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クリスマスイブのおひとり様会で女性たちがドン引きした男性のある一言

イブの“おひとり様会”の招待状

それは昨年の12月のある日のことだった。
都内で結婚相談所を運営する女性起業家Aさんから一通のラインが届いた。
「12月24日のクリスマスイブに、ゆる~い、おひとり様会をやります」。
場所は田町にある和風ダイニングというが、きっと居酒屋に違いない。ゆる~いおひとり様会に相応しく、気取らずカジュアルなお店のセレクションはAさんらしいと思った。

40代で一人息子のいるAさんは個人仲人だけでなく、男女の出会いをプロデュースするイベントやパーティをアクティブに開催している。
もちろん本業の仲人業の一環として、登録している男女の婚活パーティもがっつり行っているというから、いわば“本気の仲人業”と“ゆるくてもいい合コン幹事”をバランスよく楽しみながら行っているのだろう。そこには「人の世話をするのが好き」というAさんのパーソナリティもほどよく加味されていた。

Aさんは他に、実家のある地元でBNIを立ち上げたり、某企業の福利厚生として“婚活部”という社員の婚活を推進する部署の設置を提案する等、経営者として常に新しい分野を開拓するパイオニア精神にも満ち溢れ、常に前向きな女性だ。

また人と人との繋がりを優先するAさんから、あまり“お金の匂い”がしないことも、好かれる要因だろう。拝金主義の結婚相談所が多くなるにつれて、婚活する人たちも目が肥えている。アプリ婚活が主流となりつつある昨今、結婚相談所はますます激戦区になっているため、代表者のスタンスはもちろん、仲人の人柄が重要視される傾向も今後も続くだろう。

さてAさんからのお誘い。私は「緩いおひとり様会だったら参加してみようかな」と参加ボタンを押した。
イブは猫と一緒に過ごす予定だったが、久しぶりに飲み会に参加したくなったのは、コロナ禍の自粛ムードが緩和されて、コロナ前のクリスマスネオンのきらびやかな雰囲気があったからかもしれない。
また様々な世代の男女に会ってみたいという好奇心もあった。ゆるいおひとり様会への参加者は、心の中で婚活を意識しているに違いない。20代、30代、40代、ひょっとして50代もいるかもしれない。それぞれの婚活事情を聴いてみたくなったのだ。
会費は5000円。一人1000円ぐらいのプレゼントも。プレゼント交換も久しぶりだ。私は渋谷のスクエアビルのギフトショップで、ゴールドの砂時計を購入して、田町へと向かった。

参加者は熟年世代の男女

仕事の関係で30分ぐらい遅刻した私。店に入ると、2階の会場に案内された。
そこには私の予想と違って、幅広い世代ではなく、40代ぐらいの男女4人がAさんと共に会食をしていた。
ゆるいおひとり様会は私を含めて5人。男性2人に女性3人だった。
席に着くとすぐに前菜の盛り合わせが運ばれた。最後の参加者である私を交えて、二度目の乾杯が行われ、少人数だったのですぐに自己紹介タイムがスタートする。

私の左隣の女性はボーイッシュなヘアスタイルの自立したタイプの“ちょっといい女”。
職業はインストラクターでスターバックスが大好きなのだという。フィーリングが合う男性ならウェルカムという雰囲気が漂う。

もう一人の右隣の女性は、金融関係の事務職に就き、「仕事が嫌で、嫌で、溜まらないけど、生活のため我慢して働いている」と不平や不満もはっきりと口にする。
その場の雰囲気がそうさせたのだと思うが、彼女はこれまでの男性との付き合いのことも話した。男性らとぎくしゃくした関係になってしまったのは、おそらく小さい頃から男尊女卑で育った環境の記憶が今でも引きずっているのだろう。
男尊女卑をきっぱり否定して「私には関係のない世界」と決別することで、例えその状況になったとしても、さっと身をかわすことができるのに、彼女の心の中に、男尊女卑の残存があるため、きっぱりと決別できないのだろう。そのため男性を見分ける目が定まっていないと思った。
最後に私の自己紹介が終わってから、続いて男性2人が口を開く。
その後に、女性達を震撼させることが起こるとは、誰も予想できなかった。

ラーメン屋を経営する50代初めぐらいの男性は、とても優しそうだ。
女性たちの話を聞きながら、「女性って大変ですね」とか「知らないことが多い」と、女性に共感したり歩み寄ろうとしている。コロナで経営する複数のラーメン屋が閉店に追い込まれたが、本店だけは守っていきたいという経営者としての心構えも見せてくれ、彼は自分に相応しい婚活相手を見つける可能性が大きいと感じた。

