ねこのて

ライター。東京生活30余年を経て、2011年春、故郷・青森にUターン。雪深い津軽平野の…

ねこのて

ライター。東京生活30余年を経て、2011年春、故郷・青森にUターン。雪深い津軽平野の真ん中で、広い空と遠くの山々を眺めながら暮らしています。2020年春、『ねこのて』という小さなサロン&ショップを始めました。 https://aomori-jiyujikan.com

最近の記事

読書日記・入院(期間)編。『希望のステージ』南杏子著

入院最終日に読んだのがこちら。我ながらベストチョイスだったかと。 ステージに立つ。ステージを観る。どちらも特別なこと。期待と緊張で身が引き締まる。高揚感に後押しされて100%以上の力が発揮できる。待ち遠しくて、胸が高鳴る。ときめいて、はしゃいで、束の間の夢を見る。 自分には無縁と思っていた “推し活” 。藤井風という天才ミュージシャンに出会って、まんまと沼に落ちてしまったわたくしw。彼のデビューアルバムを聴いて以来、「音楽はこれほどまでに人を救ってくれるものなのか」と痛感

    • 読書日記・入院(期間)編。『ブラックウェルに憧れて』南杏子著

      わたしにとって “安定” の南杏子作品。 同性かつ同年代の南さんが描く女性医師には共感できる部分が多いし、何より読みやすい文章が好き。「平易な言葉で、わかりやすく伝える事」が記事の基本だと、ライターになりたての頃、尊敬する編集者から諭された。 医学部同期の女性4人と、彼女たちの指導担当教授の、5人の医師が登場し、“(働く)女性ならでは” の障壁や苦悩が、“医師” という少し特異な職業と相まって、5人それぞれにリアルに(と思う)描かれている。 医師の働き方にもさまざまな選

      • 読書日記・入院(期間)編。『近いはずの人』小野寺史宜著

        Netflixの『初恋』鑑賞から手に取った『タクジョ!』で知った作家さん。今までの読んだ作品はどれも好きだった。どちらかといえば優柔不断に思える主人公であっても嫌いになれないキャラで。 が、今回は、読み始めから読み終わるまで、終始もやもや。読み終わっての感想が「で?」w。まさにタイトル通り。夫婦って何? 結婚って何? わたしは、登場人物の誰にも共感できず、感情移入もできない。でも、文章は好ましいし、主人公の苦悩はわかる。(こちらを読む前に手に取った作品は、文章が苦痛で途中

        • 読書日記。入院(期間)編『イダジョ研修医編』史夏ゆみ著

          女子医大生が主人公のシリーズ第2弾を早速読了。 主人公と有能なエリート青年医師との恋愛は、レディスコミック的な展開で、何だかふわふわしているけれど、ロマンスは大事w。 女性医師の出産のタイミングというのは(いや、医師に限らず懸命に働くすべての女性にとって)、かなり悩ましいらしい。主人公はその辺りの計算と実行力に長けている。この作品は何もかもがスピーディに展開し、本人の葛藤などもあっという間にクリアして結果が出るから爽快である。 それにしても主人公はモテモテだ。しかも、好

        読書日記・入院(期間)編。『希望のステージ』南杏子著

          読書日記・入院(期間)編。『イダジョ』史夏ゆみ著

          『〇〇ジョ』というタイトルの、若い女性が主人公の作品が乱立するようになったのはいつから? とりあえず、ずっしり重くない “医療物” を求めて、初めましての作家さんの作品を手に取った。結果、スピーディかつ無理のない展開で飽きさせず、さくさく読めるエンターテイメント作品で、満足。著者は脚本家でもあるそうなので、連続ドラマがすぐに作れそうな構成だった。 医大生といっても、始めは18歳の若者たち。青春群像劇でもあるわけで、恋愛あり、葛藤あり、挫折ありなんだけれど、シビアな状況でも

