アウトサイダー広告代理人5

誰もが発信できる時代のアウトサイドなマーケティング

ANAインターコンチネンタルホテルにて開催されたインターネット・マーケティングフォーラム2019へ行ってきた。

先進的な取り組みを実践しているデジタルマーケターらのセッションを通し、マーケティング活動をより広義に捉え、その中における今日的なインターネット活用のアイデアと実践の方法を探るフォーラム。

様々な企業の各部署でデジタル業務を推進する熱量の高いマーケターが来場する。その数、2日間で約4500人。そんな中、どう考えても“熱きマーケター”ではないわたしの目当ては

マキシマム ザ ホルモン アウトサイダー広告代理人 マキシマムザ亮君と
株式会社Que クリエイティブディレクター/CMプランナー 岡部 将彦 氏による
アウトサイダー広告代理人流
アウトサイドなマーケティング

というセミナーだった。

先月のVIVA LA ROCKにて、バンドとして初の―
というよりも前代未聞の、自身のバンド2号店のデビューを無事成功させ、
ロックバンドフランチャイズ制導入を成し遂げたマキシマム ザ ホルモン。
その軌跡を追ったドキュメント番組はYouTubeにて配信され、総再生回数1000万回を超えた。(5月20日時点)
番組の企画構成を担うのは、マキシマム ザ ホルモンの歌と6弦と弟パートのマキシマムザ亮君。
さらに、マキシマムザ亮君はあの大企業、日清食品の“アウトサイダー広告代理人”に就任し、“カップヌードル コッテリーナイス”のプロモーションの一切を担っている。
もはやその活動は、歌と6弦と弟に留まらず、その手法も規模も規格外。
生粋のホルモンファン=腹ペコのみならず、各エンターテインメント業界に衝撃を走らせるアウトサイダー広告代理人 マキシマムザ亮君にマーケターとして注目が集まっている。
そしてロックバンドであるマキシマム ザ ホルモンがこれまでに成し遂げた偉業(異業ともいえる)の数々をアウトサイドなマーケティングとし、その仕掛け人であるマキシマムザ亮君をアウトサイダー広告代理人と呼び、その流儀が語られるというのが今回のセミナーなのである。

開始時刻が迫り、いよいよ会場へ。ホルモンファン=腹ペコも少なからず来場しているようではあった。が、同時刻の他会場ではあの博報堂の方やあの電通の方が登壇中であるなど、これはガチのマーケティングセミナーなのである。
そんなわけで、ロックバンドのメンバーがこのような場所に来ているという違和感は大いにあり、まずはマキシマム ザ ホルモンというバンドの説明ののち、アウトサイダー広告代理人 マキシマムザ亮君流マーケティングを分かりやすく解明した動画が流れた。

それは、これまでのホルモンの偉業(異業)の数々がまとめられたものだった。

・CDに封入された「いい草」「いい粉」そして、応募で当たる「いい石」という謎すぎる特典の歴史
・採算度外視のライブイベント「地獄絵図」が本当に「地獄絵図」
・「ライブに行きたいが、ギュウギュウ詰めが嫌だ!」の声から生まれた「MASTER OF TERRITORY~俺達にマスはある!~」
・純粋なる腹ペコ達を大いに困惑させたニセPV「小さな君の手」や活動休止宣言?と思わせての「新ジャンプ発表」
・亮君が1000万自腹で予算追加しても製作費が足りなかった「DVDデカVSデカ」
・CDの売れない時代に書籍として販売し、オリコンチャート3週連続1位を獲得した最新譜「これからの麺カタコッテリの話をしよう」

などなど、腹ペコの誰もの記憶に深く刻まれた伝説の数々が紹介されていた。その詳細は一言では語り切れない
が、これもアウトサイダー広告代理人の流儀のひとつ。

なのである。

体験した人間が語りたくなるようなコンテンツを常に生み出すマキシマムザ亮君であるが、ホルモンを追いかけているわたしがいつも「すごい」と思うのが、
何よりも亮君自身がやりたいから、おもしろいと思うから
ですべてができてしまっていることだ。
何よりもまずそれが先にきて、ファン、クライアント、協賛者のニーズにもマッチし、結果として売り上げやプロモーション効果となって還ってくる。
最初から採算度外視のタダ同然ライブイベントも数多く企画していることから、亮君がまず求めているのは「売り上げとしての利益」ではなく「亮君の評価軸での利益」であることがわかる。
それが、2号店による新規ファン層の開拓であったり、コミュ障の腹ペコ達に“つながり”が生まれることであったりするのだろう。

