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単調な平日という1日

朝6時、体に纏わりつくような悪夢から目が覚める。ついでにトイレに行き、まだ依然として残る眠気と嫌悪感とともに、二度寝を試みる。

9時。妻が起床し、仕事の身支度を開始する。僕はまだベッドの中で胡乱とした意識を無理やりまた眠りに引き釣りこもうと、寝返りをうつ。

10時。そろそろ起きなければ、仕事が始められない。意識を総動員して、眠気に勝利する。意識も不確かな状態でリビングへ。しぶしぶ、着替え、財布をポケットに差し込んで玄関をあける。

最寄りのセブンイレブンでコーヒーとパンを1つ、あとはiQOSのメンソール。タバコを買うと1日の予算がオーバーしてしまうんだけれど、それを判別するだけの明瞭さは脳にはなく、特段店員との会話もせず、自宅へと戻る。

道すがら、今日も今日で、なんとも嫌な気持ちになる夢をみたなと、その夢の内容を反芻しながら、こんな状態で夏を通り過ぎ秋を迎えるのは、何度目だろうか、と嘆息する。

11時。そろそろ始業しなければならない。『楽しい』という感情が息を潜めているこのごろでは、何をするにも億劫だ。そんな気持ちを和らげるべく、頓服薬を早めに飲む。

日によって効き目にはばらつきがある。早い日もあれば、全然効かない日もある。人間の身体の精緻さと、その複雑さには、そのたびに打ちひしがれる気持ちになるのだが、まあ、仕方ない。壊れてしまった心と身体は、そう簡単には修繕できないものだ。

過去の偉人たちが残した絵画や陶器を修繕することが難しいように、人の心や体もまた、難解な対象である。

できることなら、『金継ぎ』のように美しく、修繕したいものだと思いつつも、なかなか思うようにならないのは、少々、いやだいぶ困ったなと思いながら、パソコンの電源をつける。

12時30分。同僚のエンジニアとのオンラインMTG。毎日、進捗確認と雑談をする。大した進捗がなくとも、僕の水準に合わせて言葉を選び、滞っているポイントに対して的確なアドバイスをくれることはありがたい。また、あまり人と話す機会が少ない僕にとっては、ちょっとしたストレス解消にもなっている。

この頃になると、薬も威力を発揮しはじめており、まぁなんとか会話も成立するし、最低限の集中と仕事への意欲ってやつが生じる。

14時。徐々に疲労感がにじみ出てくる。薬の効力も切れつつあり、どんどん良くない思考が忍び寄ってくる。上手く交わしきれる日は良いが、そうでない日はそのまま闇の中に引き釣りこまれてしまう。注意が必要だ。

16時。頓服薬の役目は終了する。抑うつの時間の到来だ。2錠目の頓服薬を投入しても良いのだが、この時点ですでに頭はショートしているし、心も彩りを失っているので、休息を優先する。

ソファに横たわり、何も考えられずに、ぼーっとする。気がついたら寝ていることもある。慢性的に睡眠不足なのだ。

17時。のそのそと再度動き出す。妻が終業するまでに、家事をするためだ。昨晩使用した食器を洗い、洗濯機を回し、洗濯ものを干す。たまに、クイックルワイパーもかける。

お風呂の湯を抜き、お風呂掃除をする。生活を循環させるために、家事の役割が僕に移行しつつあるのだが、それはそれで、僕の日常を正常化するには必要なことらしい。それに、家事をやっている時は心が少し安定するし。

18時。あらかた家事を終え、ソファに舞い戻り、さて、なにをしようかと思案する。大抵は、専門書を読む、小説を読むことに費やされるが、最近は小説の割合が多いように思う。

19時。妻から終業のLINEが送られてくる。LINE上で今日の献立を相談し、それにあわせて下ごしらえを開始する。お米を研ぐときもあれば、出汁をとるときもある。今では、たぶん妻よりも冷蔵庫にしまわれている在庫に詳しくなっていると思う。

ちなみに、今日はなんだろう。なるべく時間がかからず、作れるもので合意がとれるとありがたいな。疲れているし。

20時。料理をしながら、帰宅した妻と話す。だいたい妻が話していることに対して、僕がうなずいたり、適当な相槌を打ちつつ、手を動かす。疲れている時は、妻もソファで一休みし、ゆっくり料理を進める。

21時。夕飯を食べる。食事をしながら海外ドラマを見ては、あれやこれや自分勝手にコメントをし、あの声優は違うドラマにも出ていたね、なんて話をしながら食事を終える。

それからは、静の時間。僕はソファーでぼーっとし。体と心の疲労感をじんわりと感じながら、小説を開いては閉じ、タバコを吸っては、たまにSNSを覗き、妻から話しかければ応じる。

22時30分。お風呂のスイッチを入れる。自動的に湯が満たされる仕組みなので、あとは待つだけだ。ちょっと眠い。脳がパンパンに腫れているのではと思うときもあるほど、よくわからない疲労感。大した仕事もしてないし、深い思考もしてないはずなのに、毎日、とりあえず脳も体も心も鈍重だ。

23時。お風呂に入る。冬場は1時間ほどつかるのだが、今の季節は直ぐに汗だくになり、のぼせてしまうので30分ほどで上がってしまう。お風呂に入ると、いくぶん脳の疲労感も取れるから、僕にとっては大事な時間だ。

お風呂からあがったら、歯を磨き、妻がお風呂から上がるまで小説を読む。小説というのは不思議だ。文章を読むだけで、別の世界へ連れて行ってくれるのだから、とてもコスパの良い現実逃避の方法だろう。

24時。妻がお風呂からあがり、ソファで熱を冷ましている。僕は、寝る前の頓服薬と、睡眠導入剤を摂取する。最近では、なかなか寝付けなくなったので、睡眠導入剤は2錠だ。

25時。ようやく妻も眠りにつきそうにウトウトしはじめた。僕は元から寝付きが悪いので、もう少しかかりそうだ。薬を飲んでも、寝付きがめざましく良くなるということは無いらしい。

27時。ようやく、睡眠。日によっては4時ころまで眠れないときもあるが、だいたいこの時間には眠ることができているように思う。

そして、次の日、同じような1日を繰り返す。

これが、果たして自分の病に有効なのかは、わからない。ただ、この日常がまわることで、ギリギリ自分という存在を保持でき、許せているような気にさせてくれるのだ。

いつまで続くか、続けるかわからないこの命を、なんとか繋ぎ止めつつ、明日に特段期待することなく、たまには安らかな睡眠を摂取したいと思う日々である。

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