          読書日記・入院(期間)編。『イダジョ』史夏ゆみ著

          読書日記・入院(期間)編。『やめるな 外科医』中山祐次郎著

          老母を見送るまでの数年間、医療や介護の現場の理不尽さや人間味の薄さに絶望する場面が多々あった。折れまくる心、それでも頼らざるを得ない不甲斐なさ、母への申し訳なさ…暗澹たる思いで過ごす日々。 果たして医療従事者の方々はどんな思いで働いているのか。自分の親や家族にもああした態度で接するのか。その本音が少しでも知りたくて、現役医師が書く医師や看護師目線の “医療物” を探して読み始めた。 中山さんの “外科医シリーズ” もその時出会った本で、シリーズ3冊は読了済み。「外科医にな

          読書日記・入院(期間)編。『やめるな 外科医』中山祐次郎著

          読書日記・入院編。『木曜日にはココアを』青山美智子著

          昔から “お店もの” の小説は多い。 喫茶店、食堂、(古)書店…。そこにミステリアスだったり、切れ者だったり、癒し系だったりする店主がいて、超常現象的な何かを起こしたり、客の問題を探偵さながらに解決したり、人情で温かな結末に導いたり…。 多くの人は、 “拠り所” を求める気持ちを心の隅に持っていると思う。何かあった時、心がざわつく時、自分にご褒美をあげたい時…などに、「これを食べる」「ここに行く」「これをする」「この人に会う」と、「ほっとする」「リセットされる」「元気にな

          読書日記・入院編。『木曜日にはココアを』青山美智子著

          読書日記・入院編。『海が見える家 それから』はらだみずき著

          田舎で育った人なら共感してもらえると思うのだけれど、近所づきあいの距離感が都会とは全く違う。わが実家は、田舎と言っても新興住宅地だったのでさほど町内が密接ではなかったものの、人口2万程度の小さな町では知らない人も知ってる人レベルに距離が近い気がする。 思春期以降のわたしは、周囲の人みんなが自分を知っていて、いつも見られていて、何かしら干渉される気がして、窮屈だった。息苦しかった。自分らしくいられなかった(子どもの頃から母に「自意識過剰なのよ。自分が思うほど他人はあなたを気に

          読書日記・入院編。『海が見える家 それから』はらだみずき著

          読書日記・入院編。『海が見える家』はらだみずき著

          初版からずいぶん時間が経ち、シリーズ化されているくらい人気の小説だけれど、わたしが手に取ったのはこのタイミング。決め手はタイトル。20代の頃からの夢が「海が見える家で暮らすこと」だったからw。 子どもって、自分の父親や母親について知らないことが多い。わたしの場合で言えば、若いうちはそもそも興味がない(ごめんなさい)。わが家の親子関係は良好だったし、時々喧嘩くらいはしても、不仲ではない。それでも、自分の人生が動き出してしまうと、そのことに必死で余裕がない。親元を離れて暮らして

          読書日記・入院編。『海が見える家』はらだみずき著

          読書日記・入院編。『猫のお告げは樹の下で』青山美智子著

          3カ月程前に手術のための入院が決まり、「さて、本を準備しないと」と真っ先に思った。 術後すぐの体調不良の時はさておき、一日一冊以上は読む事を想定し、入院日数×1.5くらいの本を持って行こうと決めた。できれば、軽い文庫本で。 選定条件は「さくさく読める軽さ」と、「陰惨でも陰湿でもない健全さ」と、「できれば温もりと優しさに溢れて前向きになれる」内容。あらすじと読者評を参考に買い集めた30冊ほどの中から、半分を入院のお供にした。 入院初日に読んだのが、「初めまして」の青山美智

          読書日記・入院編。『猫のお告げは樹の下で』青山美智子著

          読書日記。入院して読書三昧して来ました♪

          ちょっと入院していました。 10日位の入院予定だったので、体調がいい日だけ読むことを想定して選んだのがトップ画像の15冊。 「難解ではない」「陰惨ではない」「さくさく読める」「前向きになれそう」と目星をつけて、初めましての作家さんの本も選んでみた。 世間の評価や話題にまったく乗れないタイプの人間なので、出版からずいぶん時間が経っている本がほとんどで、今更感満載w。 結果、術後に体調がすぐれない日が多く、さらに読み始めてもすぐ置いてしまった本もあり(すみません)、読了で

