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読書日記・入院編。『猫のお告げは樹の下で』青山美智子著

3カ月程前に手術のための入院が決まり、「さて、本を準備しないと」と真っ先に思った。

術後すぐの体調不良の時はさておき、一日一冊以上は読む事を想定し、入院日数×1.5くらいの本を持って行こうと決めた。できれば、軽い文庫本で。

選定条件は「さくさく読める軽さ」と、「陰惨でも陰湿でもない健全さ」と、「できれば温もりと優しさに溢れて前向きになれる」内容。あらすじと読者評を参考に買い集めた30冊ほどの中から、半分を入院のお供にした。

入院初日に読んだのが、「初めまして」の青山美智子さんの作品。決して新人というわけではなく、中堅の作家さんなのに、これまでご縁がなかった。本屋大賞に何度もノミネートされているという情報が購入の決め手である。

読み始めて、ぽかぽかとした小春日和の陽射しのような文章のトーンにほっこり。激しく感情を揺さぶられることはなく、読み進めるうちに、ゆるゆると柔らかく心がほぐれていく感じ。大好きなミュージシャン、藤井風さんの歌詞の根底に流れているものに通じるところがある。

実在するかしないか曖昧な猫が登場するけれど、ファンタジーではない。そして、単なる短編集ではなく、連作短編集。一匹の猫を接点に同じ時間軸で生きる人たちのオムニバスである(こういう表現で合ってるのかな?)。

登場人物たちが抱える悩みは、ごくありふれた日常的なものなのだけれど、だからこそ共感できる。どの主人公も、彼らを取り巻く人たちも、誰も傷つけないし、誰も取り残さない(あれ、どこかで聞いたフレーズw)。

もちろん、拒絶や批判や衝突がないわけではない。でも、どの主人公も不可解だった猫のお告げが最後にはすとんと腑に落ち、納得して、自分が見出した自分のやり方で新しい一歩を踏み出して行く。

読みやすい。わかりやすい。共感しやすい。さすが書店員さんが推す作家さん。今回は4冊買ったので、他も楽しみー。

うちの屋号は『ねこのて』。みくじでも出してみよっかなー、なんてね。


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