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エビデンスを重視した経済学の実践

2021年10月11日

ポール・クルーグマン(オピニオン・コラムニスト)

 ノーベル経済学賞は長期的な研究に対して授与されるものであり、現在の議論における経済学者の役割に対して授与されるものではないため、必ずしも政治的な瞬間と関係があるわけではない。特に、新しい研究手法の開発を目的とした賞の場合には、その断絶が顕著になると思われる。

 今回の経済学賞は、過去一世代の間に経済学を席巻した『信頼性革命』──経済学者がデータを用いて理論を評価する方法の変化──のリーダーであるデビッド・カード氏、ヨシュア・D・アングリスト氏、グイド・W・インベンス氏の三人に授与された。

 しかし、この信頼性革命という手法は、現在の問題に関する議論に非常に適していることがわかってきた。新しいアプローチを用いた研究では、全てとは言わないけれど多くの場合、不平等に対処するために政府がより積極的な役割を果たすべきという主張が強化されている。

 これから説明するけど、これは決して偶然ではない。その前に、この革命とは一体何なのだろうか?

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