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読書記録#5 「CX戦略」を読んでEX(従業員体験)について考える

最近、Employee experienceについて興味を持っている。Employee experienceは、従業員エクスペリエンスとか、従業員体験と訳されたり、EXと省略されたり、従業員経験価値と言われることもある。ここではEXを使うことにする。

このEXとは何かというと、組織や企業において従業員と企業の接点で発生するすべてのことを指している。従業員目線で言えば、仕事をするオフィスも、毎日使うPCも、上司との会話も、人事評価も、年末調整のプロセスも、すべてEXに関係する。このEXは、カスタマーエクスペリエンス(CX)の考え方を基にしており、企業が顧客を大切に扱うように、従業員も顧客のように扱おうという意味合いで使われている。

EXについて理解を深めたいと思っても、まだまだ書籍や記事の数は多くはない。一方、CXについては文献も多く、プラクティスも溜まっている。そちらを勉強することでEXを考えるヒントになるかも?と思って手にした本が「CX戦略 顧客の心とつながる経験価値経営」である。

CXの定義をEXで考える

この本はNRIのコンサルタントの方が執筆しており、CXをわかりやすく構造的に整理していた。

CXとは、「商品やサ ービスを購入する過程、利用する過程、その後のサポ ートの過程における経験的な価値(心理的・感情的な価値)」である。

そしてCXがなぜ注目されるようになったかというと、商品やサービスがコモディティ化し、そこにどれだけ心理的・感情的な価値を上乗せできるかで顧客の受け取り価値が変わり、それが競争優位を生み出すようになってきたからだ。

これはまさにそのままEXに当てはまる。職場や企業がコモディティ化したとまでは言わないが、転職も盛んになり、個人が企業を自由に選べるようになってきた。そうすると、仕事内容や給与といったことだけでなく、そこでどんな経験ができるか、キャリア形成の意味での経験だけではなく、どんな時間を過ごせるのか、どんな楽しいことがあるのか、を含めて経験の質・量を検討し判断するようになってきている。まさに

EXとは「仕事をする過程、職場にいる過程、それに関して会社からのサポートの過程における経験的な価値(心理的・感情的な価値)」と言うことができる。

なるほど、これはCXの定義を応用できたし、CXの考え方もEXに応用できそうである。

心理的・感情的な価値のタイプ5つ

CXを構成する心理的・感情的な価値を5つのタイプに分けている。(厳密にはこの著者が作成したのではなく、他の書籍に使われているものを引用している)

それぞれ、CXにおける意味を出しているので、それに合わせてEXにおける例も同時に考えてみることにする。

Sense(感覚的)

説明:視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚といった知覚(五感)を刺激する経験

意味:美しい外観、心地よい音楽、など

→→EXでは:オフィスの内装、コーポレートカラー、などが当てはまる。清潔な空間、といったことも当てはまるかもしれない。

Feel(情緒的)

説明:顧客の内面の感覚や感情に訴求する経験

意味:かっこいい、かわいい、安心、信頼、感動、熱狂、魅力的、 など

→→EXでは:ミッションやビジョンへの共感、福利厚生等による安心感、魅力的な企業ブランド、ストレスのない人事手続き、などが当てはまる。

Think(知的)

説明:顧客の創造性や知的欲求に訴求する経験

意味:興味深い、刺激になる、面白い、自分を高められる、など

→→EXでは:能力が高まる、成長につながる、同僚から刺激をもらえる、などだろうか。

Act(行動、ライフスタイル)

説明:行動やライフスタイルに訴求する経験

意味:今までしたことがない生活や体験ができる、こんな自分になりたいという自己実現が叶う など

→→EXでは:育児・介護と仕事の両立、ロールモデルに近づく働き方、などが当てはまる。

Relate(社会性)

説明:特定の集団や文化に属しているという感覚を訴求する価値

意味:メンバーに属していることの誇りや特別感など

→→EXでは:イベントでの一体感、ノベルティの使用、同僚との相互承認、などだろうか。

この本を読んで、ぜひEXに携わる人、つまりHRの方々はCXを学んで見て欲しいと思った。顧客に対する考え方、CXを上げるための方法も載っており、そのままEXに応用できるポイントばかりだった。

EXは発展途上であり、これから発展してくる

これだけ顧客への向き合い方については世の中が進んできているのに、従業員への向き合い方はまだまだ発展途中である。やはり、従業員というものの扱い方として根底にあるのは、顧客としてではなく管理するリソースとして、という点がまだまだ強いからかもしれない。高度成長期に代表されるように、ビジネスの勝ち筋がわかりやすく決まっていて、従業員も新卒採用✖︎男性で構成されている時代だったら、その人的資源の管理をしていれば企業は発展したかもしれない。でも今はそうではない。好調だったビジネスモデルもどんな新しい技術の波に負けてしまうかわからない。価値観も多様になり一律の勝ち筋ではない。働く人も多様化して働く価値観も驚く程バラバラである。

そういった時代になっていることを踏まえると、これからもっとEX、従業員体験といったものが注目されてくるように思う。そのためにCXを学ぶというのは、必要なアプローチだと感じた。

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