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読了:『猫を抱いて象と泳ぐ』 小川洋子


本日2つめの読書感想文です。

明日は芋掘り第二弾が待ち構えているので今日のうちに書いてしまうことにしました。出かける支度がまだ済んでいないのでちょっと小走りで失礼します。

『猫を抱いて象と泳ぐ』 小川洋子


なんとも不可思議なタイトル。

小川洋子さんは『博士の愛した数式』でとても有名な著者さんですが、そちらよりも先にこの本に出会ってしまいました。

といっても書店員として働く中で無数の本を日々目の当たりにしているのですが、中でも印象に残るのはお客様からお問い合わせがあった本。

この本を知ったきっかけも、ある女子高生の方からのお問い合わせでした。どうも学校の先生から”この本と似たような内容の本”を探して読むように、という課題が出たそうなんですが、まず”この本”というのが今日ご紹介する『猫を抱いて象と泳ぐ』なのです。

私自身読んだことがないものだったので同僚に聞いてみましたが、皆さん未読のものでした。売り場に文庫版があったので裏表紙にある概要を読んだりネットで検索しどんな話なのか調べましたが、読まない限りは何も掴めず、かなりの時間お待たせしてしまいました。

そして悩みに悩んで思い浮かんだものを一冊ご提案しましたが、自分の中でそれが正解だったのか何も確証が得られず気になってしまい、帰り道に図書館のウェブサイトを開いてすぐに予約をしました。

そんな出会いで読む機会が巡ってきたこの本。

きっとこの機会がなかったら読んでいなかったであろう本。

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リトル・アリョーヒンと呼ばれた少年がいた。

その少年が生まれたとき、上唇と下唇がくっついて生まれてきたのだが、直ぐに口を開ける手術が行われた。しかしまだその唇がくっついているかのように、少年の口数は少なかった。

その少年はある日、バスの運転手の水死体を目撃する。そしてふと思い立ち、その亡くなった運転手が住んでいた寮を訪れた少年は、同じ敷地に一風変わったバスを見つけた。

そのバスの中で、のちに「マスター」と呼び尊敬するチェスの師と出逢う。

学校帰りにはそのバスでマスターと一緒にチェスをするのが習慣になり、少年はその時間が大好きだった。

しかしある日いつものようにバスに向かった少年が見たのは人だかりだった…。

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本の概要をまとめるのは到底無理な話ではありますが、ここまで下手だと逆に申し訳なくなります。

なんなら序盤しか触れてないので、本来のメインストーリーは読んだ人のみぞ知る、という感じです。笑

チェスがとっても上手な少年の話なんですが、ただ強いのではなく、その一手一手が作り出す盤上の駒の動きがとても美しい棋士らしいのです。

少年が、そのチェスの場面で、屋上に閉じ込められたインディラや壁に挟まれてしまったミイラ、胸の中のポーン、そしてマスターを思い起こす描写が度々出てくるのですが、そのどれもが繊細で美しく、深海や銀河の、静かで無重力で、研ぎ澄まされた空気感が伝わってきました。

分かりやすく言ってしまえば、ラピュタの飛行石が岩をざわつかせているあの神秘的な感覚です。

まるで、限られた人にしか見ることのできないとても希有な美術品をみてしまったかのような気分でした。

お客様からのお問い合わせを受けた時に読んだ「概要」だけでは何にも分かってなかったな、と反省をしつつ、こんな素敵な本に出会えたことがラッキーだと思います。

このテーマに似た物語を探さなくてはならないとは、なんと難しい課題を与える先生なのでしょう。しかし先生が選んだのが敢えてこの本だとしたら、思慮深く真面目な方なのかなと色々想像してしまう。

同じようなテーマで私がその高校生のお客さまにご提案した一冊なんですが、実はこちらも読んだことがありません。(今思えば雰囲気で選んでしまい大変申し訳ないけれど)

もちろんその旨はお客さまにはお伝えしました。

というわけで、次はその「読んでないけれどご提案した一冊」を読みます。

どうか書店のバイトの軽率で無責任な提案をお許しください。(その高校生のお客様には、司書さんに聞いた方がいいかもしれませんとお伝えはしましたが)

博士の愛した数式もぜひ読みたいと思いました!
有名なのに読んでないとはこれまた私の恥です。

読んでいただきありがとうございました。

今日のnegoto「返却期限ギリギリで生きてる」



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