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読んだ本が記憶から消えてゆく

小川洋子さんの「博士の愛した数式」が大すきです。
原作はもちろんですが映画も素晴らしい。どっちも面白い、で思いつくのは「ゴールデンスランバー」とか「パコと魔法の絵本」「舟を編む」「きいろいゾウ」「天地明察」あたりかしら。まだまだありそうですが、そう、読んだ本が記憶から消えていくのです。

「博士の愛した数式」で博士は〈ぼくの記憶は30分しか持たない〉という絶妙な設定。それを支え、それに支えられ、ともに生きる永作さんの可愛さたるや。いや、永作さんではなくともです。

SNS界隈で「2023年に読んだ本ベスト10」的な書き込みを見かけます。わたしも読んだ本は記録しているので、やってみようと思いました。手帳を開いたり、携帯のメモを見たりして・・・うん・・・100冊ちょっと読んだな・・・えっと・・・これ、読んだ?

きっとそのときはいろいろなことを思って「読んでよかったー」と思ったのでしょう。最後まで読み切った本しか記録していませんから。最後まで読ませる力がその本に、最後まで読み切る体力が私に、あったのでしょう。
けれど、悲しいかな、覚えていない。

実は今も恩田陸さんの「灰の劇場」を100ページほど読んだところで思ったのです。

これ、読んだな。

けれど、悲しいかな、覚えていない。
それでもいいかと思います。覚えていなくたって、心のどこかに〈私をつくるなにか〉が入ったはずですから。さっき、病院の待合室(家族が体調不良で検査、その待ち時間)で野中柊さんの「ひな菊とペパーミント」を読んだあとも、そんなふうに思いました。〈私をつくるなにか〉はぜんぶ私の外にある。それを私の中に取りこむ。本も〈食べる〉ように〈読む〉。だから、それでよし!そもそも3日前のごはんも覚えていないのだから、3日前に読んだ本を覚えていなくたって、いいの。そういう、覚えていない、無駄に見えるようなことが〈私をつくるなにか〉になっているのでしょう!

とりあえず「灰の劇場」は途中でやめて、日本酒に専念します。今はまだお正月ですから、ぼんやりしていても許されます。
2024年、始まりとしては最悪です。地震だの津波だの火事だの体調不良で通院だの。でも、だからこそ、これからよくなる一方です。私たちみんなにとって最終的にはよい一年となっていますように。

今年もよろしくお願い致します
音瑚ひらり

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