恋人に会いたい

恋人に会いたい。

30歳にもなって、付き合って8年の恋人にこんなに恋焦がれるなんて、聞いて呆れる。でもしょうがない。数年前はいつまでこんなに恋人のことが好きなのだろうと好きすぎて不安になることもあったけれど、最近は開き直っている。

だって好きなんだもん。しょうがないよ。


わたしの仕事始めは2月。ここしばらくは家にいて勉強するか本を読むか筋トレするかみたいな生活を送っていて、ご時世もあり人と会う機会はめっきり減った。本当は今日の夜、恋人の家に行く予定だったのだけれど、彼は仕事で疲れが溜まっているらしく明日に変更になった。もちろん彼の体調が第一なので二つ返事でOKをした。

正直今日も明日も変わらない。さっきラインをしたらだいぶ回復したようなので明日は会えるだろう。なのに、なのに。彼に会いたくて、ハグしたくてたまらないわたしがいる。

人とあまり会わない日々を過ごしているからかもしれない。まあ、先週の土曜も友達に会ったしなんなら彼にもあったけど。自分の家にいるのに飽きたからかもしれない。いや、世界で一番居心地の良い場所が自分の家なんですけど。


彼の家に行ったら、合鍵は使わずわざわざインターホンを鳴らして開けてもらう。わざわざ本人にドアを開けてもらうのがいいのだ。きっといつもの紺の部屋着を着て「おかえり」と言ってくれる。そういうところ、好き。少し鼻の赤いわたしの荷物やコートを何も言わずに持ってくれるだろう。すぐにでも抱き着きたいけど我慢。手洗いうがいはちゃんとしないとね。終わったら振り返って、わたしの荷物を片付ける彼より先に、ソファに座る。そしたら彼のほうをみて、両手を伸ばす。彼はちょっと笑って、わたしの横に座りぎゅっとハグをしてくれる。わたしの冷たい頬が彼の首筋に触れて、冷たいから離れてと言う彼にわたしは嫌だと笑う。

・・・なんて妄想していたら、もっと会いたくなってきちゃった。困ったな。ちなみにわたしも彼も電話を頻繁にするタイプではない。遠距離恋愛の頃はよくしていたけれど、どんなに長い時間電話しても、たった一回のハグには敵わないとその時悟った。


ああ、早く明日にならないかな。明日は上野の国立博物館に行く約束をしている。ポンペイ展を観に行く。会って顔が見たい。早く手を繋ぎたいな。ねえ、好きだよ。



世界はそれを愛と呼ぶんだぜ