後ろの方で膝抱え 【ワンライ】【散文】

 時間が空いた。君は知らないんだろうけど、僕はきっと存在しない方がいい。それをどう伝えたらいいのかわからない。
 産まれてこなきゃよかったのに。そんな声が聞こえる。それは本物かもしれないし、偽物かもしれない、自分の本来の声なのかもしれない。驚くほど低い声。恨みや呪いが込められているのかもしれない。だが、自分が本音を話すときの声に似ている気がする。
 死んでしまえば楽になれる。そう言って誰かが笑う。この時間が嫌いだ。この時間、自分は声に殺されるのではないかと思う。溢れるほどの恐怖を君は知らないまま僕の前を進む。
 この時間が本物かどうかもわからない。本当に僕は生きているのか、もしかしたら霊になってこの世を彷徨っているだけかもしれない。それを肯定してくれる人なんて誰もいなかった。証明してくれる人なんていなかった。もしかしたらこの感情も嘘かもしれない。全てが現実味がない。
 思うように動かない体が忌まわしかった。君は何も知らない顔で僕を見る。まるで僕を健常者と思うようだ。君の言葉、心、優しさ全てが嘘かもしれない。救われたい僕の幻かもしれない。

 何かを大切に思う気持ちを無くしたのはいつだっただろう。自分を大切にできなくなったのはいつからだろう。増える傷を見るたびに生きていると感じる。ごめん、嘘。自分を満足させるだけ。いわゆる自慰行為だ。巷では文字が一つ変わるらしい。そういうところで世間から外されたと感じる。ただでさえ世間から外されているというのに。
 
 幻視はいつも楽しそうだ。昔はただ立っているだけだったのに。こちらに向かって手を振る。僕はいつも手を振りかえしたい衝動に駆られる。きっと周りには見えていないものだ。手を振り返せばただでさえかけ離れた世界から余計に離されてしまう。彼女か彼かはわからない。ただ自分へ微笑みかけるようなあなたへ。
 まだあなたを実体として認識するのに否定的な僕を許してくれないか。返事はない。今は視えない。今日はいないらしい。もしも本当にいるのであればこの存在感の薄い僕に手を振ってくれるのであれば、きっと僕らいい友達になれると思うんだ。どうだい。なってみる気は……無いか。いつも張っている線をあなたに向かって引いた。

 たまの苦しさで目が覚める。過去に触られて嫌だった部分をなぞる手が、僕には腕が三本以上ついているらしい。それはどうなのだろう。不便だ。あなたに起こされる朝の目覚めは最悪。嫌な気分のまま1日を終える。それが窮屈に感じる。あなたはいつも嫌なことを思い出させる。

 時折考える。あなたたちのいない人生を。幸せかもしれないし不幸かもしれない。あなたたちがいたから理解できた感情があった。人と一線を引く理由ができた。これは弱者の自己擁護に値する。

 半自叙伝になるシリアスも、綺麗になれない自分も、素直になれない僕も、全て、全て、全て。あなたたちのせいにしてしまえば幸せでしょう。君も、君も、そう言ってよ。
 君は幸せな子だと。君に出会えて幸せだと。話して。もっと言って。
 聞こえていないか。聞こえていないよな。こんな小さな声なんて。掠れた声なんて。

 僕はきっとただ運が悪くて生き延びてしまっただけらしい。生き延びた先で君に出会えた。だから、君も運が悪いんだ。
 二万文字ぴったりの遺書は誰にも読まれない。僕の過去も、描いた未来も、やりたかった今を。何度も何度もやり直した死を。好みの死に方じゃないと言い訳ばかりを重ねて、その気持ちだけで失敗してきた。どんどん弱くなって抵抗がなくなる僕を笑う声が大きくなるんだ。
 一つだけ、君に読んでほしい。僕の人生を、歩んできた道のりを。読んでほしい。読んでくれたらそれだけで死んだときより幸せになれるから。

何度でも。繰り返す死ぬ間際の幸福を。繰り返す目が覚めた気分の悪さを。繰り返せ、繰り返せ、繰り返せ、何度でも、何度でも、何度でも、自分で未遂を、いつかこの思いが本当になった時に、耐えられなくなった時に、確実に殺すために。確実に、もう失敗はしない。

 一つの後悔。僕を生かしている理由。それは君の。
「死んで、消えて、いなくなって、一生姿を現さないで、価値がない。」
 それらの言葉がないからだ。それさえあれば僕は、僕は、きっと後ぐされなくいなくなれる気がする。頼むから、その言葉だけ、ほしい。心から欲してしまっている。
 心にしまったままの思い出ばかりが邪魔をする。どこかで悲しんでくれると勝手に感じている。寂しがってくれると、勝手に、身勝手に。感じている。本当に僕らしくない。君に人生を狂わされてしまうなんて。正気じゃない。君が僕を救ったと聞けばきっと変な反応をすると思う。僕の人生にいられたことを喜んでくれるだろうか。どうだろう。それをみるのが今の僕の楽しみだ。

 はい。終わりです。1時間経ちました。楽しかった。久々のワンライ。今見返したら本当に腕が落ちたなと思います。本気を出せば1時間で2000文字書けることがわかりましたね。前はもっとっけたはずなんだけどな。おかしい。次は解説を書きます。と言いつつも何も考えずに書いたので書くことは少ないように思う。
 noteを始めた理由の中に自分の作品の批評をしたいというか、なんというか考えをまとめたい気持ちがあります。
 たまに考えるのですよ。ここってどう思ってこう書いたのかなとか色々。

 俺は基本的にここはこういう解釈なのかな〜など楽しんでいただけたらとても嬉しいのです。
へえ、こういう解釈もあるのか。面白い。と思ってみたいのですが、自分で自分の作品もやってみたい感情が抑えきれなかった。
また今度。

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