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彼と出会ったのは桜が舞う あの交差点だった【短編小説】

わたしには大切な人がいた。

高校生の時から付き合っていて、
今年で10年になる。

彼は10年浮気もせずに
一途で尽くしてくれて彼みたいな人は稀なんだと友達の恋愛相談を聞いて思っていた。

わたしは彼の愛が不思議だった。

10年付き合っているのに、付き合って1年目の気持ちらしい。

もう10年も付き合っているのに、わたしにヤキモチを妬かせようとしたり、わたしの気を引こうとすらする

どうしてそんなに好きなの?

心が惹かれるんだ。

純粋な顔でわたしのこと大好きだよっと言われた。

彼はすごく大切にしてくれた。ある時、どこで大切にする方法を覚えたの?

素朴な疑問が湧き、聞いてみた。母親からそういう風に育てられたようには見えなかった。

わたしは初めての恋愛で大切にする方法を知らなかったから、始めのうちは色々傷つけてしまっていた。

聞いてみたら、彼が子供の時から飼っている芝犬からだった。

彼はペットから自然に、愛することの意味を学んだのだろう。

元から愛すること。人を大切にすることには秀でていたのかも知れない。

彼の愛は母親の愛のようだった。とっても広くて、いつも暖かい心で包んでくれた。

わたしが悩んで泣いている日々には、

わたしは出来る子だよ。大丈夫だよ。

ーだめなわたしにとって彼は良いお母さんだったんだー

たまたま見た育児本に同じ言葉が書かれていた。

彼は自然にそれができていた。彼はすごかった。

ある日些細なことで彼と喧嘩をした。そのまま喧嘩の勢いで別れ話になった。

わたしは初めて孤独を知った。

包んでくれる彼は居なくなった。


忘れたくないような忘れたいようなそんな気持ちで他の人と恋愛をしてみた。


当然彼しか知らない私は上手く恋愛なんて出来なかったけど、

彼を越える素敵な人は現れなかった。

他の人と恋愛してみて、彼がいかに素敵な人だか、知った。

彼は優しくどんなときも優しい愛でそっと包みこんでくれていたんだ。

そんな事を考えているある日、あの桜が舞う交差点で偶然彼とすれ違った。

彼も私に気づいてくれた。

嬉しくて人目も気にせず泣きじゃくる私に、彼は困りながら、

こう言った。

少し大人っぽく綺麗になったね。

うわーん。

子供みたいに泣く私に、彼はおでこに軽くキスをした。

それが今も隣で笑っている大切な旦那さん。ユウジ。

一生懸命、お時間をかけて(一記事2時間とかざら)誠意を持って執筆しております。良かったな。って思っていただけたらよろしくお願いします。めっちゃ励みになります☺️