花時雨ゆら

花時雨ゆら

最近の記事

2023/11

おのおのが音色抱えてかたつむり ひとつの歌をくちずさんでた 片っぽがぶら下がってる靴下も音楽性ですれ違うのね はなびらをそっと開いていくようにひらがなうたいだす春が来た バス 本日の疲れぎっしりつめこんで見世物みたいにひた走るバス バス停は毎月一日真夜中に集うその足ゆるめて踊る 休日もまた走るバス スカートに負けたクッションふわふわになる 昼間だけ休憩できる席たちの眠りを起こす元気ばあちゃん 乗り込めば走りだすバス 映り込む顔がふやける「まだ泣かないよ」 ねんどではな

    • 2023/10

      はじまりを教えてくれるコピー機も詰まってしまって遠回りする しくしくと出る穴のない涙らはひざにかかとにこだまして秋 おまえの場所はないってくらい抱き枕敷き詰めて寝る ねじれたらもう直らない壊すまであの親子丼ばかり食べよう ほんとうにそれっていいの、目も声もピアスの色もあのときのまま 夜歩きに肉じゃがの匂い止まなくてひとりのヒールをかつかつ鳴らす 元彼の彩度調節間違えて眩しい朝を迎えちゃってさ 凸凹をなくそうとして流す血の生臭いこと忘れたいこと さみしさに慣れた

      • 2023/7-9 3年生の夏

        朝顔の中の右手がむずがって汗をかく時確かに七月 暗闇は苦手 あなたが目を閉じて開けに来るまで浮かんでいるだけ 部屋干しを下から覗いてスカートが少ないことを回答にする 石を踏み瘡蓋だらけの足裏で羽を広げた天使に挑む 言い淀む数だけあった正解を探す道のり 無色の小雨 少しでも穴が空いたら補修して僕らやってきたのにそれじゃ 似てほしいとこだけ似ない私たち 指の長さがめちゃくちゃになる 牛乳に浸して食べる穀物もまたシリアスと間違えていく 繋いでる糸を新たに拵えた数だけ

        • 水族館

          パソコンが息苦しくて乗り過ごす名城線から転び出せ海 平日の朝日?さわやかやわらかで攻撃力を失ってても? 昏い海、スーツの人は近づくな呑み込まれるって警告看板 にこやかなお姉さんから買いました今にこちらにとびかかるシャチ ペンギンは輝く場所が決められてそこで飛ぶのを余儀なくされる 私にも飛べるだろうか足元のリュックサックに隠すパソコン ペンギンも逃げたいかもな晒されてずっと明るい場所にいるから 水槽は綺麗 明解国語辞典「動物園」の類項目です この町もきっと大きな

          2023/5-6

          あの風にあなたはいるの 実際はもういないかな春は終わるし カーテンを開けば周りのアパートも朝を始める用意をしてる いつまでも縋っていたい春のこと毛布がふんわり暖かいこと 厚くした皮膚撫でてきて薄くしてもっと綺麗って手の持ち主が 紡がれた誤字を許せる技術だけあります君の指先の罪 『 誤字 』 あのころが眠る小さな森の中覗き見る度かたくなになる 『 森 』 片方の眼球君にあげるからお願い見せてよ一人の顔とか 諦めて口を噤んだ死体から出てきた無数の金平糖には 八割が

          2023/4

          大学生と社会人 学生の風味がちょっと含まれた弁当今日は桜が咲いたよ 忘れてるひとつの口で食べること食べきれん時残っちゃうこと なにみてもいっしょがいいなと思っててそれが私を証明してる 有効期限令和5年3月末 また離れていく所属欄 おやすみはさよならの合図 明日会うあなたわたしにすきというかな 水筒の蓋を回した増えすぎた苦みすべてをそこに隠して 麦茶から初恋のあじ そうだった あの体育祭のあの人の顔 ひとり寝の少し冷たい布団でも指の先からharuka nakamura

