読書感想文『ストーンサークルの殺人』

M・W・クレイヴン『ストーンサークルの殺人』

海外の小説を読んだのは久しぶりでした。
昨年夏頃に、ポーの『黒猫』と『モルグ街の殺人』を読んで以来で、2022年に読んだ小説はそれ以外全部日本の作家だったはず。

なので現代の海外作家の本を読むのは本当に久しぶりでした。

読んで感じたのは、やっぱりニュアンスを正確に感じ取るのが難しいということ。

ん?この表現どういうこと?と思って、その先を少し読んで「あ、これ嫌味だったのか」と気づいたり。
文化とか習慣がわかっているかどうかで読みやすさが全然違いますね。
日本の小説の方がもちろん読みやすいけど、異国の文化を知れるという意味で、海外小説は面白いと思いました。

なんとなくだけど、Netflixとかでやってる、アメリカの刑事ドラマに似てる空気。頭の中ではあの感じで再生されました。
ただこの小説はイギリスが舞台なので、アメリカと似てるなんて言ったら怒られるかもしれない。笑

理解できなかった表現として、たとえば、文中に「目をぐるりとまわす」という表現が3回くらい出てきます。

目をぐるりとまわす…??カメレオンみたいに?それどういう感情???
なんとなく前後の流れで「何言ってんだか」「あーあ」みたいな感じかなあと思いつつ、気になるので調べました。
どうやら英語では rolling eyes というジェスチャーらしいです。(知恵袋で聞いてる人がいた、みんなやはり困惑しているのですね)
翻訳の世界でもよく問題になる表現だとか。
あきれたり、とぼけたりするときのジェスチャーらしいです。ぐるぐるまわすというよりは、左から右に虹を描くように目の玉を移動させる感じのようです。
参考:
海外小説でよく呆れたときなどに「目をぐるりとまわした」という表現がありますが

本当に外国人は普段の生活でもそんなことをするのでしょうか? #知恵袋_ https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1433583479?fr=ios_other
海外小説で見かけるしぐさ
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/4082901.html

面白いです。
いつか原文で読めるように英語勉強したいな〜、ついでにその国の文化も勉強して世界観を漏れなく感じたいなと思いました。

さて内容についてですが、かなり面白かったです。
事件自体はかなり残忍で、動機となる背景も目を背けたくなる重さです。でもこういうことって本当にあったんだろうなぁと思うと気が滅入りました。
事件は複雑で、紙に書いて整理したくなります。探偵ではなく警察(しかも現代の)がメインなので、目に見える物的証拠だけではなく、科学捜査やプログラムを使った数学的分析も行います。
この数学的分析で才能を発揮するのが、主要登場人物のティリー・ブラッドショーで、彼女が本当に良いキャラしてるんです。
世間知らずだけど、16歳でオックスフォード大学の学位を取った天才。「データは嘘をつかない」。
主人公のワシントン・ポーとのコンビが微笑ましくて応援したくなります。
ティリーはピュアだけど、ポーは正義感が強い一方で暗い部分があるんですよね。対照的だけど、似ている部分もあって相性が良い。
個人的には、フリン警部もあわせた3人のやりとりもかなり好きです。1人冷静な人がいる感じ。割を食う役、ツッコミ役みたいな。

ミステリーの本筋について、私は72%の時点で犯人に気づきました。(Kindleで読んでいるので、全体の%が表示される)
これは別に全然速くないです、犯人がポーによって明かされるほんの少し前。
ヒントはたくさん散りばめられてます。
ネタバレは避けますが、犯人に気づいた時はイヤ〜〜ッと叫びたくなりましたね。

殺人事件の犯人探しと並行して、ポーの闇についてもだんだんあきらかになります。

ポーの強い正義感、ポーにとっての「悪人」に対する厳しい制裁、彼が言うところの「自己破壊的な行動」は、「いいぞ〜」と応援する気持ちもありつつ、軽い不安を覚えました。
端的に言えば、「彼は正義感から人を殺してしまうんじゃないか」という不安ですね。
こういう彼の性質についても、本の最後の方で触れられてます。

3部作の残り2作で彼が人を殺さないといいな、と心から願います。

蛇足ですが、ひとつ引っかかったことがあります。
ポーは序盤の、この騒動に巻き込まれるしばらく前、悪夢を見る夜が続いていました。引っ越してようやく眠れるようになったと。
で、今回もこんなことがあったから悪夢にうなされるだろうと思ったのに、ぐっすり眠れた という描写が2日分ほどあったんです。

なぜ悪夢にうなされなかったのか?たんに疲れていたから?
私は、彼が「悪人の成敗」に前進していく過程が心地よかったんじゃないかと思うのです。彼にとっては、殺人が悪、犯人が必ずしも悪なのではなく、本当の悪人がいて、そいつを成敗することが目的な気がするんですよね。
なので、本質に近づく過程は喜びに近い感情だったんじゃないかと。いくら身近で凶悪犯罪が起こっていても。
だから悪夢を見ずぐっすり眠れたのかな、と考えたりしました。
分からないですけどね。本当のところは。

いつも「今回の感想文は短めにしよう」と思うんですが、全然短くならない。。

つぎは、ワシントン・ポー3部作の2作目、ブラックサマーの殺人を読もうかと思います。
ストーンサークルの殺人のその後が少しでも描写されてるといいな。


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