たった半年で阪神タイガースの運命を変えた「賭ケグルイ」―村瀬秀信『虎の血』
1.半年で消えた謎の老人監督・岸一郎爆発的な面白さだった。実在の人物であり、実際にあった話なのに、現実なのか虚構なのか分からない気分におちいってしまう。
なんといっても主人公である岸一郎が、まったくもって謎の人物だからだ。1954年冬、突如として大阪タイガース(現・阪神タイガース)の監督に就任し、わずか33試合でクビになった老人である。かつて大学や満州の野球界で名を馳せたが、それも30数年前の話。当時の野球界で知る者はほとんどおらず、選手たちにもまったく相手にされないまま