          読書日記。入院して読書三昧して来ました♪

          読書日記。『サイレント・ブレス』。

          昨日、定期検査の待合室のお供に持参した『サイレント・ブレス 看取りのカルテ』読了。「病院で読むのはどうなの?」というタイトルだけど、まぁ気づく人はいないでしょ。 作者の南杏子さんは大学卒業後、出版社勤務を経て、再び医学部に入り直して医師になった方。そして小説家でもある。 高齢の母の治療について色々悩んでいた頃、何か縋るものが欲しくて、現役の医師が書いた、医師が主人公の小説を立て続けに読んだ。そのうちの一人が南さん。同性で年齢も近いため、描かれる親との関係性や、その死との向

          読書日記。『サイレント・ブレス』。

          ラジオから流れて来た3曲が最高♪『NORMAL』『AWAKE』『月の光』

          経験しないとわからないこともある。 という “当たり前” の壁にぶち当たった。この歳で。 いや、この歳だから。 失ったものが大き過ぎてスカスカになった心を 何とか塞ごうと、足掻いても、もがいても、 ブラックホールが全て飲み込んで、虚無に戻る。 出口がない。光が見えない。行く当てがない。 だから、本を読む。 だから、音楽を聴く。 道を照らしてくれるもの。 すがって信じて支えにできるもの。 いま、J-WAVEからこの3曲が流れて来た。 『NORMAL』hocus p

          ラジオから流れて来た3曲が最高♪『NORMAL』『AWAKE』『月の光』

          読書日記。『幼なじみ お江戸縁切り帖』

          夜中に目が覚めた。「もう眠れないだろう」と覚悟を決めて、ベッドサイドに置いてあった本を手に取り、読了。 泉ゆたか著『幼なじみ お江戸縁切り帖』。 おどろおどろしい内容になりそうなテーマなのに、文庫の表紙のイラストがやけに可愛いと思ったら、やはり爽やか系。因縁、執念、怨念的なものはなくて、さらっと軽い。 終盤に出て来たこの台詞が好き。 「寂しい時に結ぶ縁ってのは、必ずろくなものにならないって決まりさ。(中略)お互いをうまく先へ運ぶ縁ってのは、日々の暮らしに満ち足りている

          読書日記。『幼なじみ お江戸縁切り帖』

          ただの日記。ケチな葛藤の特効薬は藤井風。

          まだ夜が明けきらぬ北の大地よ、おはよう。花冷え。今朝も寒いけど、日中は晴れるみたい。そろそろ衣替え。 揺らぐ心と体。どちらも無理が出来なくなってしまった。新しい生活サイクルにぼちぼち体を慣らして行こう。 「捨てる」と「手放す」では、単なる言葉のニュアンスの差ではなくて、心にのしかかる罪悪感の重さが違う。 30年以上暮らした東京を離れる際、多くの物を捨て、手放した。帰郷後は、実家の断捨離を延々と続けている。 自分の東京の家もそうだったけれど、長く住むほど物がたまる。しま

          ただの日記。ケチな葛藤の特効薬は藤井風。

          ただの日記。QOLの正しい保ち方。

          温めたミルクにラムを垂らして、ほっとひと息。 自分がそうして欲しいと思うようなやり方で、 自分も相手に接してあげられたらいいのに。 悲しんだり、嘆いたりせずに、 ありのままをまっすぐ受け止めればよかった。 諦めたり、目を背けたりせずに、 言うべきことは言って守ってあげればよかった。 老いも、病も、 自分のことならすんなり受け入れられるのに、 どうして父や母にそれができなかったんだろう。 いまもなお、後悔が胸を締めつける。 あの時ああしていれば、もっと早くこうしていれば

          ただの日記。QOLの正しい保ち方。