そしてラストは、元サッカーワールドカップにも出場した中田英寿似の40代ぐらいの男性だ。
だが自己紹介を聞いても、どんな人なのかよくわからない。初対面ですぐに相手のパーソナリティをつかむというのは至難の業だが、オンラインと違って、対面の場合は相手の表情や声、雰囲気から、相手のことを推し量れるのだが、彼の場合は“よくわからない”。ただにこにこと笑顔を浮かべているのだけ。そのため特徴がつかみきれないので、ずっとモヤモヤを感じていた。

女性達を驚愕させた男性の、その一言

その後、ブリ焼きなどの魚料理やタルタルソース添えのカリッと揚げた唐揚げなど、次々と出される料理に堪能しながら、いろいろなテーマで歓談となった。
婚活の話になったときに、私はふいに目の前の中田英寿似の正体不明な男性に質問してみたくなった。

「あなたはどんなタイプの女性が好きですか」

すると不意打ちされた男性は、誰もが予想できないことを即答した。

「家庭的な女性」

その瞬間、私たち独身の3人女性は全員「え~」と悲鳴を上げ、ドン引きしてしまったのだ。

それまで女性3人は、仕事のことも話題にした。インストラクターの女性は「仕事が大変」とは言わなかったが、スタバでくつろぐのが好きというのは、好きな仕事かもしれないけどそれなりに苦労もあると思われる。

また事務職の女性は自己紹介の前から仕事が嫌いだと口をとがらせていた。
私も一言も「仕事が辛い」などと発言しなかったが、都会で、しかも一人で生きている女性が「仕事がきつくない」など、口が裂けても言えないのではないか。

生活の心配のない専業主婦と働く独身女性がなかなかすり合えないのは「生活がかかっている」か否かという生きている環境が異なること。
生活のために、職場の人間関係に悩んだり、仕事に対する不安を抱いたりなど、働く女性は常に仕事のことで頭がいっぱいになりがちで、時には振り回されることもある。
そのため家庭のことだけをやっている専業主婦とは、生活するうえでまず経済的なことから始まり、様々な苦労が生じるのだ。もちろん、専業主婦もいろいろな苦労や葛藤があるだろう。だが社会で働くことから得られる幸福感と、働いても報われない虚無感という両極端の状況を知っているのは、働いている女たちだ。

そんな都会で働く女性3人を前に、「好きなタイプは、家庭的な女性」とは、何事か。
私たちに喧嘩を売っているのかと思わせるようなインパクトがある一言だ。
また仕事でくたくたになって女性に、「家庭的」を求めるのは、料理も家事も完ぺきにやってくれという、男性特有の傲慢さではないだろうか。

私たちの悲鳴とドン引きで発言した男性は「しまった」と慌てたが、もう遅すぎた。
3人の女性に共通していたのは「働く女性の気持ちをわかっていない男が、なぜこの場にいるの?」という戸惑いと怒りだった。
そこで不意打ちを食らわせた私はこの場の雰囲気を緩和しようとして、男性に「家庭的と言うのは、一緒に美味しいものを食べたら美味しいねとお互いに言い合える関係ですが」と、かなり無理めの理屈を男性に投げかける。
すると彼が「ええ、そうです、そうですぅ」とこれまた苦しい答弁。
場を元に戻そうという私の努力もむなしく、他の女性達は「都会で働く女性に、家事も完ぺきにやれという、女性に無理難題を押し付ける男が目の前にいる」という現実におののいていたが、でもそこは社会人。何事もなかったような表情を浮かべながら、3人の女たちは必死に堪え、締めのカレーライスを食べて解散となったときに、主催者のAさんや男性らに挨拶もそこそこで、一目散に駅へと向かった。

そして楽しい時間を共有したもの同士なら、ラインの交換をするのだが、イブのあの場所でまるでお化けにでも出会ったような寒々とした気持ちを抱えながら別れの挨拶をして、それぞれの家路に向かった。

その最後の挨拶はまるでお互いの心を打ち明けているよう。「寒くなってきたから、風邪ひかないように気を付けてね」。

男性はただ女性を愛せばよいという時代は終わった。
今は女性が置かれている状況を理解することも含めて、「愛」なのだ。
 

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