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〔雑記帳〕Y子の話

「個性的」とか「変わってる」は、基本的には褒め言葉だと思う。私自身が、ごく普通の発想しかできない凡人だからかも知れないが。もちろん、他人に何かと迷惑をかけるような場合は「変わってる」では済まないし、それは決して褒め言葉ではない。褒め言葉と言えるのは、迷惑ではなく、純粋に「面白い」と思える場合だけだ。

私の友人は、良い意味で個性的な人が多いが、中でも大学時代の友人は特に変わっていて面白かった。一緒に怖いテレビを見ていた時、
「地縛霊って怖いなあ」
というと、
「いや、腹立つわ」
と彼女。え?何で?と言う私に、
「成仏出来ひんぐらい誰か恨むんやったら、その相手のとこに飛んで行かな。なにその場に残って、関係ない人間に祟んねん。そんな理不尽なことしか出来ひんのやったら、諦めて成仏せえや」
と。
「いや、それが出来へんからその場所に残るんやろ?何かに縛られて動かれへんとか…」
「そんな根性ナシ、祟る資格ないわ」
彼女によると、祟るのも恨むのも、一定の条件が必要らしい。「恨むべき人間を恨む」「祟るべき人間を祟る」「勝手な思い込みで道連れを作らない」「関係の無い人間を巻き込まない」…。いや、言いたいことは分かるが、それを幽霊に誰が言い聞かせる?
「わたしんとこに出てきたら、説教したるわ。ええ加減にせえって」
絶対、彼女のところには出てこないと思った。

悪霊だけでなく、他の霊にも怒っていた。いろいろな怪奇現象が起こったのは、実は誰かが亡くなったことを知らせに来ていた…という、ちょっと感動するような再現ドラマを見て一言。
「分かりにくいねん。紛らわしい」
う、うん。そうだね、確かに…。
「挨拶に来て、怖がらせてどうすんねん。あんなん、怖がらせて楽しんでるとしか思われへんわ」
楽しんでる…まあ、そうかもね。

その時、私は心に誓った。もし私が彼女に何かを知らせるときは、名前を名乗って、用件をしっかり伝えようと。霊の皆さん(?)にも、彼女の言葉をぜひ心に留めておいて欲しいと思う。




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