優しい雨になる

アポを取り、緊張しながら訪問したのに「あなた、どなた?」と言われたことが2度だけある。

幼子を育てている最中だったから、きっと特殊なホルモンが出ていたのだろう。やけに哀しく感じて、心に小さなトゲがずっと刺さったままだ。

あの頃は、大切にされたかったんだと思う。毎日が必死で、何かが枯渇していた。渇ききった土壌にツルハシを打ち込んだらヒビ割れる。そんな状態だったのだろう。

ヒビは痛いから、干ばつの厳しい土地じゃなく柔らかな雨の降り注ぐ土地を渡り歩く旅人になった。

厳しい土地で耐えなくてもいいと知った。
自分は雨を降らせる人でいようと心がけている。
優しい道を選べるようになった。

だからもう、トゲは抜いてあげよう。


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