マガジンのカバー画像

なつくまエッセイ【ゼンマイじかけのシンビジューム】

74
こちらはエッセイのコーナー。シンビジュームは可憐なのに、よくみると毒々しいランの一種です。
運営しているクリエイター

2019年3月の記事一覧

おばあちゃんと文通をしていた

ひとり暮らしをし始めたころ、祖母と文通をしていた。それまで祖母は、息子家族と二世帯住宅に住んでいた。しかし息子家族が違う場所に引っ越すこととなったので、祖母はマンションの一室でひとり暮らしを始めた。そんな頃だった。 ある日、祖母は「ひとり暮らしは寂しくないですか」と手紙に綴ってきた。仕事帰りに真っ暗な部屋に帰る寂しさに押しつぶされそうだった私は、その手紙を読み涙した。でもそれを悟られたら、祖母がもしかしたら私の親に伝えてしまうかもしれない。そうしたら戻ってこいと言われるかも

チラリズムな約束

ぼくはこどもにうそはつきたくないので、できない嘘はいいません。 といった園長がいた。 でも例外はある。クリスマスだ。それ以外は、魔法でお菓子が出てきたよ、などと口がさけても言わない。信用できる大人に見えた。 寝かしつけられるのが嫌いだった。 やさしい声でトントンしながら歌ってくれるのに、ふと気づくとお母さんはいない。それなら最初からトントンしないで欲しかった。夢なんてみせてくれなくても良かった。 それと似た感情を、久しぶりに抱いた。 詳細は伏せるけれど、ワクワクさせておい

きみたちの道程

つつじの葉の茂る道を歩いた。なんてことのない、まっすぐな道を進み、もと来た道を戻っていく。行きは、小さくてふかふかの手を握り、時にキスをしながら歩く。帰りはつかむものがいなくなった手を、袖に隠しながら歩いた。 幼稚園のバス停までの送りの時間。いつもの光景だ。 これが最後である、いがいは。 正直、驚いている。 こんなに幼稚園バス停に向かうつつじの道が、いとおしくなるなんて考えもしなかった。もっともっとふわふわの手を握りながら歩きたかった自分に気づき、とても困惑し、どうし

たぶん、私は相当つかれている。

非常につかれた。 何に疲れたのかわからないので、よけいに心と身体が分離しそうになる。 だからとても書きたい。 書いて書いて、書いて、泣きたい。 言葉が溢れてくるのに、なにを抑制しているんだって。 でも出てくる言葉が気持ち悪くって きれいごとばかりでうんざりする。 きれいな言葉は、積みあがらない。つるつるしてて落ちていく。 ゴツゴツした言葉は、刺さるから。いろいろなところで生き続けるのだ。 なんてまたきれいごとを書いて、心の中でうんざりしている。 そういう時