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【第5回】女の!限界バイト列伝「コールセンター(短期)」

去年から働き始めた仕事ももう3か月は経った。

仕事はコールセンター。学生時代に何度か単発のバイトをした。数年後、再び同じ会社で長期的に勤めたもある会社で、そして再び時間を置いて同じ会社に戻ってきたのだ。

コールセンター=クレーム対応と思う人が多い。しかしコールセンターの中でも「インバウンド(受信メイン)」、「アウトバウンド(発信メイン)」、「どちらも同じくらいやる」と大きく分かれる。
アウトバウンドはどの案件もかなり時給がいいので、時給に目がくらんだ学生が飛びつきやすい。


わたしが初めてコールセンターを経験したのは、学生の頃。上記と同様、高い時給と「短期」という言葉に飛びついて、派遣から応募したアウトバンドの仕事だ。

自動で登録された顧客へ発信し、決まった商材を勧めて、契約を決めるための次の電話へつなげるという業務。自動で電話がかかり続けるので、どこのどんな人が出るのか、全く分からないのだ。
だいたいは、名乗るだけで断られるが、触りの説明だけ聞いて断られるかのどちらかだ。

少しの時間で何十件も電話をかけ続けるのは、使ったことのない筋肉を使っているみたいで変な汗がでて、目が回った。
それでも「電話かけたら すぐかけて」と道路交通の標語みたいな言葉を繰り返し呪いのようにかけられる。なんとなく滑車を回るハムスターが頭に思い浮かんだ。俺たちは、社会の歯車に回されている。

しかもかなりのスピードですり減らされていく。新しい消しゴムの角みたいに。

初めて関西地方に電話がかかった。緊張した。電話に出て名乗ると、「今飯時やろが!そんな電話いらんわ!」と怒鳴られた。確かに、昼時だった。昼だから怒鳴られたのか、昼じゃなくても怒鳴られていたのか。理不尽だ。

関西地方にかかれば関西弁で怒鳴られ、東北にかかれば東北弁で怒鳴られ、関東にかければ無言で電話を切られる。怪しまれ、誰にも優しくされることなく、誰にも感謝されない仕事だった。

最初、老若男女20名ほどで始めた業務も、出勤するたび、一人、また一人と森に吸い込まれるこだまのように消えていく。その多くは(見た目で判断するのは申し訳ないが)明らかに高い時給に目がくらんだ、なにかしらジャラジャラしたアクセサリーを好む若い学生風貌だった。

こだまのように消えていく他の人たちを後目に滑車を回っていたものの、気が付くと最初から残ったメンツは、たったの5人だった。

最後に残った、数々のクレームを乗り越えた者たち。「面構えが違う」。

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ある日、珍しく、用意され打台本の説明を全て聞いてもらえたお客さんがいた。「それで?それで?」と淡々と話を聞いてくれるので聞いてくれるままに持ってる限りの情報を説明した。そうすると、お客さんは急に「この説明のここはどういうシステムか知ってるの?」と全く知らないところをつついてきた。しどろもどろするわたしに容赦なく突き刺し続ける質問は、雛鳥を食べようとする猛禽類のようだった。必死に上司の説明を操り人形状態でお客さんに伝えるものの、「なんにもわかってないくせに電話かけてきたわけ?」と鼻で笑われる始末。静かに話を聞いていたそのお客さんは、その手の商材をより専門的に扱っている業者さんだった。はなから真面目に話を聞く気など毛頭なく、全ての知識をわかった上で反論するべく、話を聞いていたのだ。人を鼻で笑わうために今までの時間を使っていたのか?この人は暇なのか、忙しいのか?なんていやらしい戦法なのだろう。こんなんならば、よっぽど関西弁でどぎつく怒鳴られたほうがマシだった。

全ての説明に理論的に詰められ否定され「だからわたしには必要ありませんので二度と電話をかけてこないでください」と言ってその電話は終わった。もう何度も死んじゃおうかと思った。この最悪な電話が終わっても、電話はまた自動的に電話を発信する。

この経験があったおかげで、苦手だった電話が怖くなくなった。お店の予約、病院の予約、役所の問い合わせ、操作方法の問い合わせ・・・メールでの問い合わせは楽だが、順次対応になってしまうので時間がかかるし、必ずしも自分がほしかった回答を得られない場合がある。電話で問い合わせれば、「回答はこういう解釈であってますか?」と聞けるし、場合によっては早めに解決したり、ネットではダメだったものがなんとかなることもあるので便利だ。

この世のありとあらゆる「お問い合わせ窓口」「お客様センター」「フリーダイヤル」「○○営業所」にたくさんの人が関わり、今日も、どんな、どこの、誰と、繋がるかわからぬまま電話を取り続けてると思うと頭が上がらない。その殆どがバックグラウンドのデカい企業を勝手に背負わされ、企業の偉い人には何も伝わらずにお客さんと直接対話し、謝罪し、感謝し、それが感謝されるわけでもないという末端の業務の中、日常を生きてる。

「末端の業務」というのは蔑む言葉ではなく、あくまで業務形態の「窓口」「お客さんと1番近い立ち位置」という意味で使うが、ほんとに働くことの多くが「末端」で始まり、「末端」で終わっているのだと思う。

企業の「中」の人たちが消して楽をしているとかが言いたい訳では無いけれど、きっとわたしたちの気持ちはわからないのだろうし、なによりわたしたちよりもたくさんのお金やボーナスをもらっていると思うと社会って上手くできてるなと思う。

わたしが社会で役に立つ日は来るのだろうか。

ボーナスは人生でもらったことながない。

ボーナスがもらったことないまま、死ぬんだろうか。なんてぼんやり考えても、次の日の給料日のことを考えて働けば1年なんてあっという間なのがなんだか虚無を感じる。

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