アメリカでカメラと記憶を失くした話
失くしたと気づいた時に、あーもう戻って来ないだろうなと思いながらも2%くらいは戻ってくるかなという淡い期待もあった。
サンフランシスコの最終日に愛用しているCanonの一眼レフを街のどこかに置いてきてしまったようだ。
かばんや手荷物をいっさいがっさいひっくり返して探したけどカメラが見当たらない!と気づいたのは深夜3時頃。
盗まれたのかもしれない。とにかく失くしてしまった。アメリカで。
どれだけ記憶をたどっても分からない。日が昇ってからなんとなくあの場所かもしれないというところには電話してみたり、行って聞き込みをしたりしたけど見つからなかった。
まあたしかにCanonの一眼レフを拾ったら宝くじに当たったくらい嬉しいのかも。笑 高く売れるし。
海外でよく失くし物をする私だけど、これだけ大物を失くすとは流石にあほすぎる。
カメラで捉えられるものは、データとしての記録であり、それらはいつかこぼれ落ちていく記憶でもある。だからわたしにとっては、今回の旅のこれまでの記憶が、一部だけど消えてしまったように思えて、ちょっと落ち込んだ。
データではなく、このカメラ機材本体との思い出もただならぬものがある。
大学一年生の時にカメラを買ってもらった
母に一眼レフを買ってもらった。プロが使うモデルとかではないけど、ビギナーのわたしには勿体無いくらいの代物だった。
母がカメラを買ってくれたとき、旅ばかりして動き回っているわたしに、
「このカメラで世界を見てきて。このカメラはお母さんの目でもあるから。ステキな写真をたくさん撮って、世界の景色をお母さんに見せてね。それがお母さんの楽しみなの。」
と言ってくれた。盛ってるんじゃないかというくらい、いい話すぎるけど、私の母は本当にいい母なのだ。
以来、カメラと一緒に世界を旅してきたし、わたしが見てきたもの、そのときの香り、音、光、色、味すらも切り取ってきたカメラだった。
写真展をやろうと思った大学2年生の夏
補助金が出る学園祭でなにかしら展示したいなあと思って、せっかくカメラを持ってるし、故郷の伊豆大島の写真展をやろうと思った。
カメラが好きな友達が集って伊豆大島写真展を開催した。もちろん私たちは写真専攻でもないので、手探りの状態で展示会に臨んだ。
メンバーみんなでワイワイ撮影合宿に伊豆大島へ行ったり、
色んなハプニングもありつつ展示会準備をしたり〜〜。
初めて、大人の手を借りずに展示会を作った。
いまではすごくいい思い出。まあだからクオリティどうこうではなくて、プロセス込みで勉強になる展示になったなあと。
学園祭の展示会に名刺を持ったオトナが現れた
女子大の、学園祭の、写真展に、突然名刺を持ったオトナが現れたのは学園祭最終日。
某広告代理店のひとたちで、伊豆大島の特設サイトを作っているから、写真を貸して欲しいとのこと。
実はこの写真展の告知だけは一丁前に伊豆大島の関連方面からも出して貰ってたから、それを見て足を運んでくれたらしい。
当時大学2年生のわたしは割と冷静で、写真提供でお金貰えるのかなとか笑、学生だからってなめられてるのかとか笑、クレジットは?とか色々と高飛車に笑、突然現れたオトナに警戒心があったけど、素直に嬉しかった。
わたしたちが撮ってきた写真が、わたしの故郷が、もっとたくさんの人に見てもらえる機会ができるなんて、なんかよく分からないけどきっとこの出会いはラッキーだなと直感で思った。
(しかも、こんなこともあろうかと名刺もメンバー全員分作ってた。)
そんな偶然の出会いから生まれた伊豆大島の特設WEBサイトはこちら。
カメラが引き合わせてくれた出会い、その後
写真を提供していただいたお礼にご飯でも、みたいな感じになって、クラフトビールのお洒落なお店でご馳走になった。
ご飯の終盤に、ちなみにインターンとかって出来たりしないですか?と思い切って聞いてみた。広告業界は大学入学したころから気になっていたから。
そこから会社としてはほぼ受け入れたことのないインターンに入れていただいただけることに。本当にワガママな学生のきもちを汲み取ってくださり、会社を説得してくださったみたいで……感謝しかないです。
翌年の春にインターンでデザイン業務をして、たくさんの掛け替えのない経験と出会いをいただいた。
インターンを卒業したあとも、私たちのいろいろな展示会に足を運んでくださったり、ご飯にちょくちょくご一緒させていただいたり。
約2年後、結論から言うと、わたしはその広告会社に内定をいただき、既に貰ってた3つの内定を断って、今春から働くことになった。
もともと新卒を採用してなくて、外資なのでバイリンガル求ム!みたいな感じなのに。有難い限り。
これも失くしたカメラが繋いでくれたご縁。
伊豆大島写真展 vol.2
色んな学びもあって、伊豆大島写真展は翌年も開催した。初回の写真展を見て、ぜひ入りたいと志願してきてくれた後輩ちゃんたちも一緒に新しいメンバー編成。
スポンサーをつけたり、体験型の写真展としてステップアップさせたものになった。
もちろん色んなハプニングがあったけど、楽しかったなあ。。。 忘れられない展示会になった。
レポート記事 → 伊豆大島写真展 vol.2
初めて写真を褒めてくれたテリーさん
わたしはちょっとだけカメラの勉強をしたけどアマチュアだし。
尊敬してやまないイラストレーターのテリーさんに初めて褒めてもらった。
今にも走り出しそうなクルマを描いてるテリーさんが、わたしのインスタグラムでアップする写真に対して、この写真いい構図だね!この写真は色のバランスがいいね!ストーリーが見える写真だね!とコメントをくれるのがとっても嬉しいことで。
そんなテリーさんがわたしの旅先で見てきた風景写真を、さらに魅力を倍増させるイラストにしてくださった。とても嬉しくてちょっと涙が出そうなくらい。
去年の5月に長野県松本市の松本市美術館にて、展示もしていただきました。
いま、第2弾で松本民芸家具に行ったときの写真も描いてもらってます。楽しみ。
わたしのカメラの、今の持ち主さんへ
盗まれたのか、転売されたのか、わからないけれど、わたしの手元から離れていった思い出の詰まったカメラ。
わたしがカメラを失くしたと気づいた時に、走馬灯のようにこんなストーリーがよみがえってきた。
世界のどこかで誰かが、わたしのカメラで素敵な写真を撮って、クリエイティブな何かを生み出して、誰かをハッピーにしてくれることを願うばかりです。
Thank you for supporting me!