マガジンのカバー画像

針ほどの月明かり

34
小説です。
運営しているクリエイター

記事一覧

針ほどの月明かりー30ー

十一月の陽が弱々しく辺りを包み込んでいる。霜が降りた落ち葉が足下で音を立てて砕け、昨夜の…

箔玖恵
2年前
2

針ほどの月明かり 【0.4】

数日暮らしていた車に動かなくなった女を詰め込む。盗んだ車にスコップは積んでいないし穴を掘…

箔玖恵
2年前

針ほどの月明かり 【0.3】

激しい雨が打ちつけ、全ての音を飲み込んで流れていく。家路に着く滝沢幸の後ろを歩く男の足音…

箔玖恵
2年前

針ほどの月明かり 【0.2】

一個百円のケーキ。鳥の胸肉で作った唐揚げ。一緒に揚げたポテト。キャベツのサラダ。誕生日の…

箔玖恵
2年前
1

針ほどの月明かり 【0.1】

陽が傾く頃になっても暑いままのアスファルトの上をサンダルを引っ掛けた男が歩いていた。くた…

箔玖恵
2年前
1

針ほどの月明かりー29ー

やがて。 両手にもポケットにも松ぼっくりが入らなくなる頃、暗い土は落ち葉で埋まりどこまで…

箔玖恵
2年前
2

針ほどの月明かりー28ー

とにかく遠くへ。 適当に走って、少し歩いて、走って。夕陽は落ちてもうすっかり暗くなっていた。お店も家も無い道に時々ぼわっとした電灯が浮かび僕たちの足元を照らしてくれる。電灯を頼りに歩いていると何かを蹴飛ばしてしまった。何かは暗闇でガサガサと枯れ葉の上を転がって止まる。石ほど硬くはない何か丸いもの。近づいて拾い上げる。大きな松ぼっくりだ。 「真白、松ぼっくりだよ。」 手に持たせると真白はじっと見て、ほかにも落ちていないかと道路を探し始めた。僕も暗い道路を見つめる。アスファ

針ほどの月明かりー27ー

公園の前を背の高い男の人が二人走り抜けた。通りの向こうで転んだクラーケンが男の人たちに囲…

箔玖恵
2年前

針ほどの月明かりー26ー

子供を見つけた男は踊りたいくらい嬉しかった。子供から目を離さず、大股で歩きながら近づいて…

箔玖恵
2年前
1

針ほどの月明かりー25ー

弾かれたように飛び上がる。真白もビクリと肩を動かしただけで息も止まったみたいに動かなくな…

箔玖恵
2年前
1

針ほどの月明かりー24ー

風は冷たいし辺りも暗くなってきた。苛立ちから舌打ちをしながら歩く男はまだ幼い兄妹がこんな…

箔玖恵
2年前
1

針ほどの月明かりー23ー

みかんゼリーは飛び跳ねるうちに僕たちの影を飲み込んで、広げて、辺りを濃い青に変えていく。…

箔玖恵
2年前

針ほどの月明かりー22ー

しばらく歩くと男は急に立ち止まり、出来るだけ目立たないようにゆっくりとコンビニへ入った。…

箔玖恵
2年前
1

針ほどの月明かりー21ー

ハナミズキが敷き詰められた道路にオレンジ色の夕陽が浮かんでいる。 「この道はオレンジジュースかな。」 真白は首を横に振った。ジュースなら道じゃなくて川だからボートが必要になる。今の僕たちにボートは無いから、違うんだろう。 「じゃあ、ここはみかんゼリーの道だ。気をつけて歩こう。」 ゼリーの上は少し滑りやすいから長靴を履いていて良かった。プルプルと弾むみたいに歩く。ゼリーの弾力は結構強くて両足でぐっと踏み込んだらびょーんと跳ねる。僕につられて真白もびょーんと跳ねた。二人で