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ハウスメーカー選びは、パートナー選び(東京⇄岐阜の遠距離婚夫婦、家を買う#7)

本命A社との打ち合わせが終わり、30分空けてB社(旦那推し)とのオンライン打ち合わせが始まった。

前回の圧がちょっぴり強めな態度を思い出し、始まる前から気が重い。
今回でそのイメージを払拭してほしい。でなければB社との先はないだろう。
心の中ではそこまで考えていた。


「お久しぶりです!その後、何かお変わりはありますか?」
A社・B社共に、営業さんの挨拶はいつも同じだ。他社との打ち合わせ状況や要望の変化など、営業さんは常に最新情報を求めている。

旦那もそれを知っていて、あまり深く考えずに答えたのだろう。
「今日はA社さんとも打ち合わせがありまして、修正した間取りを見せていただきました」

しかしその瞬間、ベテラン風の落ち着きを見せていた営業さんに初めて驚きと焦りの色が浮かんだ。

「A社さんとも進んでいるんですか?どれくらい間取りが固まってますか?A社さんの、どの辺りが魅力的でしょうか?」

おおお?

思った以上に食いつかれて、こちらが焦ってしまう。
A社とB社はどちらも全国展開しており、価格帯も近い。互いに意識する関係だとは思っていたけれど、まさかそこまでだとは。


A社を推しているのは私だ。旦那に目配せされて、たどたどしく答える。

「えっとですね…、A社さんは内装の提案が気に入ってます。木の質感が強めのところとか、希望していた本棚もLDK一面に入れてもらって、理想にかなり近いです」

「木の質感というのはフローリングですか?フローリングなら、うちもxxや〇〇ができますよ!」

うぅ、押さないでほしい。

全体の雰囲気や内装が好みというフワッとした感覚で話していたので、具体的なフローリングの種類を挙げられても「そうですか……」以上の返事ができない。
よく分からないけれど、グイグイと押されている感覚だけは強い。B社さん、空回っているよ。

「本棚もね、ご希望なら入れられますし、内装は後から何とでもなる部分も多いですから」

(いや、あなた。最初の間取り提案に入れてくれんかったやないかい!)

おそらく旦那も岐阜県から同じセリフを叫んだことだろう。
「何とでもなる」と言われても、こちらは素人なのだ。何が、どこまで、何とでもなるのか分からないんだよ!


そして極め付け。

「内装はその気になればA社さんそっくりにできますよ。イメージを言ってもらえれば、寄せられます」

うーーーーーん!

心の中で「OUT」と書かれたランプがペカペカと点滅する。

それだけは言わないでほしかった。

確かに私はA社の内装や雰囲気が好きだ。でもB社にはA社の真似ではなく、B社の良さでアピールしてほしかった。

そこから後は、申し訳ないがあまり覚えていない。間取り案も見せてもらったはずだけど、私の中ではすでに進める気が失せてしまっていた。


打ち合わせが終わった後、旦那との通話画面の前で拝み倒す。

あの営業さんとは多分やっていけない。この先、自分の希望をうまく伝えられるかも分からない。
予算を考えればB社だけど、あの人と一緒では満足できる家を作れる気がしない。

そう泣きつく勢いだった。


旦那があの打ち合わせに対して、どんな感想を抱いていたのかは分からない。

それでも少し悩んだ末に「そうしよう」と言ってくれたこと、B社に断りのメールを入れてくれたことを、今でも感謝している。

そして、その後に待ち受ける半年間の打合せラッシュを思い返す限り、自分の判断は間違っていなかった。

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