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南インドに惹かれて

「今年の誕生日はインドで迎えたいな」
なぜかそんな思いがふと、スパイスのように香ってくる。

前回インドに行ったのはかれこれ6年前だ。
高校生の頃から憧れていたタージ・マハルを見に行きたい!と友達を誘って、バックパックで出かけて行ったことを覚えている。
しかし、南インドは訪れたことがなかった。

世界でも7番目の国土面積を誇るインドは、実に日本国土の8.7倍あるらしい。
広いな。見たことのないインドの土地はどんな香りがするんだろう。
ただ興味が沸々と湧きだしていた。

誕生日の前日のフライト、1日かけてスリランカ経由でインド最南端の空港トリヴァンドラムに降り立った。

「来るかもしれないな。ここから気を引き締めないと。」

インドでは洗礼のような、空港から出た瞬間にギョロギョロとした目が迫ってくる何十人もの客引きの群衆が、モワッと肌にまとわりついてくる空気と共に過去の記憶から蘇ってくる。

よし、とまだ背負い慣れないバックパックの紐を締め直して外に出ると、
青い空、
熱い風にそよぐ椰子の木
…あれ?なんだか静かだ。
誰1人も客引きが寄ってこない。あたりを見渡しても見当たらない。
南インドはそんな文化が根付いていないのかな?という程すかされてしまったよう。あたりにはチラホラとタクシー運転手がいるくらい。
なんだ構えてしまっていたよ、と拍子抜けしたまま促されたチケットタクシーに乗り込む。

まだまだ気が抜けない中でたどり着いた宿。
誰もいなかったが、大きな声で呼んでみたら宿主らしいおじさんが出てきてくれた。「予約した者なんですが…」と話すと、
「え!今日は予約なんて入ってないよ。多分フェイクのサイトから予約したんじゃないか?」と、初日からここはやっぱりインドだった…。

油断していた…と落胆している私をみて、
「まあ、部屋空いてるから用意するよ。安心しなさい。」
と言われ、長旅の休息が取れることに安心感を覚えた。

その後は今日誕生日であることを宿主にやわらかく主張(笑)してみると、
「何が食べたいんだ」と言われ「うーん、カレー?」と答えると、
「任せておけ」と一言。
その後、初めて南インドに来たなら食べておきなさい、
と言われて連れていかれたのは入り口がわかりづらい南インド料理レストラン。
全くわからないマレヤーラム語で注文された料理は、
キングフィッシュを使った、フィッシュカレー。
身は大ぶりで、真っ赤なソースにどっぷり晒されている。
なんだかカレーは食欲をそそる香りがする。

一口食べてみると、美味しい…!

そして間髪入れずに、辛い!とても辛い!
辛いものが苦手ではないけど、
食べすすめていくにつれて、辛さで味がわからなくなってくる…。(笑)

付け合わせに頼んだライスはランチだと食べ放題だったので、
一口のカレーに対して、多めのライスを頬張っていく。
「もっと食べなさい」
と勧められたが、オーナーも箸が進んでいない。
なんだやっぱり辛いんじゃないか!(笑)と、面白くなりながらも
穏やかなランチが最後には耐久レースのようになっていたのは間違いない。

私の初めての南インド料理はとてもスパイシーな記憶として刻まれ、
食後の甘い甘いアイスクリームがとても美味しく感じたのであった。


宿に帰ってきて、ベタベタになった体をバケツと手桶で水を浴びると
なんとも言えない気だるさに包まれ、自然とベッドに倒れ込む。

「こんな誕生日も悪くないな…」


南インドの温度に包まれて、
スパイシーで、あたたかい気分で幕を開けた私のインド旅であった。

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