「音楽で飯を食う」ことを諦めきれない人間が取るべき手段

「音楽で飯を食う」

これは学生時代バンドに打ち込んできた人間ならば誰もが一度は考えることです。現実性は別として。

大きすぎるリスクや不安、親の反対、満足に築けなかった地位など、いろいろな要因により「人生のプランB」を選択するのです。

筆者の半生

私もプランBに進んだ数多の人間のうちの一人です。
中学3年生でギターと出会い、高校1年生でバンドを始め、そのまま大学に進んでもバンドを続け、ツアーを回っていたらいつの間にか大学5年生になっておりました。親には頭が上がりません。
数年前にどうにかこうにか企業に就職することができ、現在は俗にいう社会人の一人として生活しています。

仕事が手についてきたらバンドでもするか…と思っていたら例のウイルスが流行してしまい、社会人になってからの数年間はバンドとは縁遠い生活をしてきました。

使えるお金にもそこそこ余裕が出てきたのですが、バンドができねえなら家で音楽するしかねえ!と思いDTMの知識や知恵や機材やプラグインを必死こいて集めていた頃、ありがたいことにHaze of the Bullet Blossomから依頼をいただいてPreservedを手掛けることになりました。

といったように、私の人生は今のところ「音楽の夢を諦めたが趣味で音楽を続けているサラリーマン」です。

Preservedを機に音楽(というかバンド)に再度意識が向き始め、結局音楽で飯を食うというのはどういうことなんだろうと考え直したり実際に音楽で飯を食っていそうな人たちの様子を観察したりしましたので、自分なりの結論を綴ります。

音楽で飯を食う手段

「音楽とそれに関わるモノやサービスの提供だけで得られた収入で生計を立てる」ことが可能な人間のことを、音楽で飯を食っている人間だとしましょう。

1 : パフォーマーになる

「音楽で飯を食う」と言って最初に思いつく方法だと思います。
バンドマンや楽団などのステージに上がる演奏者、スタジオだけの演奏者、歌手、アイドル、など、自分が音を生み出して提供し、その対価を収入として得る方法です。
わかってるし、それができるなら苦労しねえよ!という感想しかない。

2 : 作詞や作曲をする

楽曲提供、なんて夢のある言葉をたまに聞きますが、そういうことです。
作詞や作曲をした場合、楽曲の著作権が自分に帰属します(たぶん)ので、そういった権利関係のお金が入ってきます。このへんは全然詳しくないので違ったらすみません。でも確かカラオケで歌った場合は作詞作曲の人にお金が入ります…よね?
そういう収入です。

それとは別に、もう一つ方法があります。
それは、「BGM制作」です。ゲームのBGM、ドラマのBGM(こっちは劇伴と言われる)などを作ります。作曲者として会社に所属し、その会社で手掛ける作品の音楽的な部分に関わることでお金を稼ぎます。
これも音楽で飯を食うと言えます。「音楽の夢を諦めたが趣味で音楽を続けているサラリーマン」はこういう人の可能性もあります。

3 : エンジニアになる

ライブハウスのPA、スタジオでレコーディングやミキシングをしているエンジニアのことです。私のように、趣味とはいえお小遣いを得ているような「エンジニアもどき」も当てはまるでしょう。(当然私は周りの大人に迷惑をかけたり法的に問題があったりすることは一切していません)

エンジニアリング(スタジオでやる一般的な仕事)を教わることができる専門学校が存在していますし、スタジオも求人を出しています。
求人には応募条件として「Pro Toolsが使えること」というものが挙げられているのを結構な割合で見ますので、ガチでスタジオでミュージシャンのサポートをしたいと考えている方はPro Toolsを使える方が絶対にいいです。
スタジオで必須だからというより、打ち込みをせずミックス専門で音楽をするためのDAWは今でもPro Toolsが最強だと思います。