このやりたいから、おもしろいと思うから
で何でもやる発想力、行動力の対極としてまたひとつの流儀がある。

外側からの見え方を考えて何でもやるのではなく
やらないことを決める大切さを説く。
これは、堀江貴文氏も提唱しているが、「自分の貴重な時間は自分の強みが一番発揮できる仕事に集中させるべき、だから自分でやらないことを決めることが大切」という時間効率的なことというよりも、精神的な面が強いように感じる。
それが、ロックじゃない(だからやらない)のひとことに表れている。
これもやはり亮君の評価軸がしっかり確立されているからこその流儀なのだろう。やりたいから、おもしろいと思うからやるという部分でブレない。そこにアウトサイダー広告代理人の真髄があるのではないだろうか。

そしてここがまたひとつの流儀につながってくる。

亮君の評価軸でやると決めたことは何が何でもやる。
「これだと死んでしまいます」となったら、「どうしたら死なないか」をとことん考える。そのルールの隙間を突くためにアウトサイドな発想が必要不可欠なのである。
亮君にアウトサイドな発想力が備わっているからこそ、アウトサイドなマーケティングの数々が可能になったともいえるし、ルールの隙間を突いてまで実現しようという熱量が結果アウトサイドなものになっていったともいえる。

アウトサイドというと、理解しがたく常軌を逸したものというイメージであるが、亮君のアウトサイドなマーケティングの数々はそんな独りよがりなものではなく、むしろ自分の外側である巷に溢れる声を丁寧に打ち返していった結果作り上げられていったものなのだ。

「ホルモンファン=腹ペコだと公言しにくい」
「グッズがすぐに売り切れてしまい手に入らない」
「ライブに行きたいが、ギュウギュウ詰めが嫌だ!」
こういった声への【神対応】が数々の企画の源であったのだが、いかんせん【公式が病気(アウトサイドな発想)】であったがゆえ、これがアウトサイドなマーケティングとなったのである。
この2つの要素はどちらも有難いものだ。それが掛け合わされることによってさらにアウトサイドなものであり、唯一無二の魅力を生み出している。

マキシマム ザ ホルモンの偉業(異業)の数々を見てみると、確かに唯一無二であるし、再現性は低いように思われる。
しかし、アウトサイダー広告代理人 マキシマムザ亮君は最後にこう語った。

楽曲・ライブだけがバンドではない
それ以外に何をしたか、それを含めてバンドである

そしてそれは企業も同じなのではないか

バンドの生み出す楽曲が料理で、ライブがレストランなら
その料理のおいしさを届けるためのマーケティングもお店のプロモーションも
料理の味を一番知っている料理人がやったほうが伝わる。

なぜロックバンドがクリエイティブディレクターの領域にまで手を伸ばした活動を行うのか?その答えは亮君の価値軸の中で明確である。
【神対応】×【公式が病気】というアウトサイダー広告代理人の流儀の根底は、抽象度を上げると
誰もが発信できる時代のマーケティングとイコールとなる。

わたしはこれを
【神対応=顧客のニーズに純粋に還る】
【公式が病気=目的に到達するまで自分独自の価値軸を持ち続ける】
と読み替えてみた。
そうすると、確かにこれは誰もが発信できる時代のマーケティングなのだ。
病気=独自性
ここに魅力があればあるだけいいものになる。

亮君の病気はアウトサイドという魅力になり、アウトサイダー広告代理人によってアウトサイドなマーケティングの数々が生み出され、人々を魅了する。
アウトサイドゆえに、ファンが音楽以外のことでホルモンを語りたくなる。
一見理解しがたいことの中にも抽象度を上げることで見えてくる、
今の時代をしっかりと捉え、必要なもの、大切なものがきちんと補填されながら循環していく仕掛け作り。その流儀を大いに学べる貴重なセミナーであった。

やはり、マキシマムザ亮君は偉大なり。​
これからも目が離せないぉ。


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