山本英介

長野県下伊那郡根羽村在住、根羽村森林組合所属。自然について、書くことについて、学んでい…

山本英介

長野県下伊那郡根羽村在住、根羽村森林組合所属。自然について、書くことについて、学んでいます。長野県林業士/森林インストラクター/自然再生士

最近の記事

山仕事のための読書ノート⑥こどもの時間

  冬の朝の時間  根羽村に来て三度目の冬を迎えている。 一月下旬、小雪がちらつくが雲間に青空ものぞく今日の朝の気温はマイナス10度。冷たい。今住んでいる老平の山小屋は、見晴らしがいいぶん谷から吹き上げる風が強い。家の窓から見える目の前の林はうっすらと雪化粧した鈍い深緑をさわさわとゆらめかせている。ときおり太陽の光が差し込み、木々の陰影が深まっては、また薄らぐ。淡い雲の影がゆっくり動いていく。杉・桧・赤松のごくありふれた人工林だが、刻々と変化する様子をぼーっと眺めているのは

    • 山仕事のための読書ノート⑤       風と土のフォレスター               「キッズフォレスター構想」覚え書き

       20年後、総務省の推計によると、根羽村の人口はこのままの状態で推移すれば400人を割っていると予測されている。そのとき、いま根羽村にいる子供たちはみんな大人になっているはずだ。彼らはそのとき、どこで何をしているのだろうか。  少し前から、根羽村独自の森林管理者制度のようなものを作りたいというアイデアを持つようになった。    根羽村に来る前の半年間、東京で林業ベンチャー企業の勉強会や森林総研が主催する講演、自伐型林業の研修に参加するなどして、林業のことをその課題を中心に大

      • 完全な木の登り方

         「安全な木の登り方」について解説しようと思い筆をとったのですが、いきなりのタイプミスで「完全な木の登り方」になってしまった。しかし偶然なる必然で出てきこのタイトル、なかなか良い感じなのでなんとなくこのまま進めてみたいと思います。しかしそんなものがはたしてあるのだろうか。    ちなみに「安全な木の登り方」は、ツリークライミングジャパンという団体の講習を受ければありがたいことにバッチリ教えてもらえますので知りたい方はそちらでどうぞ笑。僕も目下受講中でして、僕が言う「木登り」と

        • 山仕事のための読書ノート④       おばあちゃんのはなし

           高校一年生の時に、ひとり自転車で伊豆半島を一周したことがある。中学生の時に安価なロードバイクを手に入れて、友人たちと何度か遠出もしていたのだが、今思えばこの時が初めての一人旅だった。年齢的にも、自立心が芽生えひとりで何かをしたくなる年頃だったのだろう。伊豆半島一周は150キロ以上。日帰りにはやや厳しい距離だから、テントと寝袋を持ってどこかで野宿でもする予定でその旨を両親に伝え朝五時に出発した。伊豆半島の東側の付け根あたりにある伊東市宇佐美の自宅から半島の南端をまわり、西伊豆

        山仕事のための読書ノート⑥こどもの時間

        • 山仕事のための読書ノート⑤       風と土のフォレスター               「キッズフォレスター構想」覚え書き

        • 完全な木の登り方

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          山仕事の読書ノート③ 森は存在しない①

           ふと、「森は存在しない」というフレーズが頭に浮かんだので、そのことについて書いてみます。もちろん、森は存在します、たぶん(笑)。なんのこっちゃ(笑)。まぁ、しばしのお付き合いを。    林業の勉強のために買わせてもらっている本のタイトルには、「森」という言葉が多い。「森づくりの原理原則」「森を育てる技術」「植えない森づくり」「森づくりの明暗」「スイス式森の人の育て方」などなど。しかし僕たちは仕事のフィールドを「山」と呼ぶし、それはまた人工林という「林」です。そして僕たちは「

          山仕事の読書ノート③ 森は存在しない①

          山仕事の読書ノート② 職業倫理

           「私は木に話しかけないようにしてます。木に話しかけているとむこうも私のことがわかるようになる、そうなるともうその木を伐れなくなってしまうからね。」  根羽村に来る少し前に訪れた奈良県吉野の林業家の方は古老然とした静かな語り口で極めて自然にそう言った。さすがの吉野林業のベテランの言葉は、たんなる思い込みとは感じられなかった。木を伐れなくなったら商売が成り立たない。「樹木は知性を持っているよ。」その人はそうも言った。樹齢250年と言われる杉の巨木の林は、何かラピュタのロボット

          山仕事の読書ノート② 職業倫理