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読書日記・入院(期間)編。『ブラックウェルに憧れて』南杏子著

わたしにとって “安定” の南杏子作品。

同性かつ同年代の南さんが描く女性医師には共感できる部分が多いし、何より読みやすい文章が好き。「平易な言葉で、わかりやすく伝える事」が記事の基本だと、ライターになりたての頃、尊敬する編集者から諭された。

医学部同期の女性4人と、彼女たちの指導担当教授の、5人の医師が登場し、“(働く)女性ならでは” の障壁や苦悩が、“医師” という少し特異な職業と相まって、5人それぞれにリアルに(と思う)描かれている。

医師の働き方にもさまざまな選択肢があり、彼女たちは自分のライフスタイルに合わせて選んだはずなのに、「こんなはずではなかった」という諦めにも似た葛藤や迷いがあったりもする。

医師の友人(女性)がちらりと漏らした、ある本音を思い出し、「なるほど、こういうことなのね」と納得した。

医療現場のみならず、一般企業でも、料理の世界でも、色々な職種で、“女のくせに” とか、“女だから” と言われることがまだまだ多いのだなぁ。(看護師の世界だと男性が珍しがられるという逆パターンもあるけど。)

この作品中、最も重い十字架を背負わされた女性の長い長い苦悩と懺悔の時間に胸が痛む。不退転の覚悟を胸に秘め、踏み留まり、開かずの扉を押し続けた人。LGBTQって何?の世界。

お医者さんは、一般人からすれば、とびきり優秀で安定した職業のように思えるけれど、彼や彼女たちだって同じ人間だもの、苦労も悩みもある。誰だって、生きて行くのは大変だよね。

5人の医師の医療への関わり方はそれぞれ違う。医師を目指した頃に思い描いた姿とは違うかも知れない。でも、必要な仕事で、大事な仕事、だ。

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