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変わらないものが、ここにあった。【ポルノグラフィティ/一雫】

音楽とか、スポーツ選手とか、アイドルとか、漫画とか。とにかく一度、何らかのファンになった人ならわかると思う。

必ず一度はどこかで、「昔と変わったな」「前のほうが良かったな」と感じる日がくる。

それはかつて、わたしとポルノグラフィティの間にも生まれた溝だった。

語弊がないように言うが、それはポルノが悪いわけでも、わたしが悪いわけでもない。


だって、そういうものだ。

人は変わらずにいられない。自分ではそう思っていなくとも、確実に変化は現れる。
愛し合っていた恋人同士でさえ、同じ理由で別れてしまうことがあるのだから。
過去は、絶えず美しい。


けれど、この持論は今回、見事に打ち砕かれてしまった。
ポルノグラフィティの一雫、という曲によって。

この世界には変わらないものがある。
それは他でもない、ポルノグラフィティだということ。

悔しいくらいに見せつけられて、証明されてしまって。わたしは幸せすぎて、涙が止まらなかった。


***


新曲「VS」のカップリング曲、「一雫」。
デビュー20周年のファンへの気持ちを綴った曲で、発売するや否や、ファンの間で話題になった。


ちなみにわたしはこの曲の再生回数だけなら全宇宙一位の自信がある。
(毎日2時間以上聞いている・・・我ながら狂気だと思う)


この曲はとにかく伏線がありすぎるので、細かい解説は省く。ツイッターで曲名を検索するだけでたくさんの解説が出てくるので、詳しくはそれを見てほしい。

ただひとつ、この曲からわたしが受け取ったこと。

それはこの曲が、デビュー5年前後のころにポルノが(主にギタリストの晴一さんが)語っている、アーティストとしての夢と矛盾、かすかな希望をもう一度同じ言葉で綴っているということ。

それはつまり、ポルノからの「デビューして20年経ったけど、あの頃と同じ気持ちで歌い続けてるんだ」というメッセージだ。


ポルノのデビューは、1999年。
「アポロ」で鮮烈なデビューを飾り、「サウダージ」「アゲハ蝶」などのヒット曲を連発していたころ。


君だけのための歌は今
CDショップに並んでる
ひとり部屋で書いた
白い紙に書いた
言葉が街に舞い散る
気づいてくれるといいな
- TVスター(2002年)


相変わらずギターを離さずにいるんだよ
それは夢を描くペンでもあったんだし
前からそうだし

壊すべきこの世の中と
それとなくうまくやれてる
気まぐれなヒットチャートよ
ご機嫌いかがですか?
汚れた手でギターを触ってはいないかな
僕の声は君にどんな風に聞こえてる?
響けばいいけど
- ダイアリー00/8/26(2000年)


ポルノグラフィティを仕事として僕が生きていけるのは、まだ夢を見ていられるからだとも思う。
ときどきは目が覚めそうなときもあるけどね。そういうときはぎゅっと頑なに目をつぶって、見ていた夢をたどり直すんだ。
諦めて目を開け、冴えた頭でお金の勘定などし出したら二度とは戻れないからね。
- 自宅にて(2005年)


夢だったメジャーデビュー、ミリオンセラーを達成しながらも、葛藤や迷いの中で音楽を続けていたことが伝わる言葉たち。


そしてポルノは、そのころと同じ想いを、デビュー20年経った今でも綴る。


宛名さえ書かずに差し出した手紙みたい
僕らの歌は今どこに響いているんだろう
街の波に時の波に紛れ 消えたかな?
風に舞った花びらのよう 君の肩に止まれ

夢の中いるには目を閉じてなきゃ
薄めで周りを見たくもなるが
そのために瞑りなおした
覚めた頭じゃここにいれない

ギターはその夢を描くペンで
汚れた手で触れてないかと
今問いかけたらギターはどんな顔をするかな?
「一雫」


また、2002年のTVスターでは「気づいてくれるといいな」と願うだけだったが、今回の一雫では「君の肩に止まれ」という言葉に変わっていた。


わたしはこの曲、一雫を初めて聞いたとき、一切の言葉を失った。わたしはポルノのことを、何にもわかっていなかったのだと思った。

ずっとずっと好きだったのに、「変わってしまった」なんて自分勝手なことを言って。
ポルノがいなければ越えられない夜や迎えられない朝は、今まで幾度となくあった。これからも、わたしを支えてくれる存在に違いないのに。

わたしの好きなポルノグラフィティは、ポルノグラフィティのまま、変わらず歌い続けてくれていた。どうしてそんな簡単なことにも気づけなかったのだろう。

今頃になって、やっと届いた。やっと受け止められた。ポルノが、ずっと届けようとしてくれていたから。昭仁さんと晴一さんの一雫、わたしはやっと、受け止められたよ。




晴一さんはいまだに「音楽で食べていけると思ったことがない」と言い、ボーカルの昭仁さんもおそらくその想いを共有している。
50枚のシングルをリリースし、ミリオンセラーを記録、東京ドーム公演まで成功させたのに、だ。

それは決して嫌味でも謙遜でもなく、ポルノの本心なのだと思う。


拙い言葉でもチープな音符でも
乾いた雑巾を絞った一雫
湧き立つ泉のような場所 僕にあったなら
綺麗な水で君のこと潤せるのにね
「一雫」


とあるように、ポルノは自分のことを、特別な存在だとは思っていない。

もしかしたらここまで読んで、ポルノは弱気だ、とか、アーティストがファンにこんな本音を吐くものではない、と思う人もいるかもしれない。

けれどわたしはそんなふうに、自分たちの不安ごと体当たりでファンにぶつかってくれる、ポルノグラフィティが大好きなんだ。



「地元の因島を出たころ、夢に見た景色がいま目の前にある」


晴一さんはライブのMC中、観客席を見渡して、よくこの言葉を口にする。

ファンひとりひとりが、ポルノの夢だと言ってくれる。

そんなふうに思ってくれるのなら、わたしはずっとポルノの夢で居続けるよ。ポルノは何度もわたしを助けて、幸せにしてくれた。
だから今度はわたしも、ポルノを幸せにしたい。


そしていつか、ポルノの音楽が止む瞬間を、必ず見届けるから。

最後のライブの最後の曲は、デビュー曲のアポロがいいな。しっとり終わるのなんて、ポルノには似合わない。最後の最後まで、馬鹿騒ぎして終わろうよ。



・・・少し話がそれてしまったけれど。

移ろいゆくこの世の中で、変わらないものがあるということを、音楽で、その身をもって証明してくれて本当にありがとう。

わたしは、ポルノグラフィティが大好きです。







世界はそれを愛と呼ぶんだぜ