見出し画像

【一人読み】初恋は幼馴染

性別指定(女性) 人称変更可 語尾変更可

✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼

雪が舞っている時に君からの電話に気が付いた。
そっと電話に耳を傾けてみる。
「もしもし?」
不安そうな声が私からこぼれた。

「おぅ。元気にしてるか?実は。俺…結婚する事が決まったんだ」

やっぱり…。私の嫌な勘はよく当たる。
きっと電話の向こうでは照れ笑いしている君がいる。
めでたいはずなのに私の周りからスッと音が消えた。
「おめでとう」って伝えたけれど…。
私はちゃんと平然を保てていたのかな。

私と君は幼なじみだけど、もっと近い関係だった気がする。
まるで兄妹…。
いや。家族…そういった方がしっくりくる気がする。
嬉しい時も。
寂しい時も。
いつも私の隣には君が居た。
楽しい事も。
辛い事も。
なんでも話して笑い話にしてきた。
君の事が好きなのかなと気が付いたのは高校に入る頃だった。
身長も伸びて。
声も低くなって。
大人になっていく。
私が知っている幼い君から変わっていく姿に焦りを覚えつつも君に惹かれていった。

「実は…好きな人ができた」と相談された時は。

どうか嘘であって欲しいと思っていた。
そして私であって欲しいとも願っていた。
だけど君が目で追っていたのは私の親友だった。
気が付いてはいたんだ。
君が私の事を妹としか見ていない事なんて。
親友に恋をしている事なんて。
ずっと君を見ていたから。
だからこそ私から告白する事なんてできなかった。
君との関係が壊れてしまう事が怖かったんだ。
君に伝えられたらどんなに楽だろうと何度も悩み。
眠れない日々を過ごしてきた。
だけど声にすることはなかった。
君への思いだけがどんどんと心の中で雪のように積もっていき。
凍えそうで寒かった。

大好きな君の声で我に返った。
君は昔とは変わらない優しい声で私に呟いていた。
お前が幼なじみで良かった…。
私はちっとも良くないよ。

電話口で「お前も俺たちみたいに幸せになれよ」と言われた時。

泣きそうになる声を我慢して「うるさいよ。私の親友泣かせないでね」と私は笑っていた。

何年も、同じ人に片思いをして。
何年も、前に進めなくて。
そんな自分が嫌いになる。
だけどそれでもいいと思っている。
君の事が好きだった事に嘘はない。
ずっと一人の人の事が好き…。
まったく誇れることじゃないけど。
何となく誇ってみたい気がした。

君の無邪気な声が、笑い声が聞こえてくる。
町の小さな教会で開かれた君の結婚式。
雪のような真っ白のタキシードを着て。
同じく雪のようなドレスを来た親友に笑いかける姿を見た時。
私の瞳は輝いていた。
「ちゃんと幸せになるんだよ」と伝えられたら。
ほんの少しだけ自分に自信が持てる気がした。

さよなら。私の恋心。
さよなら。私の幼なじみ。

「私の分まで幸せになってね」

おわり

✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼
手に取って頂きありがとうございます。こちらは他サイトで投稿していたシナリオになります。
拙い文字たちですが可愛がってくださると嬉しいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?