売れない作家がただ悩む話3
ゴツゴツと角張った手に体を締め付けられ、抵抗も出来ず私はその場に立ち尽くしていた。段々と手の数は増え、私の秘部に向かってくる。
その平は優しく撫でる様に触れてくるが、ノコギリのような粗さを持っている。
「汚い…痛い気持ち悪い」
手が伸び首を締める。声も出せない。視界が黒く沈んで行く最中私は考えた。
「皆死んでしまえ…」
携帯の着信音で私を目覚めた。
見ると昼の12時を回っておりバイト先の店長からの連絡である。
私は画面をスライドさせて携帯を耳に当てた。
「はいもしもし平井です」
「おお平井ちゃん眠そうな声ね、もしかして起きたばっかり?」
「うーんそうです、ちょっと頭痛くて二度寝しちゃいました」
嘘をついた。あの後早朝4時までトリックの検証に時間を使ってしまい、気付いたら机の上で寝ていた。
「あ、そう…先週も言ってたけど…まあ治ったら連絡しろよ」
ピコンと音が鳴り一方的に会話を切られた。
「んだこいつ?たかがコンビニ店員のおっさんのクセに偉そうだな」
しかし、これで昨日の続きをすることが出来る。これにはハッピーである。
心が浮つき携帯を投げ置くと、手の平が青く染まり虫の様にウジャウジャと沸き立っていた。
「ッチまた」そう言いながら私は手のひらをズボンに擦りつける。
しかし強く擦っても取れない。洗面所に駆け込み石鹸を付け熱湯を出す。
「汚い汚い汚い消えろ消えろ消えろ」
青色の菌は薄まるだけで取れない。
そこで私は近くのスポンジを取り、溶剤を染み込ませ削るように手を擦った。すると一時間ほどで強い痛みと共に真っ白の皮膚が現れた。
前の会社を辞めてから人の手の平に菌が見えるようになってしまった。
社会との繋がりが切れ頻度は減ったものの、最近では自分の手が汚れて見えてしまう。
私は机の上のノートを広げ、PC上に考えをまとめていく。そのプロットに沿って取り敢えず打ち込み、どんどん書き足していく。
没頭は全ての事を忘れさせてくれた。
文字の中で私は姿を変え、何とか息が出来ていた。
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