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2023/11

おのおのが音色抱えてかたつむり ひとつの歌をくちずさんでた

片っぽがぶら下がってる靴下も音楽性ですれ違うのね

はなびらをそっと開いていくようにひらがなうたいだす春が来た

バス
本日の疲れぎっしりつめこんで見世物みたいにひた走るバス
バス停は毎月一日真夜中に集うその足ゆるめて踊る
休日もまた走るバス スカートに負けたクッションふわふわになる
昼間だけ休憩できる席たちの眠りを起こす元気ばあちゃん
乗り込めば走りだすバス 映り込む顔がふやける「まだ泣かないよ」

ねんどではない 無理やりにはめこまれ窮屈そうにパズルのピース

雨音を混ぜ行くタイヤ冷たくて隣に誰もいなくて寒い

とがる冬
図書館の空にチラシが舞うようにもっと足たちつるしてあげる
水道の温度の色が変わりゆく うまく黄色のときに洗えよ
ももいろだ(きょうはむらさき)(かくしてる?)ふりむく顔に花咲くマスク
不器用に尖ってしまう爪先でボールペンの先丸くしている
人生の切り売り 傷は金色で悲しいキットカットは甘い
過去として君を呼ばない 閉ざされた砂場の端に浸む雪だるま

まるまるまる
あまりものには福って言われたらちぢこまる部屋の端でカーテン
手足まで涙がたまるつめたさはゆたんぽとしてうでにおさまる
振り向けば風が始まる 欠けてった記憶は星になるから光る
つとまるの なみだふくんだきみのそでやさしくまくるおしごとだけど
うまくやるうまくやるからまるからまるからまるからおねがい

ホール
脳内に砂嵐降る 小さなことでもうけとめたかった
臨時記号の雨 ドア重たすぎて FLY ME TO THE MOON
舞台では上手と下手に御座します反響版に足向けて寝る
飛べるって信じるだけじゃダメだったダウングリスのバラバラ頭
笑いながらべそをかくひとしかいない楽団 とびらしめる
あさがおを椅子にぶつけた回数の角が生えてるばけものになる
ひとりでもくちずさんだら何度でもアンコールする終わらない夜

暖冷ハウス
好きだからLINE語越しの表情は眉間のしわが一本多い
シャンプーは10倍の君 ボトルと毛布を抱えて眠れ
ゆっくりと出し入れをする 暖かく嘘つきである君たちの肺
タンスには君の姿がぎっしりで私は床に散らばっている
眠りなさい 夢の中ではヒーローになる焼き芋味の豆乳
赤色がレースに透ける わかってる ここにいるのは間違っている

夜を食む 抱き合うからだは溶けなくて心の形がぐずぐすになる



uで終わる癖がすごいつよくてびっくりした。
連作をこんなに作ったのははじめてでした。

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