妊娠の話 その6(臨月)

臨月に入ったとたん、自分の体のモードがカチッと切り替わったのがわかった。それは、飛行機が着陸態勢に入る時のようで、お腹の中の人と自分が肉体的に切り離される準備が始まったということが、気持ちの面でも体の面でもすごくはっきりと感じられるようになった。

臨月の一日の大半は眠いか疲れているか体のどこかが痛いか苦しいのだけど、妙に冴えていて満たされている感覚になることも頻繁にあり、その満たされ感はヨガをみっちりやってから瞑想した後のスッキリ感を軽く超越するくらいに、ものすごく深淵で神秘的で幸せな、今までにない感覚だった。

究極の陰まで極まって、出産という陽に転じる一歩手前というか、ケモノのメスとしてただ在るというか、自分の中にあったあらゆる小さなこだわりや偏りが吹っ飛んで、より包括的で多次元的な視点からこの世をみている感じになり、これを味わってしまうと、もう妊娠前と同じには戻れないんじゃないかと思えた。ハートチャクラがいつもよりずっと開いている感じもしていて、なんだかもうこのまま死んでしまうんじゃないか、まあそれでも良いなというような、あの世にちょっと近いモードに入っているようでもあった。

私は元来のエンパス気質や自己価値の低さなどから他人を安易にジャッジしがちで、表には出さなくても結構人の好き嫌いが激しい性質なのだけど、臨月の拡大した感覚により、ある事象が私にとって表面上不愉快であっても、その事象がどうしてそうなっているかがわかるし、それを受け入れても自分は大丈夫という包容力が出て、むやみに感情をあらわにして様々なことを拒絶することが激減した。

また、妊娠初期の頃は、安定期に入ったら胎教としてあれをしよう、胎児の健康のためにあれを食べようとか色々考えていたけど、私が頭で考えていた「胎児のために良いこと」と、実際にお腹の中の人が求めていることにはかなりズレがあったようにも思う。

安定期の頃から臨月にかけて、すごいカタルシスを伴う夢を見つつ泣きながら目がさめることがあり、特に臨月になってその濃密度が増したように思われた。どうやら胎児が私を親とするにあたり、最も不要なエネルギーである「インナーチャイルド」系のブロックを浄化してくれているようだった。

それは、幼少期の寂しさや恐怖心から拗らせた私の思い込みや、母との確執などを、その認識の誤認のメカニズムをちゃんと明らかにした上で、それではない新たな認識を圧倒的な光の力で見せてくれるという感じだった。

私は胎児と明確な会話ができるとかはなく、なんとなく雰囲気を感じるか、もしくは私自身の衝動や願望の閃きを通して胎児の望む行動を取らされていたという感じだったけど、夜寝る前に自分の中でどうにかしたい点や感情のブロックなどを明確化しておくと、朝方までに上記の方法で浄化してくれていることが結構あった。

体力や各臓器の機能など、肉体面では明らかに胎児に生命力を取られていて、体調はきついのだけど、こういうスピ的ジャンルのエネルギーは妊娠前より強まっていると感じた。というか、安定期や臨月は意識的にまだ物質化していない領域のエネルギー調整をするにはベストだしマストの時期なのかもしれない。








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