではなく、黄河は至る所で曲がりくねっているので、川幅も広くなったり狭くなったりするようです。

画像17

中国の列車は実にいろんなものを売りに来ます。日本と同じくカートに乗せてカップ麺や飲み物を売りに来るのはもちろんですが、「鉄路局」傘下に大小さまざまな企業があって、まるで‶香具師″みたいなおっさんが回って来て、口上を述べながら売り歩くのです。よく見るのは、歯ブラシ、靴下、おもちゃ、日用雑貨などでしょうか。この写真のおじさんは「站台票」という、プラットホームの入場券の青蔵鉄道記念票を売りに来ました。いつも思うのですが、実に口上がうまいんですね。それで聞いてみたら、やっぱりそれ専門の職員なんだそうです。鉄道マニアの同僚がいるので、つい1セット買ってしまいました。

翌日午前3時に呂梁に着くと、例によって白タクが待ち構えていましたが、村まで1時間も乗れば、ぼったくられること必定なので、待合室で朝まで待つことにしました。しかし中国の駅は、「進站口」と「出站口」が完全に分かれていて、これから乗る切符がないと待合室のある進站口には入れません。私は「こんな時間にひとりでタクシーに乗るのは怖いから…」と、極力気の弱そ~~な口ぶりでいってみたら、さすがに中に入れてくれました。

やれやれと待合室の固いプラスチックの椅子にもたれて、あぁ今回の旅も無事に終わった、なかなか収穫の多い旅であったと、反芻しているうちに眠り込み、昼前にハッと目が覚めて、蘭州ー夏河の旅は無事終了しました。

村に帰ってWikiを見てみたら、甘粛省というのは、中国最大級の石油埋蔵量があるようです。それで、石油関連で儲けている人が多いから、銀行の前に並んでいる車なんかも、ものすごく立派で、日本車よりもワンランク上の車がずらりと並んでいました。

でも、モスクの人が、古来より商売で繁栄しているといったのも確かです。考えてみると、石油産業というのは比較的新しいわけだから、きっと漢族が牛耳っているのではないかという気がします。それで回族は、貿易などに関わっている人が多いのではないでしょうか。

以前に観た、張芸謀の『あの子を尋ねて』の舞台が、確か甘粛省の天水だったと記憶しているのですが、あの当時は甘粛というと、中国でも最も貧しい省のひとつといわれていたはずなので、その落差にびっくりし通しでした。

蘭州には都合5泊しましたが、その多様性の“渾然一体”感が、なまなかの歴史ではなく、どっしりとした貫禄があって、非常に魅力的な町でした。古来より、無数の人々が行きかい、モノが集散し、文化が交じり合い、回族も東郷族も漢族もチベット族も、そして海外からビジネスでやってきた人も留学生も観光客も、みんな当たり前の顔して、今もモザイクのように街を彩り、何千年という長い長い時間を共に紡いで来たシルクロードの要衝、蘭州。いかがですか?とりわけ若い方々にはお勧めです。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?