4 : プロデューサー、ディレクターになる

比較的メディアの露出が増えてきて、存在を認知されやすくなってきた職業だと思います。
…が、これで金を稼いでる人はこれ以外の方法でも金を稼げる人だけのようなので、取るべき手段とは言えないでしょう。
別の方法で金を稼ぎながら音楽的素養や経験をしっかり積んだ人がやることだと思います。

5 : その他の職種としてレコード会社などで働く

例えばマネージャー、プロモーター(アーティストのプロモーションを練る人)、A&R(よくわからんけど、企画の最上流みたいな人)、BtoBの営業、などなど、音楽業界の職種は多岐にわたります。

これも、結局サラリーマンとして働いていることに変わりはありませんが、音楽で飯を食っていると言えるでしょう。新人教育がされているのかされていないのかわかりませんが、クリエイティブな仕事は即戦力として使える人材を求めているように思いますので、適性があればすぐにでもこの道に進むことができるでしょう。
適性がない人は…?ということを考える前に、自分はどの道に適性があるのかを見極めましょう。進める道はたくさんありますし、求められている人間も多種多様です。

6 : 企画屋になる

固有名詞を出すのは微妙かもしれませんが、クリエイティブマンプロダクションみたいな会社のことです。これをプロモーターという場合もあります。
つまり、ライブイベントやウェブサイトなどの運営をし、アーティストとファンが交流できる場を提供する仕事をするということです。
フェスや大御所の来日公演を企画しているようなデカい企業から、小さめのライブハウスでブッキングスタッフとして働いている人まで、規模もいろいろです。

7 : メーカーに就職

アメリカ、ドイツはもちろん、日本にも素晴らしいオーディオ機器開発メーカーがあります。SONYのヘッドホン、RolandやKORGのシンセサイザー、Audio-Technicaのマイクロホン、YAMAHAのスピーカー、Accuphaseのピュアオーディオシステムなど、国内外問わず標準機器として君臨している機種を開発しているメーカーが多数存在します。YAMAHA、河合楽器、星野楽器などの楽器メーカーもそうです。

これらのメーカーに就職すれば、肩書きは「メーカーの社員」ですが、「音楽で飯を食っている」ことになりませんか?なりませんか…?
世間的、社会的な障壁をクリアしながらも音楽で飯を食う手段としてこういう選択もありだと思いますがどうでしょう?

8 : その他

これら以外にも、

  • タワレコや楽器屋など、音楽グッズを売っているお店のスタッフ

  • 音楽雑誌の編集者

  • 楽器演奏やDTMなどの講師

  • YouTuber

  • 設備音響の設計者

  • こういうブログを書く

などなど、思いつく範囲でもこのくらいあります。もっとあると思います。

結論

結論として、私は「音楽で飯を食う手段」で挙げた1 - 8のうち1つもしくは2つ以上の手段で金を稼ぎ、生計を立てています。

「音楽で飯を食う」という目的を達成することは、そんなに難しくないのです。
難しくない…というか、才能で決まる世界ではありません。確かに手段1のパフォーマーとして成功する人が一握りであることは間違いないでしょう。

しかし、その一握りのパフォーマーを支える2から8の仕事は、基本的には才能で成功するような業界ではありません。「日本らしい雇用」が続く限り、努力だけで続けることができるものもあります。
そういった手段を選択すれば、音楽で飯を食うことを諦めきれなくても目的を達成することができるのです。


パフォーマーの夢を諦めて別の手段を選んだ人間にとって、支える対象のパフォーマーは「自分の代わりに夢を叶えてくれるかもしれない人間」なのです。

私はパフォーマーとして飯を食うことは諦めましたが、それでも音楽で飯を食うことが諦めきれませんでした。
だから、自分の代わりに夢を叶えてくれるかもしれない人のためにできることは何かと考えた結果、今やっている仕事を選択することにしました。
もちろんミックスやマスタリングも、音楽を世に出したい人のために自分ができることの一つです。


目的を達成するための手段は柔軟に選択しましょう。


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