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【子どもアドボカシー 2】 子どもの話に耳を傾けないと、起きてしまう問題。

*2021年の11月、児童養護施設の和白青松園で行われた
 子どもアドボカシー講座でお聞きした話、気づいたことを
 書きまとめていく全3回シリーズの第2回目です。


言えなかった思いは、やがてトゲになる。

親や教師、周囲の大人たちから
「自分の思いは遠慮なく言葉にしていいんだよ」と
言ってもらえずに育った子どもは
心のなかに満たされない何かを抱えたまま
そのイライラを何らかの形で表面化させます。

暴力をふるう。
誰かをいじめる。
やけを起こす。
自己否定をする。
死にたい気持ちになる。
「意見を言わず、大人が決めたことに
盲従した方がラクだ」と無気力になる。

心のトゲは一人ひとり違う形で現れるけれど
自分の外に向かって、または内に向かって
必ず刺さっていくのです。

こんな不幸を避けるために、大人たちが心がけたいこと。
それは、子どもたちが日々感じている思いを
ちょっとずつ話せるような環境をつくることなのだそうです。
とくに親の力は大きく、
親への信頼が子どもの心の安定につながるのだとか。
「どんな悩みも、親は聞いてくれる。基本的に私の味方だ」と
子どもが感じることができれば
心の中のモヤモヤは、たまることなく消えていくようです。

親に心配をかけたくないから、何も言えない。

ただ、ひとつ気をつけてあげなければならないのが
子ども自身の「親に心配をかけたくない」という思いでしょう。
子どもは、大人から社会について学んでいく中で
「こんな話は人に言っちゃいけない」と思い込んだり
「こんなことをした自分は良くない人間だ」と
自己嫌悪に陥ってしまうことがあります。
最悪の場合、犯罪に巻き込まれても
「自分に非があったのだ」と己を責める子どもだっています。
やがて「自分で解決するまでは、誰にも相談できない」とまで
思い詰めて、心の扉を閉ざしてしまうこともあるのです。

日本では、こうした子どもたちが多い傾向にあり、
子どもの幸福度が先進国の中で下から2番目とされている理由も、
ここにあるとのこと。

日頃から子どもの話にじっくりと耳を傾け
「あなたは、あなたのままでいい」と全面的に肯定していれば
子どもは自責の念にさいなまれることなく
心穏やかに過ごせるのでしょう。

なぜ、子どもの自殺が増えているのか。

日本では、子どもの自殺は増加の一途にあります。
しかも、前触れを見せて自殺する子どもは少なく
その多くが突発的だといいます。
学校も先生も友人も、そして親さえも
「この子は大丈夫」と思っていたのに、
突然、生命を絶たれてしまう。
だから、いま多くの大人たちは
どう対処すればいいのか分からない、と
戸惑っているのです。

悲しい結末を迎えてしまう子どもの多くは、
基本的自尊感情が十分に育っていなかったのではないか
と言われています。
基本的自尊感情とは
「私は生きる価値のある人間だ」
「いつか、うまくいく」と
根拠なく思えること。
この感情は、親などからの
無条件の愛によって育まれるものだそうです。
しかし、日本の子どもたちは大人から
自分をまるごと肯定される経験が少なく
愛を肌で感じ取れていないために
基本的自尊感情が培われていないようなのです。

子どもだけではなく、大人にも足りていない自尊感情。

基本的自尊感情が欠けていると
「努力しなければ、誰からも必要とされず、生きる価値がない」
と考えるようになります。
そして、勉強でよい成績が出せなかったり、外見に悩んだり、
周りからの評価が下がったり、人間関係で失敗したりすると、
あるとき、ふと自殺を企図してしまうのです。
これは、子ども時代だけでなく、
大人になっても続く傾向かもしれません。

人間は、瞬発的な強いストレスは乗り越えられるものの、
真綿で首を絞めるように継続するストレスには弱いのだそうです。
そうやって自分でも気づかぬうちに、突然ポキッと折れてしまう。
ただ、基本的自尊感情があり、心がどっしり安定していれば
継続的なストレスにも耐えられるとされています。

その安定感を育むのが、何でも遠慮なく話せる環境。
バカな話も、タブーなことも、自分の失敗や欠点も
何でも安心して言える場があれば、心が軽くなる。
大人だって、そんな環境が約束されていれば
たぶん死ぬほど悩んだりしませんよね。
子どもは、特に、そう。
だから、時には何も否定せず(難しいですけど)
じっくりと話を聴いてあげてほしいのです。

それに、子どもの話を聴いてあげていると、
やがて大人も素の自分を出せるようになって
心が軽くなるかもしれませんしね。