【創作】星に未来を
「あなたは主役として輝く星です!」
ニコニコと輝かしい運命を語ってくれた占い師を思い出す。
そんなこと言われてもなぁ。
仕事からの帰り道にあるレンタルブースに占い屋ができていた。お金を払って占ってもらうことなど一度もしたことがなかった彼女がそこに入っていったのは、友人と食事に行くよりは安い価格設定と、「星読み」という聞きなれない、しかし年末に似合いのきらめいた響きに惹かれたからかもしれない。
そこで言われたのが主役という、およそ似つかわしくない配役だった。人を沸かせるような原体験もない中途半端な人生を送ってきたし、これからもそうだろう。
ほ、と小さくため息をつく。
口元の前がうっすら白くなって、消えた。
でも。
と彼女は思う。
でも、地味な女の子のなんでもない日常だけが描かれていて、それこそが素敵だと感じるような小説やマンガもあるではないか。
彼女はいつも本を読んでいる。実用書も読むが、軽く読める小説の方が好きだ。今カバンに入っているのも、若い独身女性が仕事と恋愛で悩んで泣いて、そして最後に笑うといったたぐいの小説だ。
だったら。
彼女は思う。
だったら、苦難の末に大成功する実業家や、偉業を成し遂げる研究者や、社会福祉に生活すべてを捧げる起業家でなくても主役になっていいのなら、私の役は小さな幸せを感じながら毎日を送っている女性がいいな。華やかじゃなくても満喫している方がいい。
周りには少しの大切な友人と家族がいればいい。それから・・・?
それから・・・何が欲しいだろう。
彼女は少し口角の上がった口元をマフラーにうずめて、駅へ向かっていった。
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