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プロ野球のような状況での強豪の作り方 スクラップ&ビルドのススメ

簡単にいうと、複数の若手選手を育てて20代半ばのプライムタイムを利用することである。

MLBでは主流のやり方で、サラリーキャップがある中で限られた資金でやりくりする中、いかにして安く戦力を整えるかを試行錯誤していった結果、マイアミ・マーリンズのようなスクラップ&ビルドを繰り返したメチャクチャをやっているチームが二度もタイトル獲得して直後にチーム解体、またはオークランド・アスレチックスのようにマネーボール(統計やデータ)でコスパのいい選手を見極めるあたりを参考にしたものである。

まず、プロ野球(Jリーグでも可)のような状況では、大前提として上位のリーグがあるから、一流スターはいつかそこに抜かれていくのを念頭にチーム作りをする必要がある。となると、一流選手をどこまで揃えられるかは運の要素が大きくなる。国内の移籍市場だと野球のMLBやサッカーの欧州リーグが欲しがる一流選手じゃなく、それ以下の選手になるのだから。

故に、上位リーグが存在する状況で、巨人やソフトバンクのようなFAで強奪するような補強は「100点満点を狙う」のではなく「常に70点くらいを維持する」行為であるから、「常に上位は狙えるが、同時に他チームが弱い時にしか優勝できない」というデメリットも発生する。

30を超えて競争力を維持できる選手は稀なので、FAを引き留めての複数年契約での契約延長は危険である。特に、目の衰えがくる野手と球の衰えがくる本格派は注意が必要である。加え、大金を使ってるので獲得後はある程度はスタメンを与えないといけないので、その分、若手へのポジション、経験の場が奪われるともいえ、ゆえに、この年齢層への契約は本当にリスクがつきまとう。

また、このような状況下において、論理的帰結として、「基盤となるチームの屋台骨を支える選手達」ってのは一流半〜二流のチームプレイヤーで構成される。

例えば、サンフレッチェで言うところの森崎兄弟や佐藤寿人のような、カープでいうところのタナキクマルのような海外のチームから狙われるわけでもなく、サンフレ以外のチームではスタメンが確約されるレベルではないチームの体現者。または中村憲剛や青山敏弘のような他のチームも欲しがるけど、怪我やプレースタイル、チーム状況等でチームに残らざるを得なくなった一流選手。

そういったアンセルフィッシュな選手をベースに肉付けをできるチームが一時的に強豪となる。三連覇したカープや現在のヤクルトのように。そのヤクルトも村上宗隆がメジャーに抜かれたら、かつての日本ハムや現在のオリックスのように弱体化は確実なので、その際は雌伏の時を迎えることになる。

そして、肉付けとは「若手の育成と発掘」である。

国内で移籍する選手は基本的に20代後半のFAか戦力外の選手であるから、そのような選手を獲得しても劇的な戦力補強になるとは言えない。故に、そのような補強に頼ってるチームは論理的帰結として確固とした強豪になりきれないのである。巨人や浦和レッズのように、強いんだか弱いんだかわからない中途半端な戦力を維持したエリートだと自認しているチームに成り下がるのである。

逆に、近年、圧倒的な強さを見せたチームの特徴は育成した大スターの20代半ばであるプライムタイムが重なった結果である。ヤクルトの山田哲人村上宗隆、オリックスの吉田正尚山本由伸、カープの鈴木誠也タナキクマル、日本ハムのダルビッシュ有と大谷翔平、楽天の田中将大らが躍動して勝ち取ったタイトルである。

つまり、こういったメジャー級のスター選手を獲得するのはプロ野球の球団にはほぼ不可能なので、発掘するか育てるしかないのが現状だ。となれば、育てている期間は弱体化するので、その期間を我慢できるかどうかがカギとなる。そして、その英断に踏み切り、耐え切ったチームは、スター選手が移籍するまでの間の数年の黄金期を堪能することができる。

耐えきれなかったチームの代表例が三連覇後の広島カープであろう。丸の流出を機に弱体化の兆しが見えていたはずなのに、中途半端に戦力を維持し、中途半端な順位に甘んじる数年を送ることとなる。

中村奨成というパワーと肩と足のある選手に足りないのは、経験と技術と精神だけである。後から加えられるもの以外は全て揃っている選手である。ならば、体の出来上がった2年目以降スタメン四番に固定すれば、ひょっとすると、となる。しかも、捕手はサインの関係上移籍がしづらい(MLBは特に)ので、先行投資という面では悪くない案件であったが、現状は腐った素材と化している。

野間という選手も育て方がおかしいと思う選手である。足の異常に速い選手は使い方次第である。赤星、西川のように一番固定して指令を「出塁する」の一点に絞ればいいのである。野球IQが低いなら、上げることを考えずに、特徴を使い潰すことを考えるべきである。アホは賢くならないからアホなのである。

主力が抜けつつあるオリックスや近い将来高齢化と流出で弱体化するであろうヤクルトはどのような方針のもと運営をするのであろうか。勝利の味を覚え、中途半端に戦力を維持するだけの経営的な体力があるのかないのか。そこの見極めを誤ると三連覇後のカープのように微妙な立ち位置に甘んじることとなる。

とはいえ、もっとはるかに悲惨なチームはある。中日という…

上位リーグのいるチーム状況で、他チームから金銭的な競争で勝てないチームは運営に工夫をすべきである。少なくとも工夫をするという発想は持つべきである。でないと、お金は使ったが微妙に勝てないチームが出来上がる。

理想的なチーム運営の代表例を最後に二例紹介する。

一に、日本ハムファイターズ。北海道という娯楽の少ない地でかつ新球場効果でこれから数年はどんなに弱くても集客が見込める状況下で、思い切って高齢化しかつ高給取りになった主力を放出し、若手育成に切り替えている。しかも、監督は若手をノビノビさせるに相応しい新庄剛志という客寄せパンダ。どんだけ若手がミスしても、注目は監督と球場に集まる構図を作り上げている。さらに、非情さのイメージは球団経営陣に集中し、監督すらも守られている状況。ダルビッシュ有や大谷翔平のようなメジャー級の選手を育てて売る、できれば売るまでの数年で優勝争いという明確なビジョンが見えてくる。素晴らしい経営陣である。

二に、ダニー・エインジ。NBA、ボストンセルティックスのGMだった人で、現在はユタジャズの球団社長。この人のベテラン放出とドラフト指名権収集は非情を通り越して、作業的ですらある。ボストンのGM就任と同時にうだつの上がらないオールスターを放出、わざとドラフト上位指名を狙うべく弱体化させ、ドラフト上位指名を逃すと主力数人を残してレイアレンとケビンガーネットを獲得し、その年のNBAチャンピオンとなる。そして、恐ろしいのがそのチャンピオンだった選手が高齢化すると、オーナー交代したばかりのスターを欲しがってるネッツに放出しドラフト指名券と交換。これが現在の主力に化け、ボストンの現状がある。アイザイアトーマスの放出劇も酷く、契約延長のタイミングで深刻なケガを隠した状態でトレード。現在のユタでは就任一年で主力二人を約10の一巡目指名権と交換し弱体化すると思いきや、チームの基盤を形成しつつある現状である。

以上、二例、サイコパスもここまでくると爽快ですらあり、ふと思ったのがこのようなチーム運営など、まともな感性の人間のすることではないなということであろうか。

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