見出し画像

【読書メモ】進化しすぎた脳/池谷裕二

ことあることに言っていることですが、
私は「精神障害」「メンタル疾患」「心の病気」といった表現に違和感を感じています。
そう表現すると心の持ちようが原因のように聞こえます。
それらの原因は「脳」の機能の何らかの異常によるものという認識を持っています。
(その結果、心の持ちようにも異常が生じるのだと思います。)

ということで、自分の病気と付き合いながら生きていくと決めて以降、
脳についてより知ることは自身のライフワークだと思っています。
そんな中で今回の本は読むべき本と長い間思っていましたが、
今回やっと読むことができました。

この本はKindle版がなかったので、
久々に紙の本での通読。
厚めの本ですが、読みやすく、
脳科学の入門用として良い本だと思いました。
また、本作の出版は2007年と今から10年以上も前ですが、
古さを感じない内容のように思いました。

1.脳と体は切っても切り離せない

能力のリミッターは脳ではなく体

私は「脳も身体の一部。脳と身体は分けて考えることはできない」
と思っていますが、本書を読んでもそれは間違いないと思いました。

以前別の脳科学に関する本を読んで、
「脳は身体を動かすためにある」という認識を持ちました。
(なので、植物は動かないので脳はない。)

本書で述べられていたのは、脳で身体を制御しているが、
身体のどの部分を司るかは脳の場所で決まっているとのこと。
そこで、病気や先天性の奇形、事故により脳のある部分が欠損していたり
機能しなくなったらどうなるか。
その場合は、脳の別の場所が代わりの役割を果たすとのこと。

脳は身体の状態に合わせてフレキシブルに順応する。
身体あっての脳。
身体なくして脳を語ることはできない。

2.脳はあいまいなもの

コンピューターは「0」と「1」を駆使して物事を正確に記憶する。
また、メモリを増やせば記憶量もそれに応じて増やすことができる。
しかも電気・物理的なトラブルがなければその記憶は半永久的に持続する。

人間の場合はどうか?
物事を詳細に正確に覚えることはやろうと思えばできないことはないかもしれない。
しかし、受け取る情報全てに対してそうしていると、
すぐに頭はパンクしてしまう。
しかも、記憶したとしても、その記憶を使わなかったりすれば、
その内容はいずれ忘れてしまう。

そこで物事を効率的に記憶する方法としてあげられるのが、
言葉等を使ったグルーピング。
人間が他の動物と違うのは「言葉」を駆使できること。
言葉を使うことにより詳細は削がれてしまうが、
グルーピングし、繋がりを持って、効率的に物事を記憶することができる。

また、脳が認識する情報は果たして正しいのか。
人間は視覚や聴覚等、感覚器官で受け取った信号を脳で処理して
それらを認識し、それに基づいて判断や行動をする。

まず、そのときの脳の処理が正しいのかという問題がある。
また人間の場合、情報を認識する際に、言葉による解釈が入る。
そこで実際の情報と自分の認識に多かれ少なかれズレが生じてしまう。

そう考えていくと、人間の脳は
コンピュータと比べると大分あいまいなものであるといえる。

しかし、著者の主張は、人間の脳はあいまいだからこそ、
深く学習が進み、ときに新しいひらめきや発見が得られるのではないのかと。

機械設計の場合も、寸法きっちりで設計するのではなく、
誤差や「あそび」を考慮して設計することで、
実際の装置がうまく機能する。

脳があいまいだったからこそ、
人間の文明がここまで発展したのだと思っています。

3.脳の仕組みは「科学」で解明できるのか

科学は「客観性」と「再現性」を重視

本書では脳科学の内容だけでなく、
研究や科学に対しての著者の考えにも触れられています。
その中で以上の記述がされています。

そこで思ったことは、科学的アプローチで脳の解明を進めることができるのか。

まずは「客観性」について。
ある程度については、データを集められるだけ集めて、
それを客観的に分析することができる。
しかし、脳を語るうえで欠かせないのは「意識」。
「意識」は「主観的」なもので、「客観」という言葉と相反する。
「意識」とは何か、どこから生じているか、は今後の脳科学研究の一つのテーマ。

次に「再現性」。
ある人を被験体にある発見が得られたとする。
それを別の人の場合でも簡単に再現できるのか。

メンタル疾患の場合でも、
同じ病名でも症状は各人によって異なり具合が、
他の病気に比べて大きい。
脳の状態は人によっての異なり具合が大きく、
同じ人物であっても、その時の環境・体調によって脳の状態は大きく変化している。
その発見を得られたと時の脳の状態をどうやって再現するか。

そう考えていくと、脳を科学的アプローチで解明していくのは
難しいものだと感じる。
他の人間の器官と比べて解明が進んでいないのも納得。

素人の考えではあるが、量子力学的な考えを脳の解明に取り入れることはできないか。
それとも既に取り組んでいる人がいるのだろうか。
脳は人間の中の宇宙。
脳の解明については日夜進んでいるのだそうが、果てしない道のりであろう。

それでは。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?