          2022/11-12

          余裕とか無いよ無理だよそんなでもアンパンマンは顔をあげてる 君が好きこの音楽が本が好き セーブできたら変わらず生きれる 納豆のたれが指に染みつくよりももっと強く染みつく呪い アパートの隙間風だけ友達だ冬だ故郷の母は元気か 先生になっていく君いつまでもただのひとりのズボラな人だ(う) 日常に引き伸ばされた私よりその日の点を選べいいから あの人は変な人だと頷いてその目が自分に向くのに気づかず 色がない暇だけ部屋にあふれてる早く終わって会いたい師走 言わない方がい

          2022/9-10

          鍵穴がガチャリ合鍵飲み込んで許可を出す間に駆けつけ勝負 いつもより化粧水を多く塗る 明日は特別な日と信じる いいお茶に合わせるお菓子もあるのに人呼ばないから胃袋に消す 「月見てよ」「こっちは曇り」「そりゃ残念」 (今年はだめか)言葉をしまう 今日からは糸がほどける心配をしなくていいの そう赤色の お揃いで指輪をつける薬指 これからずっと手を繋ぐこと 自意識が伸び縮みして暗転す街灯色がカーテンに透け 会いたいと約束した顔忘れてく あのころみんな制服着てたし な

          2022/7-8

          もしかして時計の針が私だけ2倍速なの 時間足りない もしかしてじゃがいも家にあったかな 玉ねぎないのに買い忘れている 「この前の」声をかけたら笑ったあなたは私を覚えてない もっている腕の本数間違えるあれもこれもとどれもはんぱで ねむいからあなたの腕をひっぱって 今日は私の夢においでよ 勝負事嫌いと言ったその口は人と比べてばかり血だらけ

          2022/4-6

          あたたかで湿ったまくら抱きしめて元気平気よって笑うよ 三年はやく動き出した鼓動が酒ではやくて歳の差を知る 知らぬ間に体に生まれた傷跡に持ち主よりも先に気づくな(う) 午前だけ見てないだけでも変わってるほらね口から知らないあなた 幸せをちいさな白が歌ってる耳をすませて花束の隅(う) 後ろ側向けてるベルから出る音を今日は壁しか聞いてくれない 袋の切れ目に「ここから破綻」 気付かぬふりで別の場所から切る あちこちに涙をばらまき眠るから朝にはまわりに多量のお塩 水色

          2022/2

          この夜も今をだいじにできなくてあたたかい腕離す夢見る 君がいた春夏秋冬そのままでゼロになってる彩度のつまみ(う) 歪でも大切だったかたよりを傷つけ均す大きなトンボ(う) 憧れの広く開いたキャンパスで僕らは光を集めたかった あたたかで湿ったまくら抱きしめて元気平気よって笑うよ

          2022/1

          慣れっこの二言三言のお小言と荷物を積み込み 自宅に帰る (う) 少年に湯冷めするよと咎めても月の影に歩いてく今夜(う) 寂しいとどうにか口に出せたなら音はあなたのやさしい茶色 ぼくたちはいっさつの本 寝るまえに今日のしおりをさしこんでおく(う) これまでにあまりにたくさん息をして欠片こぼれてできたのわたし(う) 一枚ずつはがして食べるミルフィーユ よそゆき顔の皮が厚い(う) 俺の庭そう自負できた細道の すっくと立った知らぬ草花(う)

          2021/12

          ほろほろと星屑落ちた夜明けには となりの赤い目元を拭う  そんなものないと知ってる腕の中 在るとうたって 高らかに歌  今日もまた心を縛って前を向け いつかほどけるときを願って うたの日  いつもよりきれいな文字ねふうとう あなたのにおいかすかにかすかに うたの日 鉛筆をすり減らして下書き 消されて意味だけ残る あ、消しカス 厳かに聖歌を歌え 極東の僕ら静かな聖夜を知らず うたの日 氷点下 ストーブすらないワンルーム 今日はコンロ、お前が暖炉 うたの日 ぼくたち